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恋つらたん短篇集~クリスマス2013年度企画など~  作者: イサギの人
【クリスマス企画】藤井ヒナサンタ【SS】
25/34

19 【自主規制ピー】


ヒナさん「ねえねえ、シュルツさんー」


シュルツ「んー」


ヒナさん「あれ、声がぼんやりしてらっしゃいますね」


シュルツ「なんかまた眠くなってきた」


ヒナさん「二時間しか寝てませんもんねえ」


シュルツ「で、なに?」


ヒナさん「ああ、はい。わたしオープニングトークでシュルツさんのお悩みを聞いたじゃないですか?」


シュルツ「そうだねえ……ずいぶんと昔のことのようだ」


ヒナさん「18時間前ぐらいですけど」


シュルツ「地球か……なにもかも皆懐かしい……」


ヒナさん「しっかりしてくださーいー!!」


シュルツ「あぶない。息絶えるところだった」


ヒナさん「わたしを残しちゃ、やですよ」


シュルツ「根の国まで迎えに来そうなんだけど」


ヒナさん「山葡萄とタケノコを山ほど持って黄泉比良坂を下ってゆきます」


シュルツ「ヒナさんならヨモツシコメ、素手でいけるよ」


ヒナさん「なんの話でしたっけ」


シュルツ「忘れたほうがいい」


ヒナさん「あ、いえ、わたしのお悩み」


シュルツ「さ、お便りいこう!」


ヒナさん「あの」


シュルツ「24通しか読めないんだよ! 読者さんの心を思えば、こんな風に談笑している時間も惜しいね!」


ヒナさん「うー……はい、そうですね、その通りです」


シュルツ「……」(ホッ)


ヒナさん「次の時間にしますね」(ニッコリ)


シュルツ「……チッ」


ヒナさん「あの、今舌打ち」


シュルツ「してない。お名前【こしあん】さんからです」


ヒナさん「どうもありがとうございます」


シュルツ「【こんにちはヒナさん!】」


ヒナさん「こんにちはー」


シュルツ「【改めましてヒナ様!】」


ヒナさん「改めなくてだいじょぶです」(ニコッ)


シュルツ「【実は僕、昨年クリスマス二日前に彼女から『あなたより、ネット上で知り合ったサイレントヒル県民の方が好きになっちゃった!告白したらOKしてくれた!顔も見たことないんだけどねっ!キャハッ☆』みたいなことを言われてしまいました。】」


ヒナさん「あらあ……」


シュルツ「【マジつらたん。つらたん……。だからもうなんかクリスマスとかトラウマなんです。】」


ヒナさん「それは、つらたんですね」


シュルツ「【なのでこう……クリスマスをどうにかモルスァァッ!、自主規制ピー、みたいなことに出来ませんかね? どうか……この僕を導いて下さい……】です」


ヒナさん「モルスァァ、ってなんでしょう」


シュルツ「よく言ってんじゃん」


ヒナさん「え? わたしですか?」


シュルツ「ファービーみたいに吹っ飛ぶときにさ」


ヒナさん「そうでしたっけ……」


シュルツ「まあいいや。でまあ、クリスマスをどうにかしてほしいんだって」


ヒナさん「うーん、なるほどー」


シュルツ「じゃあヒナさんがこれから物理的に12/25を消し飛ばすようです」


ヒナさん「えっ」


シュルツ「どうぞ」


ヒナさん「無理です無理です。どういうことですか。変なことを言わないでください」


シュルツ「……チッ」


ヒナさん「あっ、また舌打ちっ、いけないんだっ」


シュルツ「反省してまーす」


ヒナさん「もぉ……。えっと、でもつらたんですよね、記念日に不幸なことがあると、いつでもそれを思い出しちゃいますもんね」


シュルツ「そうねえ」


ヒナさん「これは関連記憶といって、そのふたつのエピソードが強く結びついているから引き起こされるのです」


シュルツ「よく言うやつだね」


ヒナさん「残念ながら、わたし個人にはクリスマスをどうにかする力はありません」


シュルツ「え、ないの?」


ヒナさん「ないですよー。むしろなんで平凡な女子高生がそんなことできるんですか」


シュルツ「それはヒナさんだからとしか……」


ヒナさん「よくわからないですけど、さらにですね、【こしあん】さんの過去に起きた出来事を変えることもできません」


シュルツ「まあねえ」


ヒナさん「ですが! これから新たに思い出を積み重ねてゆくことはできます」


シュルツ「おー」


ヒナさん「きょうわたしがサンタさんの格好をして、【こしあん】さんにこういう風に、わたしなりの愛を届けていることなんて、ほんのささいな出来事ですけれど」


シュルツ「ん」


ヒナさん「でも、少しでも喜んでもらえれば、降り積もった悲しみの雪を、ちょっぴりでも溶かすことができたのなら」


シュルツ「はい」


ヒナさん「あとはそれを、繰り返してゆくのです。つまり具体的には、今度のクリスマスに新しい恋人を作りましょう。そうして、悲しみを上書きしちゃうんです」


シュルツ「ははあ」


ヒナさん「人の記憶は重なり合ったミルフィーユのようなものです。悲しい思い出も、その上から楽しい思い出を乗せることができたら、いつかは楽しいことしか思い出せなくなっちゃいます


シュルツ「なるほどね」


ヒナさん「というわけで、わたしは【こしあん】さんのこれからのご多幸をお祈りしております」


シュルツ「はい」


ヒナさん「一緒に、幸せ、掴みましょう!」(グッ)


シュルツ「バッチリ導いてあげたね」


ヒナさん「いえ、わたしにそんな大層なことはできません。こうしてお便りをいただいて、一緒に悩むことぐらいです」


シュルツ「ふーん」


ヒナさん「わたしもほら、クリスマス独り身ですしね」(エヘヘ)


シュルツ「そうだねえ……って」


ヒナさん「?」


シュルツ「……ボク、恐ろしいことに気づいてしまった」


ヒナさん「え、なんですか?」


シュルツ「あのさ、ヒナさんさ、落ち着いて聞いてくれるかな」


ヒナさん「はい?」


シュルツ「これ、さ」


ヒナさん「?」


シュルツ「ボクとヒナさん、さ」


ヒナさん「はい」


シュルツ「……一緒にクリスマス過ごした、ってことになるんじゃないの?」


ヒナさん「……」


シュルツ「……」


ヒナさん「……やだなぁ」


シュルツ「……!」


ヒナさん「これは番組ですよ、番組。それにスタッフさんだっていっぱいいるじゃないですかー」


シュルツ「そ、そう?」


ヒナさん「……まあ」


シュルツ「……!!」


ヒナさん「……えへへ」


シュルツ「!?」


ヒナさん「『一緒にクリスマスを過ごした』っていうのは、紛れもない、『既成事実』ですけどね?」


シュルツ「!!!!!?????」

 ヒナさんより一言:たまたまですよ♡ た・ま・た・ま♡

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