109
「とりあえずその怪しい行動を今すぐやめろ」
怪しい行動ってなによ。私はいつだってお天道様に恥ずかしくない行動をとってるっての。そういうわけでお宝探しを続ける私。
――シャカシャカシャカ。
あ、なんか青筋立ててる。
カルシウム足りてないわよ、アンタ。ちょうどいいからここで牛乳買っていきなさいな。一万円札で支払ってお釣りを忘れて帰るのが今回のアナタのミッションよ。お子様でもできる簡単なお仕事だから、バカでかい図体に育ったアンタができないなんてないわよね。
「……」
男はそのまま無言で蹴りを放ってきた。
ちょっ――、あぶな!
ギリギリのところでラカンが蹴りを止めてくれた。さすが心の友よ。
「邪魔だ」
コイツ!? そのまま反動もなしに蹴り足を振り抜いた!?
いくらラカンがちびっ娘とはいえ、あんな形で彼女を大きく吹き飛ばすとは……、なんつうバカぢからなのよ。
まあでも、あんな蹴り方じゃダメージなんてないわよね。案の定、ラカンもきれいに着地していた。
それにしてもいきなり蹴りを入れるとか頭おかしいんじゃないの? いくらちょっとお腹がプルプルしてるとはいえ、こっちはうら若き乙女なのよ。
なんて言ってる場合はじゃないわね。こちらも体勢を整えなければ。
――シャカシャカシャカ。
ハッ! お宝探しがやめられない!? 十万円硬貨が落ちてるかもしれないという期待が私の行動を縛り付けている……だと……。
まさか……、これが甲賀衆が仕掛けた罠!? 私の心の隙を的確に見抜いたこの巧妙な戦略……なんと恐ろしい。
「ただの馬鹿か」
車に轢かれたカエルのごとく床に這いつくばった私を見下ろしていた男が、トドメとばかりに私を踏みつぶそうとしてくる。
ぎゃー! やめろー! 誰にもこの場所は譲らないわよ! 絶対にだ!
こうして再び危機が迫ったのだが――。
「おい」
突然襟首をつかまれた男は後ろへ引っ張られる。私を踏みつぶすため片足をあげていた男はバランスを崩してヨロめいた。
「まったく……、なにやってんだか」
私の危機を救ったのはアロハシャツにグラサンという怪しい姿の男――と思ったらジゴロあんちゃんだった。