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ただいま電車で移動中。窓の外が徐々に大都会の街並みに変わっていく。
あぁ~、せっかくひさしぶりの帝都だってのに、いまいち心がぴょんぴょんしない。それというのも時代錯誤に、忍者大戦なんてやらかそうとしている連中のせいよね。
あぁ~、このまま遊びに出かけたい。こっそり脱走してアキバでパーリーしようかしら。
ってそこ! いま「フッ」とかスカした笑みを浮かべたのわかってんのよ、ラカン。
まあ確かにボッチでパーリーはないわよね。しかたない、このちびっ娘でもつれていくか。
「それは駄目。それとちびっ娘じゃない」
今では常習化したラカンのチョップが私の頭にヒットした。
クッ、なぜなの。なぜラカンのチョップをいまだに避けきれないのよ。これも笑いの神が持つ強制力だとでもいうの。
なんてやりとりをやってるんだけどイマイチ心が晴れない。まあ、今後の戦いのことを考えればそりゃそうだと思うわよね。
でも今の私は心が沈むどころか、なんだか無性にイラついてるの。なぜなら――。
「あー、この服すごくかぁわぁうぃいぃー。ねえねえ、希空このお店にいきたーいー」
「希空ちゃんだけずるぅい。希星にも行くお店選ばせてぇ」
スマホを覗きながらイケメンに身体をなすりつけているメスどもがいた。
ギギギギギッ、なんなんだコイツら。さっきからイチャコラ見せつけやがって。氏ねよ。
「ちょっと、二人とも近いよ。それに他の乗客に迷惑でしょ」
チッ、しかも二人に挟まれたイケメンは実に性格もよさそうですね。クソがぁああああ!
あん? イケメンは別に悪くないんじゃないかって? いつもの私ならイケメンを視姦してそう? ハァ……、わかってないわね、ラカン。
というかアンタ、私のことをなんだと思ってるのよ。そんなエロティックかつバイオレンスな人間だと思ってたの!? 全国に一億三千万人いる私のファンを敵にまわしたわよ、アンタ。
いい機会だから言っておくわ。たしかに私はイケメンが好きよ。だからといって全てのイケメンが好きかと言ったらそれは大間違いだわ。特に売却済のイケメンには憎しみすら覚えるの。
「これはひどい」
ひどくなーい! これが全国共通の純真な乙女の心ってもんよ。
まあでも、イケメンをこれ見よがしにみせつけてくるメスどもへの憎悪に比べれば無きに等しいわ。
つまり私がなにを言いたいかと言うと……。
なんなんだあの雌豚ども! お前ら、「私たちの彼氏はサイコーよ」とでも言いたいのか!? あん? そんなに優越感に浸りたいのかビッチどもが!
ああ、ああ、そうですねえ。実に優良物件のイケメンでございますね。でもアンタたちは最低よ。はっきり言って同性から嫌われるタイプね。私がそう思うんだから間違いない。
「ダナコも大概だと思う」
だまりゃ! 今の私は誰もが認める絶対正義よ!
誰でもいいわ。あのリア充どもを黙らせなさい! というか爆発しろ!