2話_VSキョウ
そして、二回戦。
『一回戦の激しい試合を勝ち抜いた八人のバトラー達が、二回戦も暴れてくれるぜー! まずは、二回戦第一試合、フリック対キョウ!! まずは赤コーナー、コーザに対して圧勝した、フリック!』
「「わあぁぁあああ!!」」
熱が下がらないどころか上がっている観客は、円形の闘技場に入ってくるフリックに歓声を上げた。
『青コーナー、今回初出場ながらも一回戦を勝ち上がった、キョウ!』
「「わあぁぁぁぁ!!」」
上半身裸にハーフズボンの拳闘スタイルで、キョウが出てくる。
両手を上げて、観客の歓声を煽っていた。
『戦いの前にコメントを貰いましょうー。フリック、意気込みはどうですかー?』
『うーん、上半身裸って超恥ずかしくねーか?』
サークルマイクでキョウに対して、煽っていく。
観客が、また騒ぐ。
『返すキョウ! 意気込みどうですか!?』
『うおぉぉあああ! ぜっんぜん、恥ずかしくないなぁ! このヒョロ野郎が!』
その意気込みに観客が上がった。それ程までに、キョウの一回戦の勝ち方は勢いがあったみたいだった。
『では、両者、スピリットセット!』
フリックは第一試合の時のように、緑のオーラを際立たせ、すぐさま両手にオーラで出来た短剣を出して柄を握った。
対するキョウは真っ赤なオーラを出して、握る拳に集中的にオーラが纏っていたがスピリットウェポンが出ていなかった。
フリックは訝しげな表情を見せたが、第一試合を見ずに飲み物を飲んで集中してたので、どんな戦いをしていたのか見逃していたのだ。
『ファイトっ!』
フリックは脚に纏うオーラを強めにすると、一気に駆け出した。
「ハッ! 吹っ飛べ!」
キョウを纏っていた赤いオーラが、激しいエネルギーになって爆発的に広がり、フリックを吹っ飛ばそうとする。
『ソウルバンでの爆発だー! さながらショックウェーブ!』
体中から拡散された衝撃波に、フリックは即座に前に腕を伸ばして手からソウルブーストを出したことで方向転換を行っていった。
「そんな後ろ下がってどうするんだよ! フリックっっ!」
キョウが腰を落として右拳を脇下に構える。一気に拳にオーラが集中していく。
「めんどくさい奴だな」
呟いたフリックは、左手に持っていた短剣を模っていたオーラを霧散させる。と思えばすぐに新たにスピリットウェポンで作り出された短刀を握っていた。後部が輪状になっていて、指を通してクルクルと短刀を回す。
キョウに向かって短刀を投げる。先端の刃がキョウを襲うと、拳を構えたまま、また体中から衝撃波が拡散された。
先程よりも衝撃波の範囲は狭いが、投げられた短刀は宙に弾かれた。
「そんな弱っちいいもので俺が倒されるかああああ!」
そのまま右手拳にオーラが集中したまま、右を勢いよく突き出す。
拳に集積して凝縮されたオーラが、突き出された勢いのまま放たれた。
(拳の形をした攻撃……バブルバーストとソウルバンの複合? ソウルショットか? スピリットウェポンじゃなきゃいいけど)
ソウルブーストが移動する技術としての噴出オーラなら、ソウルバンは攻撃する技術としての噴出オーラだ。
バンダナから覗く目で、どれだけの速さで思考したか謎であるが、傍目には即座に右手に持った短剣を振って、左手からソウルブーストを放って空中に跳ねた。
コーザ戦と同じように剣が当たってないのにバブルバーストが弾けたように、巨大な拳のオーラが突然大きく弾ける。
『すごい爆発だああああ! フリックの見えない攻撃が、ソウルショットを爆破させたーーーー!』
シーカーイージが爆破の感じからソウルショットと判断し、実況に力を入れた。
(あの爆破の感じはソウルショットだな)
空中に跳ねあがったフリックは、分析しながら宙に飛ばされていた短刀の柄を手に取った。
「フリックぁああ! お前、短剣に魔法使ってるんじゃないだろうなあああ!」
「使って、ないよっ!」
