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なんなのよ!? アイツら……。
甲賀衆がまともに戦えたのは最初の攻撃だけだった。
コングが圧倒的パワーで相手を吹き飛ばし、おサルが遠目からでも見失いそうなくらいのスピードで奇襲の一撃を決め、イケメンが飛ばした苦無はまるで生き物のように相手を追い詰め突き刺さった。
そのまま一気に勝負を決めるかと誰もが思っただろう。私も甲賀衆の勝利を信じて疑わなかったわ。私の玉の輿作戦のためにもね。
でも次の瞬間、空気が変わった。
甲賀衆の三人が追撃を止めたのは、彼らが手練れであったことを意味する。目の前の敵が危険な相手だと瞬時に見抜いたのだから。
しかし、相手が悪すぎた。アレは対処をしていなければ、何もできずに敗北しかねない手合いなのだ。
一緒に観戦していた風魔衆は気づいている。あの独特の空気は幾度となく私たちが経験してきたものと同質のものだったから。
アレは魔術師――エドモンドが使っていた結界に似ていた。アイツは人払いを目的に主に使っていたけど、魔術の効果が増したり、魔術そのものが仕込まれていたりと効果が幅広くてやっかいなことに違いはない。
実際に初撃以降、甲賀衆の動きが目に見えて悪くなった点を鑑みるに、アレはなんらかの効果を及ぼしていたのだろう。
そして最後に彼ら黒脛巾衆が見せた攻撃。符のようなものを使った攻撃だったが、爆発したり、妙な生き物みたいなものを呼び出したり、炎や氷を生み出したりと忍術ってレベルじゃないわ。でも魔術っていうには違和感があって、なんというか――。
「陰陽術――かしら」
そうそう、それそれ。さすが風間会長、わかっていらっしゃる。陰陽師に会ったことはないけど、なんかふいんき(なぜか変換できない)的にそんな感じなのよね。なんというか魔術と違ってフワッ、ビシッ、シュシュッってしてるの。
え? ぜんぜんわかんない? ちびっこのラカンちゃんにはこの学術的な感性はまだ理解できないかなあ、ププ。
ウゴッ! 鳩尾に水平チョップとか……危険だからやめなさい。
まあ、正体がなんであれなんの解決にもならないわよ。あまりにも攻撃にレパートリーが多すぎてやっかいきわまる。
これは次の試合、思ってたよりも厳しいものになりそうだわ。