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今持っているものが最も優れている

属性とは、神が人に与えた恩恵であり、人が世界に愛されている証なのだと言う。赤の神、青の神、黄の神、緑の神の4神が人に齎したもうた邪悪に立ち向かう術。


その力は甚大で、例えばなんの属性も込めていないダイアモンドと何かの属性を込めた豆腐をぶつけたとする。普通なら豆腐が崩れるなり、めり込むなりを想像するだろう。


だが、実際に砕け散るのはダイアモンドであり、属性を持つものと持たないものではそれほどの差があると言うことである。実際に試した訳ではないが、豆腐でダイアを砕くならどれ程の速度が必要か考える程度の差が生まれると言って良い。


ならばこそ、私がこの世界においてどれ程のハンディキャップを背負っているのか理解出来るだろうか。いや、正確に言えばハンディ程度の話ではない。象と猿に力比べをさせる競技などある筈も無いのだから。


故に、最初私に向けられた視線は憐れみ程度のものでは無かった。最早同じ生き物だとも思っていない、それこそ虫を見るかの様な視線。魔物とて嫌悪や憎悪の対象となるだろうが、こちらからしてみればその気持ちもわかる。


属性が神が人に与えた恩恵だと言うのであれば、何故魔物や魔王と言った存在が属性を持つのか。邪神の眷属であるが故と極自然に語られる様は、全く側から観れば洗脳の様で。


魔物ですら持つ属性を持たぬ存在が私であるならば、むしろ私の視点で双方を見た場合を考えて欲しいものだが、その様な想像をする人間などいる筈もなし。


まあ前置きが長くなったが、端的に自己の能力をみれば無能どころの評価では全く不足していると言わざるを得なかった。それこそどれ程の努力を重ねた所で、覆せぬ差。




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幸いと言うべきなのだろうか。この世界においてファンタジーな要素は属性だけでは無く、スキルの様な物も存在した。前世の人間など歯牙にも掛けぬ程度であれば、仮に属性など無くとも到達出来る程度には才に恵まれて。


故にこそ確信を深める。これが無才であればまだ良かった。優秀程度であれば他の可能性もあったのだろう。天才と言える才覚を持って初めて上がれる舞台があるならば。


最初に視線の色が変わったのは誰であったか。何処までも愛を注ぐ兄と比べて見ていた親であったか、或いはせめて親らしく願いを聞こうと家に呼び込んだ武術の師であったか。


最初は憐れみ、無関心の先に興味を迎え、しかし最終的にはまるで化け物でも見るかの様な。魔人と呼ばれる脅威を退けた英雄が、実の子相手にまるで怯えているかの様な視線。


当然だったのかもしれない。天才でさえ舞台に上がるので精一杯であるならば、果たして無能が主役の座に上るなら一体どれだけ外れていなければいけないのか。


半ば幽閉に近い我が身が物語の舞台であろう中央都市の学園に入る事が出来たのは、放逐に近い形で試験もなく、コネどころの騒ぎではない不正に近い手段でもって初めて叶う事であったに違いなく。


感謝を述べ、立派になるまで帰らないと宣言した際の安堵と困惑の混じった視線の意味を考える事もなく、私は何処までも思うのだ。まだ足りない、もっと研鑽を積まねばならぬと。

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