空中で横ぶりに回転すると掴んだはずの短刀を投げる。フリックは勢いからか、後ろに飛んだ。
察知したキョウが、再び気合を入れて体中からソウルバンを使ったショックウェーブを放つ。
今度も弾かれるかと観客は思っていたが、投げられた短刀よりも後に放たれていたソウルバンが、短刀が弾かれそうになるのを抑え込んで、ショックウェーブの衝撃波を貫通した。
短刀が飛び込み、キョウの右肩を刺した。
「くそがぁぁっ!」
スピリットオーラで構築されてる体に痛みは無いが、衝撃は走ってくる。キョウは右肩を上げようとして、短刀に動きを阻害されてるのを感じ取った。
抜き取る暇が無いと見て、切り替えて左拳にソウルショットを打つためのオーラを集積させていく。さっきよりも力は弱めだ。
それでも当たった部分を壊すくらいには強い。
ソウルショットを打つには、バブルボールとソウルバンの複合技を放つ為、溜めが必要になる。キョウは現時点で最速の部類に入っているのであったが、フリックの次の攻撃には間に合わなかった。
三個の小さなバブルボールが、既にキョウの体の近くを浮遊していた。
右肩に刺さったのを確認したのを時点で、キョウが次の攻撃を放つ以前に実行していたのだ。
「バブルフロー……、ちっ」
ふわふわと浮くバブルボールを、着弾点を設定して放たれている。
目元、首元、左手付近に飛んできて、弾けた。
キョウはすぐさま、体を反らし二つのバブルボールを避けたが、左手にダメージを食らう。
ショックウェーブの衝撃波が過ぎ去って、フリックがソウルブーストを使って一気にキョウへと詰め寄っていく。
「くそがあああああ! フリックーー!」
キョウは自分の体から出るソウルバンを上に噴出した。そのまま傷ついた左手の拳にオーラを覆い、迫ってくるフリックにストレートのパンチを放つ。
下。
に避けて、持っている短剣でキョウの体へ横に斬りつけた。
体中を纏うように噴出されているソウルバンに軌道を逸らされて、体まで届かなかったが計算済みであった。
ソウルバンを斬り飛ばす事が目的。切り開かれた隙間に何も持っていない左手の五本指の先端に小さなバブルボールを作り出して浮遊させて前に進ませる。
(これが、見えない攻撃の正体……。さっきのバブルフローもそうか……!)
右肩に刺さった短刀へのラインが開けていた。
フリックによって放たれたバブルフローは肩口で弾けて右上半身に穴を開けていく。短刀も後方に弾け飛び、肩をザックリ斬った。
キョウの纏ったソウルバンが、バブルフローの衝撃で維持出来なくなり、散る。
「……じゃあね!」
フリックは、両手に短剣の双剣になっていた。
弱い右肩を基点に、キョウを斬る。
赤色の魔気が噴き出ると、まるで鮮血のようであった。
霧散した魔気から、赤色の光球が出現し、闘技場から強制排出された。
『フリックの勝利ーーー! キョウも強かったですが、フリックの方が強かった! フリックは準決勝に進出だーー!』
観客が盛り上がりを見せる。
「キョウがスピリットウェポン使ってたら、もっと凶暴だったな」
フリックは緑のオーラを消して、呟いた。
歓声の中、フリックは闘技場から歩いて出ていく。
キョウはコーザのように、控室の道に続く道で待っているということは無かった。
ただ控室で悔しくて吠えているので、隣の控室の人には鬱陶しがられることになる。
キョウは将来的に伝説のスピリットバトラーと呼ばれるようになるが、今回は二回戦目のフリックと当たって負けることになった。
フリックは控室に戻ると、さすがに次の試合相手の戦いを見ることにした。
控室には魔力石を動力にして動いているモニターがある。
二回戦目第二試合はザン対エルエフだ。
ザンはキョウと同じく、この大会は初だ。エルエフは第一回FSBで決勝で争った相手だった。
フリックは恐らくエルエフが来ると予想した。
結果はザンが勝利していた。
三回戦目準決勝はザンという巨漢という言葉が似合いそうで、太々しいという表現があう対戦相手になった。