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1話_開幕

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『いーえーっ! 今日もお前らに解説する魔装コロシアム【フリースピリットバトル】略してFSBの説明をするぜ!』


 今日も始まった魔法もある世界の娯楽であるコロシアムで、有名司会のシーカイージーが高らかに叫ぶ。

 魔法により拡声の効果を得たシーカイージは、観客全てに声を伝えていた。

 観客席が大いに手を上げて声を上げた。

 円形の闘技場の中にはまだ誰もいない。


『フリースピリットバトル! もうお前らに言う必要無いくらい知ってるだろうが、初めて訪れてくれた人の為にも言うぜ!

 ルールは簡単。自分の魔気を使って相手を倒すこと!

 相手を倒せば勝ちだ!

 降参とかは無しだぜ!

 だってよー魔装結界張ってるんだ、どれだけダメージ喰らっても、死んだと思っても外に出れば回復だぁ!

 だったら! 最後までやれよ! なぁ、お前ら!』


「「うおおおおお!」」


 怒号のような歓声が上がる。


『今宵は第二回FSBだ! 予選を勝ち上がった参加者は十六名! バトルはトーナメント戦! 賞金は百万ゼニー! 今回も盛り上がってこうぜ! さぁ、まずは一回戦第一試合! 選手のバトラーに登場してもらおうぜ! 赤コーナー昨年の優勝者フリック!』


「「わああああああ!!」」


 さっきとは比べ物にならない程の歓声が上がった。

 異常な熱気に包まれて、コロシアムの会場に出てきたのは、スマートな出で立ちで睨みの効く顔をした男だった。頭に巻いた黒と白のヒョウ柄バンダナと同じ色柄の服を着て、ゆっくりと歩いてくる。

 手元に武器を持っていない。


『相手は青コーナー! 前回は二回戦までいったが、今回は一回戦勝ち上がれるか!? コーザ!』


「「わあぁ……」」


 さっきとは比べ物にならない程、歓声が無かった。

 気後れせずに出てきたのは、胸板の厚い筋肉質の男。顔の頬に傷があるが隠す用も無い。ノシノシと闘技場に入ってくる。

 こちらも手元に武器を持っていなかった。


 二人が闘技場の真ん中の方に少しだけ歩いた後、立ち止まる。


『さて、戦いの前にコメントを貰いましょうー。フリック、いかがですかー!?』


 何故か二人の前には円を描いた水色の薄板が浮かぶ。サークルマイクだ。

 フリックは左だけの口角を上げながら鼻で笑う。


『雑魚相手に言うことねぇよ』


 そこでも歓声は盛り上がる。


『返すコーザ、どうですかー!?』

『去年優勝したのは、スピリットバトル自体がお試し企画だからろ? そこでの優勝なんか価値ないわ!』


 勢いよくコーザが吠える。

 そこでは歓声は上がらなかった。


『では、両者、スピリットセット!』


 サークルマイクは消えて、両方からオーラが出始めた。フリックは緑、コーザは橙とオーラに色がある。

 気づけば、フリックの両手にはオーラで形作られた短剣が握られている。

 もう一方、コーザは指を下に二本伸ばして、右手にオーラで形作られた剣を握った。


「……出すの遅いね」


 フリックのバンダナの下で睨めつける目が、コーザの剣を出す動作を観察していた。

 スピリットセットでは、スピリットウェポン。それぞれ得意の武器を出す時間が少しだけ与えられていた。もし出せなくても、出さなくても戦闘開始の合図は始まる。


『ファイトッ!!』


 フリックが足元にオーラを一気に溜めて駆け始める。

 慌てたコーザは空いた左手で橙のオーラを球上に変化させて、投げた。

 投げられた玉の接近に反応して、即座に避け……ずに、手前で玉を短剣で斬る動作をすると、オーラの玉は弾けた。


『高速で迫るフリックにバブルボールを作りバブルバーストで牽制! 良いテンプレ判断!』


 魔気のオーラで作られた球上のものはバブルボール、放出攻撃はバブルバーストと名付けられていた。

 シーカイージは、バトルをしている二人の実況をもする。

 その声は集中を乱さないように、対戦する二人には届いていない。

 相手に迫られたコーザが振り下ろした剣も、横斜めに跳躍したフリックに届いていない。


(今なら当てられる!)


 それでも、跳躍したフリックに隙を見出して、左手にバブルボールを作る。

 放出しようとした所に、フリックが左手に持った短剣を消しつつ、空中で横に回転して、自分の足元の方に左手の平を向けたかと思うと衝撃波が放たれた。

 その衝撃で空中での強制移動を行う。


『お、ソウルブーストでの空中移動だーーー!!』


 もう一度のソウルブーストと言われた衝撃波で、あっという間にコーザの後ろを取ると、後ろ首を短剣で斬りつけた。


「アァァ!」


 切り口から橙色の魔気が噴き出し、コーザの体にヒビが入って霧散した。霧散した魔気の中から、橙色の光の玉が闘技場の舞台から強制排出される。

 闘技場に残ったのは、フリックのみになった。


「ふぅ、的みたいなザコだったな」


 緑のオーラを消し、捨て台詞の後、観客が湧いた。


『フリックの勝利ーーー! やはり前年度チャンピオンは圧巻だーーー!

 コーザーは癖のない良いバトルをしましたが、フリックの速さに負けたといったところでしょうかー!

 では、フリックは一旦控室へどうぞー!』


 歓声を受けながら、ゆっくりと歩いて闘技場の舞台から出ていく。


 舞台裏、廊下を歩いて静かな気持ちで控室まで行こうとすると、首を切られたはずのコーザが立っていた。

 最初にシーカイージが言っていたように、死なないみたいである。

 それは魔気によるオーラ維持が困難になると魔装結界から弾き出される仕組みになっているからだった。


「よぉ、やっぱりフリックは強かったぜ。今回も優勝しろよ」


 コーザは手を出して握手を求めると、フリックもその手を取る。


「サンキュー、そのつもりだね」


 短く答えて握手を終えたフリックは控室に戻っていった。

 舞台裏の廊下から控室の前で合流する仕組みの廊下は、アイカメラを通してモニターに映されている。

 認め合った二人は握手をして、それぞれの控室に戻っていく。


 その姿の受けが良くて、観客達に意外に評された仕組みだった。

 前回では控室前の通路で喧嘩が始まって、そういった醜い姿を映すかどうかも運営としては迷ったが、止めに入ることもできるので無くすことなく入れる事にしたのだ。


 その姿は、一回戦二試合目を行うキョウという選手の控室にある薄型モニターにも映って見れていた。

 短く刈った髪に目力のある顔。筋肉も程よくついていて、拳闘大会に出ても強そうな印象である。

 彼は一回戦を易々と勝って乗り越えた。次々と他の選手も一回戦の試合を終えていく。


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