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君が笑うというならば

作者: 庵堂まろこ

拙い!とにかく拙い\\\\└('ω')」////

これが夢だったのなら。


何回も何回も同じ事を言った。


君を目の前にして、ただただそれしか繰り返す言葉がなくて。


赤く染まった僕の手と、紅く染まったキレイな君。


それを眺めて僕は狂ったように笑った。


今この瞬間だけは、君は僕のものなんだと。


君は僕だけのものなんだと。





−−−−3日前。


僕、朝代睦月と、親友の武井佑樹は、数学の補習を受けていた。

正確には、佑樹に僕が付き合わされただけなんだけど。


「おい、佑樹。こんなのもわかんないのか?」

そう言って、僕は問題を指す。

中2の問題。僕ら中3にとっては簡単なハズだ。

 

だけども佑樹は考えてもわかんないらしく、うめき声をあげている。

「うー…わかんねぇよ」

「やっぱ…バカだ」

「何か言ったか?」

僕はてきとうに笑って誤魔化す。


そして、ふと思う。

いつもこいつといると思うことだが、やはり、納得できなかった。

(なんで、こいつがいいんだよ…)

眉をよせる。

そして、ため息をついた。



中3にもなれば、好きな人くらいいる。

同じ3組の、高野百華だ。

元気で明るくて、でも辛さを我慢して、ときより見せる表情が、ずっと僕の頭に焼きついてる。

自分の想いに自覚してからは、話しかけて頑張って、今では女子の中で一番仲のいい友だちだ。


だからこそ、気付いてしまった。


高野は佑樹に惚れてる。


だけど、佑樹には好きな人がいるんだよ。

これまた同じクラスの斎藤深雪。

一目惚れだったらしくて、何年間かずっと好きらしい。

それを聞かされたときは、「すげぇな」って言って、笑ってやった。


おかしくなったんだ。

小説やマンガとは本当に違う。奇跡が起こるわけがない。

みんなすれ違ってる。


だから、見てるだけでよかった。

高野に告っても、どうせフラレる。

結果が目に見えてるのにわざわざ危険を冒す必要なんてない。



そんなことを考えてると、佑樹が話しかけてくる。

「あ、あのな、今日斎藤が…」

なんてタイミングだ、とは思いつつも、続きを促す。

「わ、笑いかけてくれて」

そうして佑樹は頬を染めて俯く。

お前は女子か!ってツッコミたい右手を左手で抑えつつ、引きつった笑顔で「よかったな」って言った。

それだけで、佑樹は嬉しそうに笑う。

(あー純粋だなー。高野もこんなとこが好きになったのかなー。なんて)

自嘲気味に笑う。

(知ってる)

知ってるよ。佑樹のいいとこなんて。

たくさん。

(最近こればっかだな)



放課後。

下駄箱に行くと、斎藤がいた。

話しかけるべきなのかわからず、とりあえず一瞥だけする。


すると、斎藤が口を開く。

「わた、私、朝代くんのことが、すっ好きなんだけど!」

目を大きく開く。

言っている意味はわかったけど、脳は理解しようしない。

発さられた言葉が僕の頭を横切る。

(好き?)

斎藤は顔を真っ赤にしてる。

あー…これ、本気なんだ。佑樹はどうするのかな。

辺りを見回す。

佑樹はいない。そっと安堵の息をもらす。


そして、僕は「ごめんね」とだけ言って、その場を去って行った。





「おはよー!」

佑樹があいさつしてくる。

昨日の夜は、佑樹にバレてないか不安でしょうがなかった。

だけどふつうに接してくるから、きっと知らないのだろう。


またもため息をつくと、ポケットに入れてた携帯が鳴る。

辺りを見回す。

教室の中では何人か携帯をいじってるやつがいた。

メールの差出人を見る。

『高野百華』と表示されていた。

「え……」

僕はふたたび辺りを見回して、メールを開いた。


そこには

『私実は武井くんのこと好きなんだけど、あっ!これ内緒だよ?あんただから言ったんだからね!?

