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文化祭は一応無事に終わりを迎えた。
一応っていうのは、文化祭中に有難くない客人が来訪していたからよ。なにを考えてるんだか知らないけど四天王のひとり――クリスティーナのヤツが堂々と文化祭にやってきていたの。
別にトラブルを起こすつもりはなかったようだけど、アイツは存在自体がトラブルのもとなのよね。まだまだ青臭い男子たちに女性に対する免疫なんて期待できるはずもなく、予期せぬパツキン美女の出現にそりゃもう色めき立ったわ。
オマケに愛想だけはいいもんだから、男子たちがそれはもう釣れること釣れること。まさに大名行列だったわよ。
私もまさかアイツが来てるなんて知らなかったもんだから、思わず行列に並びそうになったくらいよ。
え? なんで並ぼうとしたのかって? 行列ができるほどのラーメン屋でもあるのかと思ったのよ。そしたらアイツがいたもんだから、どうしたもんか悩みましたとも。
まあ、敵対する意思がなかったのはいいんだけど、顔見知りのように私のほうにやってきたのには困ったわ。まあ実際、顔見知りなんだけどね。
それから気軽に挨拶してきたもんだから、そりゃもう注目の的よ。マスタークラスのボッチである私に臨機応変な対応などできるはずもなく、クリスティーナを案内することになったわ。
なんで私が敵かもしれないヤツを案内しないといけないのよ!
――と考えていた時期が私にもありました。でも皆に注目されることになって、正直気持ちよかったです。
これが学校のヒエラルキートップに立つということなのね。
なんてことを実感しながらまわっていたのだけど、ただ浮かれていただけじゃないわよ。なんといっても、となりには魔術師がいるんだから油断はしなかったわ。
クリスティーナは一見楽しそうに各クラスの出し物を見て回っていたけど、私の目はごまかされない。長らくボッチで人間観察を趣味としてきた私には、クリスティーナの笑顔が表面上の擬態にしか見えなかった。
こいつが真に興味をもったときはもっとねっちりとした笑顔を向けるのよ。そう……、時々私を見つめるときのような笑顔をね。って怖いわ!
そういえば一度だけ本当に興味を持った表情をしたわね。たしかあれは隣のクラスの演劇を見ていたときだったかしら。特段面白くもなかったと思うけど、なにがクリスティーナの興味をひいたんだろう。
さんざん校内を引きずり回され、ようやく解放されることになったんだけど。クリスティーナが帰り際に――。
「この間の戦い、とっても面白かったわ。まさか四天王のひとりをあそこまで弄ぶなんてね。でも次は本当の力を見せてほしいの。貴方の真の力をね」
なんてことを言いやがりましたよ。
やっぱり油断ならないわね、クリスティーナ。アイツ、遠目からあの戦いを観戦していたんだわ! 今後も絶対に警戒をゆるめてあげないんだから。
ところで今更だけど、この間の四天王の名前が気になる。クリスティーナに聞くのも悔しいし、なんだかムラムラするわ。いや、モヤモヤするだった。