フレイ
ここは山奥。ホノ村近くの山の頂上にあたる部分になる。
頂上には良く日の通る場所があった。
そこに草木に囲まれた空間が小さく広がっていた。
たくさんの木の枝で囲まれてちょうど人1人入れるようなスペースだ。
その中にはたくさんの落ち葉でまとめられ、まるで布団のようにされている。
この秘密基地のような何かは、たくさんの木々があり外からは見えないようになっている。
そこには一人の男が落ち葉の上に横になっていた。
その男は前日に目の前で友人が殺され、逃げ去ってきたのである。
よく見ると目には、ついさっきまで泣いていたであろうあとがついていた。
なにか悪いユメを見るいるのか、うーうー、と、うなされ、時には寝ながら涙を流すほどにまでしながら秘密基地での時が過ぎていった。
その男が覚醒したのはかたく閉ざされた右目がギラリと眩しい日の光を浴びたときであった。
俺はあの晩、逃げた。精一杯に逃げ出したのだ。
もちろん逃げ出した理由はこれ以上あの兵士に見つかって面倒にならないようにすることもあったのがだ
が、そんなものはただのきれいごとにしか過ぎない。
ただ、俺は怖くなったのだ。自分が殺されるのが怖かっただけなのだ。
モアがあの兵士に切りつけられた姿を大木に隠れて身と遂げてしまった俺は、隠れていた山の頂上に向かい、逃げ出した。
ちょうど2日前に山登りでモアとともにこの山で遊んでいた。
そしてこの山の頂上は良く日の通る平らな土地があることを知っていたので、そこを目指して登っていくことにした。
はぁ、はぁ、と息が切れる中、ここで止まってしまってはいけないという謎の気持ちが俺の足を止めなかった。
そして俺は頂上に到達した。空を見るともう暗く、すぐに夜だと分かったが、月の明かりで辺りのようすが良く分かる。
よく見ると不自然なほどに辺りに落ち葉があった。まだ夏だというのに。
俺は辺りに多くあった枝をかき集め、だいぶ昔にモアと一緒に作った覚えのある、秘密基地と本人は言っていたが、その秘密基地を組み立て、とりあえず夜を過ごせる空間を作った。
地面にたくさんの落ち葉を敷き、ある程度の寝れる体勢になる。
これ以上何もすることはないので眠ることにした。
枝の隙間からは月の光が漏れて少々眩しかった。
なぜだ、なぜこんな時に思い出す・・・
俺はこんな風に誰かに守ってもらったのは初めてではない
俺は父さんに引き取られる前はある施設にいた。
その施設が具体的にどのようなものだったのか、また、どのような目的で造られたものだったかは今になってもよくわからずしまいであった。
その施設には大人の体型の女性と男女2人が生活をしていた。
その男女の年齢はたいして俺と変わらないことが見かけからわかるものだ。
女の方は年齢でいうと20歳くらいなのだろうか、背は低かった。そして何か変な言葉を毎日のように全員に話していた。
生活といってもその施設では育成施設のようなものだ。
規則正しい生活を行い、午前に勉強、午後には運動、となんでもできる人間を育てる施設なのだったと思う。そんなときに俺が入ってきたのだ。
施設内は完全な資本主義であった。出題された課題をこなせばほめられ、褒美が与えられる。
もともといた男女2人はもう慣れているらしく、完璧までとはいわずとも少なくとも俺よりはこなしていった。そんな俺には娯楽という概念を学ぶことさえできなかったが・・・
出題されるものは決して楽なものではなかった。
ホノ村での勉学も相当なほどに発達していたが、あの施設での勉学の難しさはその数倍の難しかった。
運動もそうだ。あの施設で鍛えられたから山の頂上まで走れるほどの体力がついたのだ。
もちろん勉強や運動だけしかやっていなかったわけではないが、俺は基本的な道徳を教わらなかった。
自分で言うのも変な気がするが、人情というものを初めてホノ村で教わった気がする。
そこの施設で教わらなかったせいにするのはおかしい気もするが、その時はあまり人の感情は理解ができなかった。
男女2人および女は俺が聞いてもかたくなに自身の名前を教えたがらなかった。
そのかわりといってもいいのか俺の名前は付けられなかった。
何か雑に
3号やお前、貴様などと女には呼ばれていたはず。
ちなみに男女2人とは必要以上のことは基本的に話さないので、よくわからない。
毎朝あの施設では番号の女に言われていることがあった。
「お前たちは悪人という自覚を忘れるんじゃないわよ」
隣で聞いている2人は真面目な顔をして頷いているが、これは今になっても謎のままだったが、俺にも話しているということは何か関係があるのだろうが、いくら考えても分からなかった。
施設での生活は4年ほど続いた。
あの日俺は始めてあの女に逆らった。
今となってもなぜ最初からそうしなかったかが不思議なのだが、きっとその時の俺は何も分からずにただ過ごしていたのだろう。
逆らった当初はもうあの生活に飽き飽きしたのだろう。
前から計画していた脱出のルートで施設から逃げ出した。
その時に初めて知ったのだが施設は山に囲まれていた。
施設で授かった自慢の体力で山々を越えていき、2、3個越えていった。
「こ、ここまでくれば・・・」
近くにあった大岩に腰かけ、休もうとした直前に後ろに人の気配を感じた。
「だ、誰・・ブァッ!・・・」
そう言って振り向いた瞬間、口元を押さえつけられ、その場に倒れこんだ。
倒れこみ、正気に戻って辺りを見渡すと押さえつけた人物が一瞬で特定できた。
わかる。分からないはずもない。つい前日まで一緒にいたあの男女2人だった。
「な、なにをするんだ!というかどうやってここまで・・・見つかったらどんなことになるかわからない んだぞ!」
そう質問の嵐でせまるが、俺から見て無口な男女は何も動揺することなく答えた。
「「逃げ出してくれてありがとう。君は私たちの代わりに立派に生き抜いてくれよ」」
「僕はライト」「私はクーダ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!一緒に、一緒に逃げよう!」
今はつまらないツッコミなどどうでもよい!ただ、今は、この二人と一緒に逃げなければならない気がしてならない。
だが、二人は俺の相談に首を横に振り、走り去って行った。
「待ってくれ!」
俺はそう叫んで走り、追いかけたが、二人のスピードには追いつけずにその場で倒れこんだ。
そこからの意識は目の前に父さんが映るところから始まっていった。
俺はあの時、男・・・ライトとクーダはいつも見守っていてくれていたことが分かった。
動機はよくわからないが、とにかく味方だったということが分かった。
木の枝の隙間からは光が漏れ、右目に当たり、眩しいほどだった。
「・・・・・」
一晩じっくり考え、俺はある決断を下した。
モアを殺したあの兵士に復讐を果たす。
そして、
こんな政策をつくった王を抹殺する。と・・・
ひとつ補足です。2話で主人公が釣りを知らないような表現をしましたが、釣りも娯楽の1つとして考えてください。お願いいたします。
やっと完成しました!初めの秘密基地の表現が苦労したっす。
ま~たタイトルと関係のない名前になっているな。と思う方は許してください。話が進まないとよくわからない部分なので。まぁ、もっと後になりそうですけど笑
5話は話を進めますので少々お待ちください!
現在もっと早くうpできるように努力中です!
次回 5話「ホノ村への帰還」