10 【人類は何日生存できるの】
ヒナさん「おはようございまーす」
シュルツ「……」
ヒナさん「朝ですよー、こちらのほうはとっても晴れていい日ですよー」
シュルツ「……」
ヒナさん「えーと」
シュルツ「……」
ヒナさん「今回は、わたしひとりだけ、です」
シュルツ「……」
ヒナさん「シュルツさん、さっきから動かなくなっちゃったんです」
シュルツ「……」
ヒナさん「たぶん、寝落ちしてしまった……のではないでしょうか」
シュルツ「……」
ヒナさん「でもそのかわり!」
シュルツ「……」
ヒナさん「わたしがひとりでがんばりますので!」
シュルツ「……」
ヒナさん「とりあえず、あの、シュルツさんは横に置いて、と」
ヒナさん「んしょ」
ヒナさん「シュルツさんのファンの方は、ちょっと、ごめんなさい」
ヒナさん「でも、きっと疲れてらっしゃったと思うんです。こんなこと、わたしもシュルツさんもなにぶん、初めての試みですので……」
ヒナさん「だから、その、シュルツさんを責めないであげてください」
ヒナさん「わたしにできることなら、がんばりますので」
ヒナさん「え?」
ヒナさん「なにか、読者サービス、ですか?」
ヒナさん「えーっと……」
ヒナさん「わたしが、ですか……?」
ヒナさん「なにか、ありますでしょうか……」
ヒナさん「んー」
ヒナさん「救急車を呼ぶかどうか迷っているときにかけると、医療の専門スタッフが対応してくれて、必要ならば119に転送してくれる番号『7119』とかどうですか?」
ヒナさん「え、そういうのじゃない?」
ヒナさん「じゃあアマゾン川で有名なピラニアは、獰猛で凶暴なイメージがあるんですけれど、実際はすごく臆病な魚で、泳いでいる人間を襲ったという記録はほとんどない、とかどうですか?」
ヒナさん「え、だめ?」
ヒナさん「ただし、血液臭には敏感で、その状態で川に入ることはオススメできないとか……あ、そういうのじゃなくて?
ヒナさん「女子高生っぽい、サービス的な……?」
ヒナさん「えと……」
ヒナさん「あの……」
ヒナさん「……」
ヒナさん「……ちゅ」
ヒナさん「……」
ヒナさん「……み、みたいな、感じ、ですか?」
ヒナさん「……あ、はい」
ヒナさん「いえ、なんか、こちらこそ、え、ありがとうございます?」
ヒナさん「な、なんか恥ずかしいですね」
ヒナさん「わたしよく言うキスプリとか、キス顔とか、たぶん無理だと思ってたんです」
ヒナさん「今初めてやってみたんですけど……」
ヒナさん「まあその、やっぱり、恥ずかしいものは恥ずかしいですね」
ヒナさん「あうあう」(テレテレ)
ヒナさん「じゃ、じゃあ、お便りいきます」
ヒナさん「いきますいきます、うう」
ヒナさん「お名前【ヒナ様に踏まれ隊】さんからです、ありがとうございます」
ヒナさん「……ヒナさまに踏まれたい? 踏まれたいんでしょうかわたしに」
ヒナさん「まあそれはいいとして」
ヒナさん「【ヒナ様、こんにちは。 理想のコーディネートのために、何度も何度も死んでまで働
き続けるヒナ様のお姿、涙を流さずにはいられません。】」
ヒナさん「えへ、ありがとうございます」
ヒナさん「【服飾のために命をかけ捨てる、そんなヒナ様を拝見して思ったのですが、もしヒナ様が本気で色気を出すとしたら、どのような格好、言動をなさるのでしょうか。】」
ヒナさん「色気、ですかあ」
ヒナさん「【また、その姿でご降臨なさり続ける場合、世界がヒナ様のものになるまで最短何時間かかるのか、もしくは人類は何日生存できるのでしょうか。よろしくお願いします】」
ヒナさん「後半のほうのご質問は、ちょっとわからないんですけど……」
ヒナさん「でも、うーん、本気で色気を、かあ」
ヒナさん「『色気』っていうのは、その人の価値観に大きく左右されると思うんですよね」
ヒナさん「ようするに『セックスアピール』ってことですから、裸婦に色気を感じる人もいれば、スカートからちらりと覗くショーツに色気を感じる人もいますし」
ヒナさん「人それぞれ、年齢も様々だと思います」
ヒナさん「それでもある程度、普遍的な要素を取り入れるとして……」
ヒナさん「髪、唇、鎖骨、くびれのライン、指先、そして仕草に気をつけますね」
ヒナさん「メイクは言わずもがな、香水や衣装も整えた場合」
ヒナさん「んー……」
ヒナさん「結局、うん、ご令嬢や女優さんみたいな格好になる気がしますね」
ヒナさん「言動はあんまり変わりませんよ?」
ヒナさん「あ、でも本気で、だとしたら、うーん」
ヒナさん「その相手の求める理想の姿を、相手によって使い分ける感じになる、かなあ」
ヒナさん「男の人も女の人も、ここをくすぐられるのが一番気持ちいい、ってところがありますよね? プライドでも、なんでも。そこをずっと優しく刺激し続けることになると思います。ずっと、ずっとです。わたし以外目に入らなくなれば、色気の問題でもなくなっちゃいますしね」
ヒナさん「と、こんなところでよろしいでしょうか」
ヒナさん「それでは皆さま、きょうも一日、よろしくお願いしまーす」
ヒナさん「最後にもう一度」
ヒナさん「メリークリスマスです」(ニッコリ)
ヒナより一言:相手を恋に落とすだけなら、『色気』はほとんど必要じゃありませんからね。やっぱりわたしは、あんまり色気ないんだと思います。