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なんでジゴロあんちゃんがこんなところに!?
「あん? お前らの付き添いに決まってんだろ」
決まってんだろといわれましても知らんがな。そもそも付き添ってないじゃん。付き添いだっていうんならいままで何してたのよ。
「ちゃんと影からお前らのこと見張ってたっての」
え? マヂでか!?
ラカンのほうを見ると小さく頷いていた。
どうしようもないジゴロだと思ってたけど、どうやらどうしようもあるジゴロだったらしい。
まあいいわ。ジゴロあんちゃんが味方になってくれるってんなら話は早い。
フフフ、私は自分が有利なときには遠慮しない女よ。
ヘイ! デカブツ。サッキハヨクモヤッテクレタネ! 覚悟シナYO!
「ふん、不審者がデカい口を」
こっちは三人いるってのにまったく物怖じしてないわね。相当の自信家なのかしら。それとも本当に強い!?
まあ、どちらでもやることは変わらないわ。
まずは心を乱す!
デカい口結構! そういうアンタのほうは身体はデカいのにやることがザコっぽいのよ。私のような清純可憐で繊細な美少女を足蹴にしようだなんて。
まあ、私は心が広いから、そんなザコっぽいアンタのために私一人で相手してあげてもよくってよ、ホーホッホッホ!
……なーんて嘘だもんねー! さぁ、怒りにまかせて突っ込んできなさい。三人でボコボコにしてあげるわ。
ヘイヘーイ! 青筋立ててるう。くる!? きちゃう!? かかってこーい!
「なにが清純可憐で繊細だ! 俺が蹴っても折れそうにない図体のくせして!」
んだとゴラァアアア! 身体的特徴をネタにするなんて人間の風上にもおけないやつね!
「それはお前もだろうが!」
めでたく二人とも心が乱れましたとさ。いかんいかん。
数的優勢のあまり少し油断があったようね。
さぁ、かかってきなさい。皆でボコってあげるわ。
「いや、まて。俺は手を出すつもりはねえぞ」
は? 何言ってんの。
「お前こそ何考えてんだ。今回はお前らガキ同士のイベントだろうが。俺が手を出したらマズいっての」
おいおい、いつの間にそんなにヒヨッちゃったの、ジゴロあんちゃん。風魔の狂犬とか火の玉とか呼ばれてた暴れん坊はどこに行っちゃったのよ!
「呼ばれてねえよ! つーか、お前俺をなんだと思ってんの?」
「狂犬……火の玉……」
ラカンが肩を震わせている。あの娘の笑いのツボは時々よくわかんないわね。