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悪人   作者: 千切りポテト
6/8

王都へ


456年8月8日


今日も何もない一日が始まる。


朝起きて、畑仕事を行い、午後に遊んで、夜になったら就寝


当たり前のことをして暮らしているだけなのにどうしてこう落ち着かないのだろう。



456年7月19日


村のみんなの接し方も普通。もちろん父さんだってなにも変わりはないはずなんだ。

モアとだってつい昨日釣りをして遊んだばっかだ。

そう、なにも変わっていない。変わっていない。


そうやって今まで自分の心に言い聞かせてきたが、もう無理だ。


モアは死んだんだ


もう絶対に変わることのない事実なのである。

俺は父さんや村の人に伝えなくてはいけないんだ。

おそらく皆はモアのことを忘れているんだ。だから俺はそのモアの記憶を思い出させてあげなくてはならないと思う。

俺の立場からみたら思い出させてやらなければ平和に過ごせるのだろうが、伝えなければならない気がしてならない。今日の夜にでも相談してみるとするか。


午後8時頃、俺は小さいテーブルと両端に椅子が二脚ある小さな部屋へ父さんを呼びだして対話を開始しようとしていた。


「・・・・・」


先に部屋に着いてしまったために、俺は自分の足元を見ながら椅子に腰かけ静かに父さんを待っていた。

父さんは何をしているかは分からないがまだ家には帰っていないようだった。

父さんは俺よりも長い時間畑仕事をやっているので、さっき声をかけておいたのだ。

そうやって待っているうちにもう二時間が経過した。

おそい!おそすぎる!こんなに時間がかかることなのか?「わかった。すぐに行くよ」と答えていた。一時間程度なら待てるもののこれはあまりにも遅すぎる!


俺は待ち切れずに家を飛び出して外に出た。

村の中にあるといってもここの家は村の西端に位置する。辺りに田んぼしかないのは当たり前だ。


少し歩いて村の中心にやってくるとがやがやと音がしていた。少し距離があって聞き取ることができなかったので近づいて行った。いつの日かと同じように木の裏に隠れて観察することにした。

当たり前だがその人だかりはホノ村の人々のものであった。こどもが少ない村なので辺りには大人といえる体型の者しかいないようだった。

辺りには明かりは少ないが、その中でも一際目立つものがあった。それが中央にいる6人で円を描くように並んでいる者達だった。その円の中には袋のようなもので包まれた何やら大きなモノがそこにあった。大きな袋の先端はちょうど自分の顔がハマりそうな穴が開いていた。

そして他の村人がその円を見守っている。その村人の中には、腕を組みながら見守るもの。なにかそわそわしながら辺りを確認しているもの。目にハンカチを当てて泣いているもの。とにかく色々な人がいた。


俺も人間だ。その袋の中に何があるのかくらい気にはなる。

俺は火事の煙から逃げるように着ていた服の襟部分を鼻まで左手で伸ばし、顔を隠して円の中心には何があるのかの確認に向かうことにした。

正確な距離は分からなかったが、円からの距離がかなり近くなり、気付いたことがあった。円を描く6人は何やらぶつぶつと全員が呟いていることが分かった。


なにかの呪文なのだろうか?それともなにかの儀式なのだろうか?

まぁ、それはどうでもいい、今は円の中心になにが眠っているかということだ。

俺は首を伸ばして円の中心を覗いた。


そして、俺はそれを見て絶望することになった。

え・・・なんでここに・・・絶対に見つからないはずなのに・・・


そのとき、円を描く6人はナイフをポケットから取り出していた。

俺はその後の光景も目の前で見てしまった。


「おい、そこのお前!なにをしている!」


近づきすぎたのだろうか、他の村人に見つかってしまった。ばれてしまった。

ただ、よくよく考えてみるとこれまで他の者に何も言われなかったことも不思議に思えてくる。

俺に向かって言ってきた人物の声には聞き覚えがあった。

もう5年間も聞いた声だ。父さんの声なんて一瞬でわかる。

俺は父さんに右の手で右腕を掴まれた。これまで見たことも体験したこともない強い力。このまま力を入れ続ければ木材の一つでも破壊できるであろうと思えるほどに強い力で。

そしてあいていた左の手で襟を押さえていた左腕を振り払って顔を確認した。おそらく順番を変えたのは俺が抵抗できないようにさせるためだろう。


「シ、シェン・・・・」


もちろん顔もしっかり認識されたため、父さんは驚いているというより、前が見えていない状況になっている。


「と、とりあえずここじゃまずいからあそこの家の陰に隠れて話すことにしよう」


父さんは近くにあった家を指さして自分の耳元でそうつぶやいた。

そして俺の右手を引っ張り、先ほど指さした家の裏に連れて行かれた。


「ど、ど、どういうことなんだ!?な、なんでお前が・・・ここに・・・・」


父さんは目に渦巻きの一つでもできていそうな困惑状態で俺に話しかけた。


「俺が父さんを呼んでもいつまでも来なかったから・・・さっき父さんに声をかけたら、『わかった。す ぐに行くよ』と言ったから待っていたのに・・・・いつまで待っても来なかったから・・・」


まるで女のような話し方で言い訳を行った。


「中を見たのか?」


「中って何の?」


「決まっているだろ・・あの袋の中身だよ」


袋・・もちろんあの円の中心にあった袋の中身か・・


「・・・・見たよ・・・・」


「何が入っていた?」


もう思い出したくないな・・・・だって・・・


「モアの死体がそのまま入っていたよ・・・・」


思い出したくない真実であった


「どこまで見た?」


「え?」


「中身を確認したあと6人は何をしてしていたか見たか?」


俺はその質問の意味は一瞬で分かってしまった。

分かったからそのまま隠そうともせず頷くことを決めた。


「こ・・・はおし・・だ・・・・」


「え?」


今日は一段と父さんの言葉が聞こえない。


パンッ!


一瞬何をされたか理解できず困惑したそして視線を前に送るとそこには始めてみるかんかんに怒っている

父さんの姿が映った。なんか本当に湯気が出てきそうだ。

そして、自分の頬に痛みを感じたので叩かれたことがわかった。


「出ていけ」


「え?」


「この村から出て行くんだ!」


なにかが切れたのだろう。俺の心の中で何かが切れたのだろう。


「あぁ!わかったよ!出ていくよ!」


「お前は知りすぎたんだ!」


俺は村の端まで休息なしで走り続けた。


この村には門がある。高さは3メートル弱。他のものを見たことがないから何とも言えないが、そこそこな大きさがあると俺は思う。年に数えるほどしか使わないため、ほこりがそこそこあるが気にしないでおこう。これは前国王が建てたものだと教えられた。

この門はもう飽きるほど見てきたが、下を潜り抜けたことはない。

人生に一度でもいいからこの門をくぐりたいと思っていたが、まさかこんな形でくぐることになるとは…


そんなことを考えながら俺は門の下をくぐり、5年間の付き合いだったホノ村と別れを告げた。


本当は別れたくない・・・・


そう思いながら。


やっと書き終わりました!

投稿ペースについてあんなに言ったのにこの仕打ち。ひどいっすね・・・

次回はなるべく早く投稿したいです。


あとここの話はあまり分からないことが多いと思います。

ホノ村についての説明はだいぶ後になりそうなので忘れてしまっても別にいい話だと思います。

そりゃ覚えていただけるのが幸いですけど・・・・


次回は8話に繋がるための回です。いろいろと必要なものがありますので。


次回 7話「道端の兵士」


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