06 【どちらに惚れて応援する?】
ヒナさん「夜分遅く失礼いたしますー」
シュルツ「はい」
ヒナさん「わたしサンタといいますけれどー」
シュルツ「はい」
ヒナさん「今年一年頑張った子に、プレゼントを届けにまいりましたー」
シュルツ「あ、大丈夫です、間に合ってます」
ヒナさん「!?」
シュルツ「お帰りください」
ヒナさん「すっごい良いプレゼントですよ?」
シュルツ「タダより高いものはないんで」
ヒナさん「え、えっと、割と露出度高めです」
シュルツ「ビッチは敵なんで」
ヒナさん「肩を出して、ナマ足で、結構寒いです。帽子のぽんぽんをナデナデしてぬくもりを得てます……」(ナデナデ)
シュルツ「着ればいいじゃん」
ヒナさん「スタッフさんに用意してもらったものなので……」
シュルツ「ていうかなんなのこのコント」
ヒナさん「えへへ、楽しいですね」
シュルツ「ちょっと眠くなってきた」(ゴシゴシ)
ヒナさん「もう午前二時ですもんねー」
シュルツ「お便りいこ、お便り」
ヒナさん「はぁーい」
シュルツ「お名前【ぺんぎん霊夢】さんからです」
ヒナさん「ありがとうございますー」(ニッコリ)
シュルツ「えー、お便り【ヒナさんは、超絶イケメン(性格も人格もなにもかもイケメン)な世界を滅ぼす発明を完成させようとしている天才科学者と、全人類の未来を背負って その科学者の発明の完成を止めようとしている謎の全身タイツ男(言動はすべてクソ外道だけどやることはまごうことなき英雄)な二人のどちらに惚れて応援するのでしょうか。】 」
ヒナさん「ほむ」
シュルツ「【よろしければ教えてください。】だってさ」
ヒナさん「ほむほむ」
シュルツ「天才科学者と、謎の全身タイツ男。どっちが好き?」
ヒナさん「うーんそうですねー……」(ニヘラァ)
シュルツ「あ、なんかスイッチが入った」
ヒナさん「……」(エヘヘ)
シュルツ「ただいま妄想中です」
ヒナさん「……」(ウフフフ)
シュルツ「しばらくお待ちください」
ヒナさん「……」(!)
シュルツ「事件があったようです」
ヒナさん「……っ」(ウルウル)
シュルツ「世界が滅ぼされたのかな」
ヒナさん「……はふぅ……」(ぷるぷるぷる……)
シュルツ「カメラ止める?」
ヒナさん「あ、大丈夫です」
シュルツ「戻ってきた」
ヒナさん「決まりました」
シュルツ「そうか。ではどうぞ」
ヒナさん「わたしはふたりに惚れました」
シュルツ「過去完了形!?」
ヒナさん「あ、わたしの物語の話ですよ?」
シュルツ「しらねえよそれ」
ヒナさん「科学者さんが世界を滅ぼそうというのは、きっとそれだけの傷を心に負ったからじゃないですか? 人格がイケメンなのにそんなことするなんて、よっぽど理由があるんですよ」
シュルツ「うん」
ヒナさん「でも世界が滅ぶってことはわたしも滅んじゃうじゃないですか。すべての滅びの中でその人と一緒に手を取りながらふたりで死んでゆくってものすごくとてもロマンチックだと思うんですけどでもそれって結局滅びゆく愛っていうか退廃的すぎてふたりは結局幸せになれないのならわたしはその科学者さんを堕落させてどこまでも世俗にまみれた快楽を与えて絶対にこの世界で生きていかなきゃいけないんだっていう気にさせてふたりでずっと隠遁生活でもなんでもいいですから山頂とかに暮らしてただただ穏やかに生きていけたらそれが一番いいんじゃないかって思うんですよわたしだって世界を滅ぼすだなんて悲しいじゃないですかいろんなとってもいろんな人がこの世界に生きているっていうのにそれがその人の望む未来でもいやむしろだからこそわたしはその人のためにそんなことを見過ごすわけにはいかないんです」
シュルツ「お、おう」
ヒナさん「謎の全身タイツ男さんだって世界を滅ぼすことがいけないからってその科学者さんを止めるんですからわたしたちの想いはすでに通じ合っているんですよだったらきっとわかりあえるはずです一緒に手を取って三人で仲良く暮らす未来もあるのかなってそういうのも素敵かなってわたしさっきの自分物語でそんな夢を見てウフフアハハってなっちゃってかなり素敵でした素敵でしたからにはきっとわたしはそういうことを実現させるために尽力しますのでどうかシュルツさんわたしのことを応援していてくださいお願いしますわたし頑張りますのでおふたりに惚れておふたりを応援しようと思います藤井ヒナは」
シュルツ「……」
ヒナさん「以上です」
シュルツ「あ、はい」
ヒナさん「……」
シュルツ「いいと思います」
ヒナさん「……あの、シュルツさん?」
シュルツ「ん?」
ヒナさん「……もしかして、聞いてませんでした」
シュルツ「うん、『夜分遅く失礼いたします』辺りから」
ヒナさん「!?」
シュルツ「フ」
ヒナさん「うう」(しょんぼり)
シュルツ「それではまた一時間後にー」(ニヤニヤ)
ヒナさん「ああ、でも、そんないけずぅなシュルツさんも、すてき……」(陶然)
シュルツ「!?」
ヒナさん:あ、だめ、ラブが止まらなく、あ、だめ。