第1話 建国
アースガルズ大陸は統一国家ユグドラシル帝国がその全域を支配している。
ユグドラシル帝国は人族、亜人族、神族、そして魔族が暮らしている。だが、主神オーディンの死後、各地で魔族排斥運動が盛んとなりはじめた。
人間界にある唯一の魔族領ニーベルング大陸にとある男がいた。彼の名はガルーシャといって魔族の中でも突出した力を持つ男だ。
ガルーシャはユグドラシル帝国の元貴族だったが、魔族排斥運動が盛んになり始める少し前に国家転覆罪の容疑をかけられてニーベルング大陸へと島流しになっていた。
ちなみにニーベルング大陸は魔素の嵐が激しく吹き荒れる地で、作物は育たず、水は汚染されており、凶暴な魔獣が住み着いていたりと、とてもではないが生き抜くことは難しいとされている。
さらには時折人間界から魔族討伐遠征軍が送られてきて、彼らとの死闘が繰り広げられる。
そんな劣悪な環境で過ごし初めて10年が経ち、この劣悪な環境を克服したガルーシャはその強さと人望によってニーベルング大陸カロス地方の魔族をまとめ上げることに成功し、貴族エグリアス家出身だったことを由来にしてエグリアス王国を建国し、自身の名をガルーシャ=エグリアスと名乗った。
これに魔族たちは沸き、人族たちは警戒を現すのだった。
エグリアス王国建国から一ヶ月が過ぎた。そして建国記念式典が行われる日が来た。ガルーシャは事前に人間界全域に式典の招待状を送っていた。種族の違いに関係なくである。当然、魔族撲滅を掲げるユグドラシル帝国にもである。
各国へ招待状が届いたときの反応は様々なものであった。
ユグドラシル帝国の大臣は馬鹿馬鹿しいと不快感をあらわにして招待状を焼き捨て、すぐさま軍の派遣を元老院に要請した。
バルドル大陸のエルフの国、アストレア王国は魔族撲滅を政府が主導で掲げていたため当然のように使者の派遣は議題にすら上がらなかった。
同じくバルドル大陸の亜人族国家のユリジャイル王国は使者の派遣を決めた。ユリジャイル王国はエルフ、ドワーフ、人族が暮らしている国で種族間の差別意識が極めて低いことが使者派遣の理由である。
また竜族が暮らすナハト大陸の大部族ガラハン族にも招待状を送ったが、その返事は次のようなものであった。
『建国誠に喜ばしく思う。しかし我らガラハン族は魔族にも神にも中立の立場を表明しているが故、お祝いの言葉は書面のみにさせて貰う。だが、他の部族の者にも声をかける故いくつかの部族の者がそちらへ赴くであろう。』
その他の小国家や部族、軍閥にも招待状を送った結果、14の組織から使者が来ることとなったのであった。