とりあえず、どうすればいいと思う?』

とかいてあった。

「なんでかなー…」

良くないことって重なるばかりだな。

最近ため息ばっかりだ。


僕は携帯をポケットにしまうと机にうつ伏せになる。


今は、何も考えたくなかった。

僕の親友の好きな人は僕が好きで、僕には他に好きな人がいる。

そして、その好きな人は親友が好きだなんて、どんなだよ。


「………」

いっそ、高野は佑樹に告ってフラレてしまえ。

そんなことを考えてしまう。

そして、そんなことを考える自分が心底嫌になった。


すると、またしても携帯が鳴る。

(誰だよ、こんな時に……)

起き上がって携帯を見ると、どうやら登録してないアドレスだった。

首を傾げながら内容を見ると…


『ごめんね、でも諦めきれなくて。

 私は本気だから。朝代くんのことが好き。

 考えといて       斎藤深雪』


「……!?」

誰かが勝手に教えたんだろう。

もしかしたら高野かも知れない。

高野と斎藤は、仲が良かったから。


僕は、携帯をすぐさまポケットにしまうと、教室を出た。



そんな僕を、佑樹が見てるとは知らずに。




次の日。

僕は、憂鬱ながらも学校へ来ていた。

そして、佑樹が話しかけてくる。

「おはよ、睦月」

「………おはよ」

佑樹がいつもと何だか違うような気がする。

(気のせいかな)

笑顔なのに、目が笑ってない。


佑樹が口を開く。

「斎藤に告られたん?」

「…っ!?」

思わず反応してしまう。

そんな僕を見ると、佑樹は「やっぱりな」って言った。

(なんで知って…)

「なんで、言ってくれなかった?」

「あ…」


佑樹は、悲しそうな表情をしていた。

何も言えない僕に、佑樹は複雑な笑みを浮かべて去って行った。


呆然と立ち尽くしていると、高野が話しかけてくる。

「ねぇ、睦月?」

「………何」

好きな人から話しかけられても、今の僕には返事をするのが精一杯だった。

「話があるの。来て?」

「…………授業が始まる」

視線を合わせようとしない僕を見て、高野はため息をつくと、「いいから」と言って、僕の腕を引っ張った。



連れて来られたのは、屋上だった。

「ここなら誰も来ないから」

そう言って、鍵を閉める。本当だったら、立入禁止だ。


しばらくの沈黙の後、高野がそれを破る。

「武井くんってさ、深雪のことが好きなんでしょ?」

「………」

「いいよ、わかってるから」

高野は微笑む。

(なんで笑ってられるんだよ)


僕は、高野が佑樹のことが好きだって気づいた時、どうにかなりそうだったのに。

なんなら高野の笑顔をぶち壊してしまいたいほどに。


「なんで、知ってんならあんなメール寄越した?」

「…別に。本当にどうすればいいかわからなかったから」

(じゃあ僕は?僕は、どうすればいい?)

「とにかく、武井くんのことは諦めるよ。好きな気持ちは消えないけど」


「ねぇ、それ、なんで、僕に言うの?」


思わず咎めるような声が出る。


高野は一瞬、目を大きく開くと、すぐに笑う。

「…………」

そして、聞き取れない声で何か言った。

「え、今なんて…?」

「別に何も!」

「…そう」


(なんだろ…)

