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井の中の蛙大海を知らず、されどこれは井戸ではなく深淵では

 対戦相手となる他クラスからの選抜メンバーは奇しくも男女比率がこちらと同じで、男同士女同士での試合運びになった。闘技場さながらの特別試合場で両クラスの他の生徒の視線の中、お互いに礼をする。


 先方は友人ポジ君改めユート君の相手は風属性。風属性特有の動きに翻弄されることなく冷静なカウンターで勝負を決める様などは小説なら大分枠を使うに違いない名場面だった。二番手は委員長ポジ改めセーラさん。こちらは逆に水属性の相手にからめとられるようにして負けてしまった。


 三番手の不良ことカズラー君、名前を聞いたときに噴出しかけたが確実に地毛だろう。ここは火属性同士の試合で、我慢比べに近い実に熱い戦いだった。接戦を制したのは意外にも相手クラス。もしかしてかませ犬属性付きの悲しい生き物なのかもしれないとふと思った。


 追い詰められたかに見えるわがクラスであったが、4番手のリィンが開幕早々に大規模な爆発に近い火炎放射で相手の周囲を一瞬で黒焦げにして、そのまま相手が降参。半泣きの土属性さんはもしかして土壁の防壁展開が間に合わなければ消し炭……いや、たぶん大丈夫だっただろう。


 そんなこんなでお互いに2対2の状況。どことなく気障な感じの金髪光属性君がなにやらぺらぺらと自己紹介を始めた。あいにくと修行にかまけて世情に疎い私ではあるが、どうやら西の国の裕福な上流家庭に生まれたご様子。金地位実力の三本柱を持っているから私では相手にすらならないそうだ。


 いざ試合が始まってみれば、慢心こそすれ油断はしていないのか、初手で光線がこちらに向かって放たれる。直撃すれば熱量によって焦げ、何故か発生している異常な質量によって吹き飛ばされる怪光線が、文字通りの光速で放たれる様は、確かに上位属性というもののでたらめさを感じさせる。


 先ほどのリィンの試合ですら、炎の着弾までは傍からでも十分に目で追える程度。それでも十分な高速ではあったが、見えた時には当たっている光速と比べるのは酷であろう。よーいどんで始まる勝負で勝てる属性など同じ上位属性の光か闇のみだと語られるでたらめ。


 故に切り払いというよりは、どこに放たれるかを予測したうえで置くようにして防ぐ他に無しというのが実に理論的な防御方法である。若干切り払えそうな感覚があったものの大人しく一本犠牲に確実に防いでおく。砕け散った剣の破片が一部溶けている程度のところを見るに練度は低い。


 通過した部分がすべて消滅するなり、大爆発を起こすレベルであればまだ苦戦もしただろう。だが所詮は自身の才能に胡坐をかいた学生程度。次が来る前には既に背中から剣を抜き終わっている。その間に踏み出せば距離は確実に縮まっていく。


 勘は良かったのだろうか。防がれて放心するわけでもなく、周囲が静まり返った状態でこちらに二発目を放つ彼は確かに才能があるのだろう。だが、勝つのは私である。先ほどの一撃に感じた感覚の通りに切り抜けばどうやら光線は霧散したようで、無傷とはいかないものの剣も形を保っていた。


 牽制がてらに棒切れとかした剣を投擲しつつ次を抜き、距離を詰める。レーザーブレードのようなもので迎撃する金髪に、ほどほどに手を抜いた一撃をがら空きの胴体に見舞ってやる。投げた剣に追いつくようにして距離を詰めたが、追い抜けないあたり未だ瞬間移動というほどには達せていない。


 面白いように壁にめり込んだ金髪君はどうやら意識を失っているらしく、あっさりと勝負はついてしまった。成果といえば光線砲を切り払う感覚を覚えたことであろうか。思考を限界まで加速させたところで何となくの感覚でしか掴めなかったが。


 しかし、勝ったというのに歓声の一つも上がらないというのは、なかなかどうしてさみしいものではあるなぁ。

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