崩れゆく日常
その暮らしは、本当に普通だった。
夫とは離婚していたけれど、娘のマユと二人、協力しあいながら生きてきた。
マユはまだ年長さんだけど、たくさん友達もいる、良い子に育ってくれている。
私は中堅企業の会社員として週に六日働いていて、なかなかマユとの時間が取れない。
でも、休みの日には思いっきりマユと遊ぶのが日課だ。
なんの変哲もない、日常。平凡だけど幸せだった。
マユとこれからも、ずっと暮らしていけると、そう思っていた。ずっと。ずっと・・・。
でも。その日は突然やって来た。
朝、
「マユ~‼」
いつもなら揺さぶるだけで目を覚ますマユが、なかなか起きない。
額には汗。熱はないけど、ものすごく苦しそうだ。
「お母さん・・・しんどいよぉ・・・」
「大丈夫。お医者さん行こうね。きっとすぐ治るからね」
車をとばして、泣きそうなマユを小児科の病院まで連れていくことにした。
診察を待っている間も、
「大丈夫。頑張って治そうね」
と励ます。
順番が来て、診査をしてもらったけど、
「風邪ではありませんね。特に最近怪しいものを食べた、等も無さそうだ。うちの医院でできる検査はしましたが、原因が分かりません。県内の、もっと大きな病院に連絡しておきましょう」
先生も、困り顔だ。
そこからは、もうドタバタだった。車で2時間の大きな病院に連れていき、診てもらう。
先程の病院と同じように、色々な検査をした。
そして、診察結果を聞くときには、マユはもうピンピンしていたけれど、私の方の疲れが溜まっていた。
でも。
診察結果を聞いたとき、
そんな疲れは消し飛んでいた。
先生の口から告げられたのは、
教科書でも聞いたことのない病名と。
余命4ヵ月の宣告だった。