07 【学力とか異世界とかどう?】
ヒナさん「ぱんぱかぱーん」(ぱちぱちぱち
シュルツ「ヒナさんが鎮守府に着任しました」
ヒナさん「夜中の三時です、おやつの時間ですよー」
シュルツ「おー、なんか運ばれてきた。なにこれ」
ヒナさん「パネットーネです。イタリアの菓子パンですね。クリスマスによく食べるお菓子なんですよー」
シュルツ「ふーん」
ヒナさん「ドライフルーツの仕込みからがんばりました。よければスタッフの皆様でわけて食べてください」(ニッコリ)
シュルツ「……あのさ」
ヒナさん「はい?」
シュルツ「些細な疑問なんだけど」
ヒナさん「はい」
シュルツ「いつの間に?」
ヒナさん「え?」
シュルツ「いや、だって、一緒に閉じ込められているじゃん」
ヒナさん「 」
シュルツ「え、なに、なんで黙るの」
ヒナさん「 」
シュルツ「『乙女は辛いデス』一緒に攻略しているじゃん。抜け出せないじゃん」
ヒナさん「 」
シュルツ「なのに、なんであの世界から抜け出てケーキとか菓子パン焼いてんの?」
ヒナさん「シュルツさん」
シュルツ「はい」
ヒナさん「これはわたしとシュルツさんが、死ぬ前に見た夢なんですよ」
シュルツ「なにそれこわい」
ヒナさん「楽しみましょう」
シュルツ「え、やだ、こわい」
ヒナさん「それではお便りです」
シュルツ「ちょっと待ってよ、このくだりちゃんと最後までやってよ。不安が止まらないよ」
ヒナさん「お名前【リコピン眼鏡】さんからです」
シュルツ「どういうことなの、ヒナさん」
ヒナさん「【センター試験は迫っていますが未だに進路は決まってないしほぼ勉強はしてません。】。また学生の方からのお手紙ですねー」(ニコニコ)
シュルツ「なんでボクたちここにいるの? マジで」
ヒナさん「【それはともかくヒナさんとシュルツさんの学力とかどんな感じですか?】。うーん、別に普通ですけどね?」
シュルツ「もうお便りに集中できないよ」
ヒナさん「【あとヒナさんが異世界に召喚されたら異世界は一体どうなってしまうのでしょうか?】。以上二件のご質問ですね。お便りありがとうございますー」
シュルツ「ねえねえ」
ヒナさん「シュルツさん」
シュルツ「はい」
ヒナさん「いいじゃないですか、そんな些細なことは。今はご一緒に踊りましょう。ふたりで朝まで」
シュルツ「かなり重大だと思うなあ……まあ、ボクが悩んでも仕方ないことだろうけどさ……」
ヒナさん「それで、学力なんですけど」
シュルツ「んー、まあ、ボクはまあまあだったよ」
ヒナさん「まあまあなんですか?」
シュルツ「通っていた高校は中の中ぐらいだったけどね、その中では20番以内ぐらいにはいたよ」
ヒナさん「わー、すごーい」
シュルツ「コツコツやるタイプだからね、ボク。ヒナさんは?」
ヒナさん「わたしは一番近い公立高校に通っているんですけどー……中の中ですね」
シュルツ「一番いいときは?」
ヒナさん「中の中です」
シュルツ「一番悪いときは?」
ヒナさん「中の中のです」
シュルツ「……ん?」
ヒナさん「いや、ほら、平凡な女の子がウリなので」
シュルツ「……どういうこと?」
ヒナさん「うちの学校、一学年に120人いるので、常に60位です。上からも下からも60番目です」
シュルツ「常に?」
ヒナさん「常に」
シュルツ「……おかしくない?」
ヒナさん「なにがですか?」
シュルツ「いや、だって、平均点ってさ……取ろうと思って取れるもんじゃないでしょ?」
ヒナさん「取れますよ」
シュルツ「だって変動性じゃ……」
ヒナさん「取ってますよ?」
シュルツ「……全教科?」
ヒナさん「全教科」(エッヘン)
シュルツ「吉良吉影なの?」
ヒナさん「え、なにがですか?」
シュルツ「ヒナさんこわい」
ヒナさん「えっ」
シュルツ「ぱないわ」
ヒナさん「こ、こわくないですよー?」(ニコニコ)
シュルツ「異世界いったらどうなっちゃうの?」
ヒナさん「さ、さあ……行ったことがないので、なんとも」
シュルツ「召喚されたとしよう」
ヒナさん「はい」
シュルツ「あなたの前には魔族の姫がいます。『この世界を冒険者の手から救ってください』って頼まれます」
ヒナさん「頼まれちゃいました。がんばります」
シュルツ「~3年後~」
ヒナさん「世界は平和になりました」
シュルツ「どのように」
ヒナさん「話し合えばわかるんじゃないでしょうか」
シュルツ「言葉が通じなければ?」
ヒナさん「どうしましょう。とりあえず手を握って目を見つめます。気持ちは伝わると信じています」
シュルツ「殴ったりしない?」
ヒナさん「わたしは平和主義者ですよ?」
シュルツ「ヒナさんの目の前で冒険者が魔族を殺していたりしても?」
ヒナさん「とりあえずは話し合いたいです」
シュルツ「そうか……」
ヒナさん「はい」
シュルツ「ヒナさん、異世界にいけばいいんじゃないかな」
ヒナさん「どういうことですか」
シュルツ「ヒナさん、生まれる時代を間違ったよ。治世のビッチ、乱世の奸雄だよ」
ヒナさん「どういうことですか……」
シュルツ「今からでも遅くないよ。異世界に召喚されよう。是非。是が非でも」
ヒナさん「やだ、シュルツさんこわい……」
シュルツ「こわい!?」
ヒナさん「こわい……」
シュルツより一言:異世界にいる召喚師さん、ぜひこの放送を聞くことがあれば、黒髪でサンタコスで17才の女子高生(恋愛力53万)を召喚してやってください。