自分の中で、黒い感情が渦巻いてるような気がする。


このままじゃ、どうにかなってしまいそうだ。


「話、終わった?じゃあ僕もう行くよ?」

鍵を開けて、屋上を出た。


「……っ!何でここに」

ドアの先には、佑樹がいた。


「何で佑樹がここにいるんだよ…?」

声が震える。

「ごめん」

「え?」

佑樹は一言だけそう言うと、去って行こうと、背を向ける。

「おい!佑樹!!待てよ!どういうことだよ!?」

佑樹は振り向くと、笑った。

「………え」

「ごめんな、睦月。言ってくれなかったことに怒ってた。だけど、今考えるとお前の優しさだよな」

「あ…僕こそ、ごめん」


そうして、満面の笑みになる。


佑樹のその笑顔が、頭から離れなかった。






放課後、佑樹が笑顔でとんでもないことを言ってきた。

「俺、高野に告られたから付き合うことにした!」

「……は?」

自分でも、間抜けな声が出たと思う。

「え、ちょ、まっ……斎藤は?」

混乱する頭をおさえつけ、なるべく冷静に問う。

すると佑樹は、ニヤリと笑って、

「失恋を癒すには、新しい恋って言うだろー」

と言い放った。


『武井くんのことは諦めるよ』


高野の言葉が過る。

あの言葉を聞いて、何だかホッとしている自分がいたことに、今気付く。

「あ、そうか、よかったな」

「うん!」

「え…」

後ろを振り向くと、高野がいた。


「……………」

いたたまれなくなって、その場から逃げ出した。


「え、睦月!?」

後ろから高野の声が聞こえる。

だけどそんなことお構いなしに僕は、階段を降りていった。



下駄箱のところで、呼吸を整える。

「なん、で…」

なんで高野は佑樹に告った?

諦めるんじゃなかったのか?

なんで佑樹は付き合ったのか?

斎藤が好きだったんだろ?

なんで僕は

「なんで、逃げ出した…?」


「睦月!!」

ドキッとする。高野の声だ。

ダメ…だ。今は来ないでくれ。来たら、どんなことをするかわからない。


だけど、高野は戸惑いもせずに、僕に近付く。

そして、僕の腕に触れた。

「どうしたの?睦月…」

「…さい」

「え…?」


あぁ、もう…


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!!!!」


「ちょ、睦月?」


高野は、僕が君に名前を呼ばれる度に心臓が締め付けられるような思いになってることに気付いてないんだろ?

僕が、どんな思いで、高野に話しかけてることにも、気付いてないんだろ?


