12 生徒会
仏宇野高校生徒会長――風間彩綾香は生徒会室の窓際で外を眺めていた。
「――フラれてしまいましたね」
そう語りかけたのは生徒会副会長の北風甚内。ダナコに変態ペアの片割れという肩書を与えられた人物である。
彩綾香はすぐにその言葉に反応せず、窓の外を見続けていた。彼女の視線の先には校門へと向かう一人の少女の姿があった。
「吉田花子……いったい何者なのかしら」
彩綾香は誰に問うでもなく心の内を口にした。
「ウチの人間に調べさせているけど、今のところ何も見つからないね。いたって普通の家庭に育った普通の娘だよ」
生徒会会計を務める磯風康太がそう答えた。ダナコによると女の敵である。
「私は普通の娘だからこそ恐ろしく異常に感じますね。私たち風魔衆が探り出すことのできなかった敵の正体をどうやって割り出したのか」
ダナコに男に陥落した堅物書記と評された秋風蘭は、考え込むようにそう呟いた。
「エドモンド藤鬼。東方魔道連四天王のうちの一人で西洋系死霊術の使い手か……。まさかこんな大物が仏宇野市に潜んでいたとはね」
甚内はため息をつく。
「拘束に失敗して以降の足取りはいまだ不明だわ。彼女が生徒会入りを拒否したのはそのせいかもしれないわね」
「手を組むには実力不足と思われたのかな。なんとも弁解のしようがないね」
現在、街を騒がせている犯人の捕獲に関わっていた康太が肩をすぼめた。そしてその失敗を責める声は上がらなかった。それもそのはず、敵の術者は世界でも有数の実力者なのだから。
「でもこのまま襲われた彼女を放置するというわけにもいかないわ。今後は美柑に彼女を護衛させましょう。それと同時に彼女のことを見極めなくてはね」
「彼女の身のこなしからそれほど危険な人物とも思えないけれど?」
「諜報戦で私たちを出し抜いたほどの人物よ。油断は禁物だわ。今後、彼女が味方になりうるのか。それとも敵になるのか……。それを確かめるためにも彼女から目を離すわけにはいかないわ」
彩綾香は甚内と会話している間も、一人の少女を見つめ続けていた。