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黒脛巾衆――仮にAさんは墨汁まみれになった符を握り締めた。その握り締めた拳はプルプルと震えているわ。
これはかなり怒っているようね。まあ、最初の胡椒攻撃ですでに怒っていた気もしなくはないけれど。
黒脛巾衆Aは墨汁まみれの符を投げ捨てると懐に手をいれた。しかしあらたに取り出した符も墨汁まみれとなっていた。
クケケケケ、たっぷりと墨汁をぶっかけたのは、手にした符だけを狙ったものじゃなくってよ。アンタの懐にあるもの全部台無しにしてあげたの。
Aさんは懐にあった符をまとめて取り出し握り締めると地面に叩きつけた。
あ……、なんか嫌な予感。これは完全にキレてますわ。
うわっ、コイツ刀を抜いて襲いかかってきましたよ。
ちょっ、これって交流会の一環なんだよね? ちゃんと刃引きしているよね! いや、そもそもこの思い切りのいい振りは、刃引きしていても重傷確実だわ、うひゃぁ。
私は敵の斬撃から逃げ回りながら、相手の隙を伺う。
ってヤバい。この攻撃の嵐、おさまる気配がないわ。
おい! やめろ! なかよし交流会を台無しにするつもりか!
うぉっ! ちょっ! も、もちつけ。ひぃっ、ヴァルハラへの扉が開きそう。
クッ、聞く耳をもたずか。さすがにこれ以上続くと私の集中力が持たないわ。
「吉田さん!」
風間会長!?
会長から投げられた苦無をかわすため、私から離れざるをえない黒脛巾衆。さすがに冷静さを取り戻したのか攻撃をやめて、後方へと大きく飛び退き距離をとった。
ふひぃいいい、助かったぁあ。
風間会長が私を庇うように間に入って構えを取った。
ナイスですわ、会長。駆けつけてくれたってことは一人は倒したのね。
「ええ、相手の術はやっかいだったけれど、新しいお札のおかげでそれほど劣勢にならずすんだわ」
おお! 効果があったのか、ジークフリートのお札。私は怖くて試す気にもならなかったけれど、これは朗報だわ。
フッフッフ。
さあて、さんざん調子に乗ってくれたわね、黒脛巾衆A。こちらが優勢になったからには、今度はこっちが調子に乗らせてもらうわ。
覚悟することね、自分が有利になったときの私はとことん強気よ。