「名前を呼ぶな!!」


叫んだ。

あぁ、何でこんなにも…

「バカなんだ……」


「あの、睦月…どうしたの?」

高野は心配そうに僕の顔を覗きこむ。

そして、そんな高野を僕は見つめた。

きっと、すごく獣のような瞳をしてたんだろう。

高野は小さく「ひっ」と言った。


「ねぇ、何で高野は気付かないかなぁ。こんなことすると、どうなるのかなんて、わかるよね…?」


いつもより声が低くなる。

「ねぇ、高野…?」

高野の目を見る。高野は複雑そうな顔をしていた。


「どうなるの…?」


高野は言った。

そんな答えが返ってくるとは思わなくて、思わず目を開く。


すると、メール着信の音が聞こえた。

「あ、武井くんからだ」

「……」


その瞬間、何かがプツッと切れるような感じがした。

僕は、高野から携帯を奪い去り、そして投げた。

「ちょ、睦月…?」

「うるさい」


そして、高野に強引にキスをする。

「むつっ…んっ…」

離れようとした高野を思いっ切り引っ張って、また唇を重ねる。

全てを奪ってしまおうと、高野の唇の隙間から舌を入れる。

高野は、抵抗しようと、僕の胸を押し返すけど、到底男の力に敵うわけない。


「なん…で、こん……な」

途切れ途切れに訴えてくる。

そんな様子の高野を、かわいいなぁ、なんて呑気なことを考えてしまう。

「何で、って、どうなるか知りたかったんでしょ?」

そう言うと、高野は、肩を震わせる。


唇を離すと、舌が名残惜しそうに糸を引いた。


「睦月…」

「ん…?」

「やめ…って、んぁ」

首筋を舐める。そして、今度はきつく吸う。

その度に震える身体が愛おしくて、壊したくなった。


「ん…やっ、あっ…」

いつもの元気な高野とは違い、艶を帯びた声に胸が高鳴る。

「やっば、止められない…」


スカートの中に手を突っ込む。

すると、高野が震える手で僕の腕を掴む。

「何…?高野」

「やめ、てよ…睦月…」

「ふーん、こんなに悦んでるのに?」

しゃがみこんでスカートをめくる。

そして、敏感な部分を舐める。

「ひあっ!?」

「あれ?ここ弱いの?」

もう一度、布越しで舐める。高野は声を抑えるように手で口を塞ぐ。


「あーあ、ダメじゃん。そんなふうにしたら余計に…」

布を剥ぎ取る。

露になった肌にもう一度舌を這わせた。

「んん…っ」

それを何度かやったけど、高野は、もう抵抗してこなかった。


「ねぇ、何で、抵抗しないの」

高野の制服のボタンをひとつ、ひとつ取っていく。

高野は首を左右に振るだけで、何も言わない。


その代わり、潤んだ瞳で僕を見てきた。

「何…?その顔。誘ってんの?」

高野はまた顔を振る。

絞り出すような声で、言った。

「ちが……う!」

「……つまんない」

僕はそう吐き捨てて、もう用は済んだとでも言うように、下駄箱から靴を取る。


「え…睦月…?」

「何?続きして欲しいの?」

「ちが…。帰るの?」

「君は彼氏の元へ行けば?」

靴を履く。高野がどんな顔をしてるかなんてわからない。

知りたくない。


だけど、そんな様子の僕に、高野は乱れた服装を整えながら、まだ話しかける。

「ねぇ、話を聞いて…」

「僕は話すことなんてないよ」

「私はあるの!」


高野は僕の服を引っ張って、無理やりそちらへ顔を向かせる。

「何してんの…」

「私は…っ!!睦月のことが」

「やめろよ、聞きたくない!!!」


高野を思いっ切り突き飛ばす。


−−−ガンッ


鈍い音がした。


「え……?」


そこには、壁にもたれかかって座り込む、高野が…

「なんで…?」

血を流していた。


「ちょ…待てよ…おい」

揺さぶる。

だけど、返事はなくてた高野の閉ざされた目からは涙が流れた。

「なんでだよ…」


焦る気持ちと裏腹に、どこかでこれでいい、と思ってる自分がいた。


「死んだのか…」


人の死とは、案外簡単な出来事なんだな、と思った。


「あは…あははははは……」

どうしてか、笑いが止まらなかった。


動くことない高野に、そっと口づける。

そして、きつく抱きしめた。

「あ…」

(まだ、心臓…)


今、助けを呼べば、助かるのかも知れない。

だけど僕はそれをしなかった。


「これでずっと……」




その時届いたメールに気付かず、僕はただ高野を抱きしめていた。



そのメールには…



『送信者:武井佑樹

 本文:よう!そろそろネタバレしてるかな?

 本当は、俺と高野は付き合ってませーん!

 びっくりしただろ?

 実は斎藤のことも嘘だったりして…( ̄ー ̄)

 お前、高野のこと好きなんだよな?

 言ってくれなかったけど、バレバレなんだよww

 とりあえず、もうわかってると思うけど、

 高野の好きな人は、睦月、お前なので

 そこんとこよろしくな!』






             *






百華は、睦月に抱きしめられて、幸せだった。

だけど、それと共に、複雑な気持ちになる。

(腕…が、動かない。こんなにも悲しい人を、私は抱きしめることができない)


思い出すのは屋上のこと。


『ねぇ、なんで、それ、僕に言うの?』


そして百華は笑うのだ。


『睦月の気を引きたくて』

最後まで読んでくれた方ありがとうございます(´・ω・`)!

がんばります

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― 新着の感想 ―
[一言] 始めは、すごい四角関係?← と思って見てたのですが、ちょっとずつ話が動いて、 リアルになってきて、睦月の理性が抑えられなくなったところくらいから、 まろこさんの文章力、すごい、って思いました…
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