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フッフッフ、逃げ切ってみせたわ。どやあ。
私は追いかけてきてた二人に向かって会心の笑みを浮かべる。
彼らは悔しさのためか小刻みにプルプルとふるえていた。
「こんな勝負、納得できるか!」
うわっ、コイツら逆ギレしやがりましたよ。
二人が刀を構えたまま迫ってくる。しかし、なにかに気づいたようでピタリと足を止めた。
今、私たちがいるのはグラウンドの外縁部。まあ私がグランドの淵に沿って走ってたから当然よね。それはつまり観客席のすぐそばにいるってことよ。
私の後ろでは軒猿衆の暴走を威嚇するように立ち上がり、苦無を構える仏宇野高校応援団の姿があった。
おい、ラカン。ドサクサに紛れてなにハリセンを構えている。私は別に悪いことなんてしてないわよ。
それともなに。敵は徹底的に追い詰めろってサインかしら。だったらやってあげるわよ。煽るぜ煽るぜい。
「ここまでいいように操られておいて、敗北を認めないのはちょっと無様すぎるんじゃないかしら? この場に誘導された時点で、アナタたちは私が戦うまでもない相手だったということよ。それが納得できないというのならどうぞご自由に。ただし、相手になるのは後ろの風魔衆全員ってことになるけれどね」
ここでニヤリと決めポーズ。
軒猿衆は何とも言えない表情で私を睨んでいたが、やがて肩を落とすと踵を返して立ち去る。
オーホッホッホ! 私の頭脳の前にしてはどんな力も無駄よ、無駄。
まあ、ここにたどり着いてたのは偶然なんですけどね、デヘヘ。
しばらくすると会長と副会長が戻ってきたわ。
チーッス! 旗取りお疲れ様でーす。
変態コンビは笑顔だったけれど、こちらも若干微妙な表情だった。まあ、勝ち方としては褒められたもんじゃなかったし仕方ないわね。
ひょっとして忍者バトルがしたかったのかしら。軒猿衆の身のこなしをみるに、会長と副会長だったら正面からでも倒せてたっぽいからなあ。
まあこっちの手の内を隠すためってことで許してちょうだいな。
さあて、観客に向かって勝ち名乗りをあげるとしましょうか。
観客席に向かってダブルピース、イエーイ! さらにアヘ顔のサービスをしようとしたところで、ラカンのハリセンが顔面にヒット!
アイタタタ……、ってなにすんのよ!
「敵を無駄に煽らない」
アンタが徹底的にやれってサインを出したんじゃない! え? 違う? 蚊が飛んでいた? 紛らわしいのよ!