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『風塵瀑布の術――』
私はポシェットから特製クラッカーを取り出すと相手に向けて発射する。爆音とともに大量の粉塵が相手に向けて射出された。
フッフッフ、残念キャラの風間会長と同じと思ったら大間ちが――ヘッ……、ヘクショーイ!
し、しまった!? こっちが風下だったか。
胡椒の舞い踊る粉塵のなか、二人仲良くクシャミの合唱とあいなりましたとさ。
クッ、さすがにやる。甲賀衆を倒しただけのことはあるわね。まさか天災軍師と呼ばれる我が奇策を逆手にとるなんて……。
とカッコつけていたら相手が襲い掛かってきた。怒ってる!?
ちょっ、おちつきな――ヘクショーイ! アンタだってまだクシャミがおさま――ヘクショーイ!
時折襲い来るクシャミのせいでぎこちなく動きを停止しながらも、なんとか接近戦をこなせたのはお互いにクシャミの猛威を受けていたおかげね。
いや、まあそれ以前にラカンと幾度となくこなしてきた手合わせのおかげでもあるのだけれど。最近チョップの威力が増しているちびっ子には素直に感謝したくないわ。
徐々にクシャミがおさまっていき、互いに攻撃のスピードがあがっていく。
速い!? さすが本物の忍者ね。でもスピードだけならラカンのほうが上よ。まだまだ私でもついていけるわ。
これでも真面目にトレーニングは続けているし、干渉の力だって上乗せしてあるんだからそうそう負けはしない。
それにしても干渉の力はなかなか都合がいいわね。自身への干渉ならただ身のこなしが素早いだけにしか見えないし遠慮なく使えるわ。
でもこのままってわけにもいかないわよね。敵は私の体術が見たいわけではない。悪魔を倒した異能の力を暴きたいはず。そのために――。
敵が唐突に後ろへ飛びのいた。
キタッ! やっぱり使ってくるわよね、陰陽術。
相手は飛びのきながら懐から一枚の符を取り出していた。
予想通り! その人差し指と中指でピッとはさんで取り出すその仕草。甲賀衆との戦いを見てすでにトレース済みなのよ。
ちょっとイラッとくるその仕草。オサレ感を漂わせるそのピッってやつを狙っていたのよ!
私は相手のピッに合わせるようにすでに動いている。
その手にはポシェットから取り出した墨汁入り水鉄砲。
早寝の世界記録保持者顔負けの早打ちで相手の懐を打ち抜いた。相手の胸元は墨だらけとなり、それは手に持っていた符も例外ではない。
フッ、またつまらぬものを射抜いてしまったわね。
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