117
とりあえず試合も終わったことだし、みんなと次の試合でも見ますか。
というわけで会長たちを引きつれて観客席にやってきた。まあ、正確には引きつられてるのが私のほうなんですけどねえ。この変態コンビが「首輪に縄をつけて引っ張ってみたい」なんて言い出さないかビクビクものだったわよ。
私は適当な席を確保してようやく一息ついた、フウ~。
……うーん、なんだろう? なにかが足りない気がするわ。
そうよ! こういうのはコーラとポップコーンを嗜みながら観戦するのがお約束な気がするわ!
え? それは映画を見るとき? たいして違わないわよ……、っていつの間にか隣にラカンが座っていた。
アンタねえ……。いいかげん気配を消して近づいてくるのやめなさいよ。激しく心臓に悪いんだからね。
え? 面白いからやめられない? ぐぬぬぬ。
……フッフッフ、そうよねえ。ラカンちゃんはさびしんぼうだからダナコ様がいないとダメなのよねえ。ハァ、いつまでもボッチ癖の抜けないちびっ子を友達にもつと苦労するわあ。
ありがたくチョップを頂いた。
とにかく今はコーラとポップコーンだわ。売り子のおねーさーん!
……はいなかった。
ムムムッ、ないとわかると無性にほしくなるわね。
ヘイ! ソコラヘンノ暇人ドモ! こーらトぽっぷこーんヲ買ッテキナYO!
目が合ったのはラカンたちのパパンだった。
「……」
とりあえず小銭を渡してみる。
パパンはしばらくの間、手のひらの小銭を見つめていたのだが、意を決したように立ち上がるとどこかへと立ち去った。
冗談のつもりだったんだけど、さすがラカンのパパン。熟練コミュ障は伊達ではないわね。ちょっと風魔衆の将来が不安になってきたよ。
しばらく待っているとパパンは緑茶と煎餅を手に帰ってきた。
うんうん、がんばったねえ。ちょっと注文の品とは違うけど、はじめてのお使いだし花丸をあげるよ。
ちょっと誇らしげな様子のパパンと悲し気な表情の風間会長が対照的で、全私が泣いた。
ついでにラカンからお叱りのハリセンを頂いた。
せっかくだし煎餅バリバリ、緑茶ゴクゴクっと。
それにしても、いっこうに試合が始まらないわね。
ヘイヘイ! イツニナッタラハジマルンダYO! コッチハ高イ金払ッテンダカラNA! 責任者カモーン!
なんてヤジを飛ばしていたらアナウンスが始まった。
ルール変更で勝利条件の旗取りはなくなった模様。
ふざけんなぁああああ!