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競技場にアナウンスが流れた。
どうやら目の前の敵は軒猿衆らしい。チッ、初っ端からトラブルに見舞われてしまったわね。できれば怒り心頭のゴリラを初手で倒したかったんだけれど仕方ないか。幸いにも私たちの策はゴリラ以外にも通用するわ。
私たち仏宇野高校代表はとりあえずの顔合わせをすませた後、自陣の旗の元へと移動した。
あとは開始の合図を待つだけね。私はまわりを見渡した。
観客席は閑古鳥が鳴くような状況である。まあ一般生徒には秘密なんだろうし、そんなに人は集まらないわよね。来てるのは忍者関係者なのだろう。
我が仏宇野高校関係者もいる。あ、会長のパパンがいたわ。いつの間に来たんだろう。
おーい! と手を振ってみる。
フフフ、私の目はごまかされないわよ。ちょっとだけ表情に変化があったのを見逃さない。相変わらずのコミュ障みたいでひと安心。親近感がわくわ。
私の振る舞いにちょっと困ったような表情の風間会長にも萌えた。実にいいものだ。
なんて遊んでいるわけにもいかないわね。
私はポシェットに入れた秘密道具の最終確認をした。自陣の周りには障害物はなく使える手はかぎられるわね。まあ、私は守り主体でいくからやりようはあるもんね。
それにしても運動場はなかなか派手に装飾されてるわ。お互いの陣の間には障害物がこれでもかといわんばかりに配置されているのだ。
人工的な林や小屋、土壁に土塁と戦いに利用できる様々な地形が用意されてた。
よくもまあ運動場をここまで改造したもんだよ。これは後片付けが大変ね、なんて心配をしてしまうほどの規模である。
これは! 録画しておけばお金になる気が!
という天啓にうたれたところで試合開始の合図が。ちくしょぉおお!
私たち仏宇野高校チームは私を中心として左右に会長、副会長を配して自陣で相手を待ち構えた。観客席がざわめくのを感じる。
フフフ、そうよね。旗を取られたら負けだってのに、自陣近くまで敵を引き寄せるなんて悪手だと思うわよね。
でも今回に限って私たちはこの手が使えるのよ。
私は会長たちの部屋で戦略を練る際に確認済みなの。今回の戦いで風魔衆としての目的はなんなのかをね。
風魔衆的に望んでいるのは、他の一族が連合を組んで自分たちを潰そうとする動きをやめさせたいということである。そして今現在そのような動きを止めているのは私という存在にある。まあ私自身たいした力はないんだけど、相手はそれを知らない。しかも悪魔を倒したという事実が彼らの判断を狂わせている。今回のイベントも最大の目的は、私という謎のモンスターをスキャンしたいということだろう。
ならば答えは簡単。策とは相手の嫌がることをやってさしあげるものである。すなわち相手の目的を達成させないのが今回のミッション。
相手は必ず私との戦いを望むから、旗をとられる心配はない。取られたとしても私たちは全然かまわないのよ。敗北よりも優先すべきは私という虚像を守り抜くことなんだから。
まあ結局、私が狙われることを避けようがないわけなんだけどね。ぐぬぬ。