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恋つらたん短篇集~クリスマス2013年度企画など~  作者: イサギの人
【クリスマス企画】藤井ヒナサンタ【SS】
20/34

14 【毎回エタってしま】


ヒナさん「そういえばシュルツさんの時代にも、まだサンタさんっているんですか?」


シュルツ「うん、いるよー」


ヒナさん「あらあら、素敵ですね」


シュルツ「靴下転送サービスもあるし」


ヒナさん「え、なんですかそれ」


シュルツ「その名の通りだよ。枕元に吊るされた靴下の中に、ラッピングされたプレゼントが自動転送されるの」


ヒナさん「なんか未来の技術って感じですね!」


シュルツ「実際その通りで間違いないからね」


ヒナさん「靴下にプレゼントが入り切らなかったらどうするんですか?」


シュルツ「ご注文はキャンセルされます」


ヒナさん「えっ」


シュルツ「靴下のサイズをご確認の上、改めて登録をお願いします」


ヒナさん「融通きかないんですね!」


シュルツ「まあそういうものでしょ、なんでも」


ヒナさん「納得いきません……」


シュルツ「朝起きた子どもが見たのが、四散爆裂した靴下と、その上に乗ったプレゼント箱でもいいっていうの?」


ヒナさん「ああ、やっぱりはちきれちゃうんですね……」


シュルツ「まあ最初から靴下に入れて転送してくれるほうのサービスもあるんだけどね」


ヒナさん「サンタさんが靴下ごと用意するのはなんかちょっと」


シュルツ「というわけで、お便りです」


ヒナさん「はーい」


シュルツ「お名前【ワタユウ】さんからです」


ヒナさん「ありがとうございますー」(ペコリ)


シュルツ「【藤井ヒナサンタ様へというか、みかみ先生にお聞きしたい事があります。】」


ヒナさん「あら」


シュルツ「【私もいろいろと作品を書いているのですが、一向に文章力が上がった気がしません。そして毎回エタってしまいます。】」


ヒナさん「ふんふん」


シュルツ「【なんというかプロットは最後まで組んでるですが、プロット組んで満足してしまうみたいで、そっからモチベーションが上がらないです。】」


ヒナさん「ふみふみ」


シュルツ「【どうすればいいでしょう? このままだと私はずっとギャルゲーってしまい、執筆の事を忘れ去ってしまいそうです】。以上です」


ヒナさん「なるほどー」


シュルツ「じゃあ、えっとどうしよっか」


ヒナさん「みかみ先生にお答えいただきましょうか」


シュルツ「あ、そうなるんだ」


ヒナさん「というわけでこちらに原稿があります」


シュルツ「それ読み上げるの?」


ヒナさん「はい」


シュルツ「楽でいいなあ!」


ヒナさん「では【ワタユウ】さん、いきますね」


シュルツ「どぞどぞ」


ヒナさん「えー、『ギャルゲーをやるのが楽しいのなら、もう一生そっちでいいんじゃないかな、って思います』」


シュルツ「ええー?」


ヒナさん「『小説家になろうというサイトが今はありまして、これだけ執筆という娯楽が大衆化している昨今、少々勘違いされることが多いのですが、執筆というのは本来ものすごくエネルギーを使う大変な作業です。一作品を仕上げるためにかかる時間は数百時間単位。マジぱないです』」


シュルツ「ふむ……」


ヒナさん「『技能を身につけるためにひたすら時間がかかりますし、最初から人気が出る人は一握りです。黒歴史と呼ばれたりもします。なので、執筆よりも他に楽しいことがあるのなら、そのときはそちらを優先するべきなのです。そのほうが絶対健康にもいいです』」


シュルツ「ゲームは楽しいからね」


ヒナさん「『まず最初に覚えていただきたいのは、執筆というのはとても面倒くさくて、リターンが見合わない作業だ、ということなんです。報われることはほとんどありません。自分で自分を律する技能が必要です。特に完結まで導くのは大変です。鋼鉄の意思を持って完結させてやるんだ!という決意が最初はあったとしても、数百時間経過すればそんなものは薄れちゃいます』」


シュルツ「はあ」


ヒナさん「『小手先の技術でカバーするのなら、最終話を先に書く、なるべく短い話を作る、人気が出た場合に合わせて何パターンかのプロットを用意する、などなどいろんな方法があるとは思いますが。しかし、どれも決定的な解決手段ではありません。なので極端な話、一回クズ人間になってみるのはどうでしょう。モチベーションがあがらないのは当たり前のことなんです。だって執筆という作業の大半は全然面白くないことなんですから』」


シュルツ「おい」


ヒナさん「『自分は小説を書く以外にはなにもない。小説を書かねば死ぬ。小説で一発当てないと借金に殺される。人質を取られて小説を無理矢理書かされる。それぐらいの状況に陥れば、人は小説を完結させることができると思います。それほどの決意がなければ、小説を完結させることは難しいです』」


シュルツ「そうなのかー」


ヒナさん「『わたしも同じように、書き始めた小説が完結できるかどうかは、書く前に慎重に精査することにしています。プロットを組むことと書くことと続けることと完結させることには、それぞれ完全に別の技能が必要です。ひとつずつを磨きながら、がんばっていきましょう。わたしもがんばります』」


シュルツ「ふーん」


ヒナさん「『わたしは【ワタユウ】さんの今後の執筆生活を応援しています』と」


シュルツ「以上ですか」


ヒナさん「以上です」


シュルツ「ご参考になったら、うれしいです」


ヒナさん「ですですー」


シュルツ「ではこのへんで」


ヒナさん「ではではー」


シュルツ「ところで、あの人クズ人間なの?」


ヒナさん「どうなんでしょう……。丸一日書かないで遊んでいると、その日はなんだかものすごい悪いことをした気がして、自分がとても怠惰で、周りに取り残されたような感覚に陥る、とおっしゃっていましたが」


シュルツ「難儀な……」


 シュルツより一言:こういう話を書くのって、ちょっぴり恥ずかしいね、だそうです。知るか。

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