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文化祭も終わり、学校生活のほうも退屈な日常が戻ってきていた。
私はというと授業を瞑想で華麗にスルーするのにも慣れ、なんだかんだでラカンと行動をともにするのが多い毎日である。
退屈ではあるけど貴重な平穏よね。いろいろと爆弾を抱えている私にとっては、この貴重な時間をどれくらい有効活用できるかによって寿命が決まる。
私はプライベートの多くを修行に費やしていた。筋トレによる身体つくりに始まり、干渉能力によるバフ効果の強化。そしてさらにステップアップして、上のステージへと到達するための訓練も行っていた。
先の事件で幸運にも魔術のことを知るニップル騎士団との繋がりができたのだ。その関係を利用し、彼らが持つ魔術の知識をご教授いただくのになんの問題があろう。
というわけで私は今やお得意の瞑想にはいると、まわりに意識が拡大していくような感じのイメージを行っていった。
――全ては認識から始まる。
干渉能力で自身の身体をコントールするように、外の世界へ干渉するために。世界を感じるのよ、ダナコ。
このトレーニングは干渉能力の成長だけでなくいろいろと役に立つはずだから、なんとしてもモノにしておくたい。ラカンたちがやたらと察知能力が高いけど、たぶんこれ系の感覚を鍛えているんだと思う。
魔術と忍術で仕組みは違ったりするんだろうけど、根本的な部分は同じなんだわ、きっと。たしかエドモンドも根底は同じ世界の理うんぬん言ってたし。間違いない。
この力を我が物とすれば、もう二度とラカンに転がされたりすることもあるまい、クックック。
……いかん、雑念ガガガ。集中集中!
そうこうしているうちになんだか時間の感覚がなくなってきた。
どれくらいの時間がたったころだろう。まるで夢をみているようにフワフワした感覚にただ身をゆだねていたんだけど。なにか暖かいような不思議な感覚を捉えた。
これは……、人?
距離や移動スピードから考えて、我が家の前を通行しているご近所さんか誰かだろう。
ををを、ひょっとして目覚めた? 私、超感覚に目覚めた!?
この不思議な感じを自覚すると、その後の成長は早かった。身の回りにいる様々な生物を察知できるようになる。
これは……我が家で育てているミニトマトね。
これは……たぶん近所で不遜な態度をとっている野良猫だわ。ちょうど屋根の上を移動中みたいね。
これは……、この奇妙な動きは……、最凶生物G!? あんのド畜生がぁああああ!
私は殺虫剤片手に部屋を飛び出したいのをなんとか踏みとどまる。
落ち着くのよ、ダナコ。いませっかく訓練がいいところなんだから。このまま続けましょう。
気を取り直して再び意識を外に向ける。わりと近場であっても様々なものを感覚でとらえることができた。
基本的には生き物だけだけど、それにしても多いわね。これは慣れるのに時間がかかりそうだわ。
ん? コイツは――。
その夜。近所のマンションに忍び込んだ下着ドロボーを捕まえたお手柄美少女女子高生がいましてよ。オーホッホッホ!
漫画版「タナカの異世界成り上がり」の第三話が公開されました。
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