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?-1.悪い奴が死に際にする過去話で実は良い奴だったって判明する展開嫌いじゃないけど悪役は悪役を貫き通してこそがやっぱ好き

「行ってきます」

『行ってらっしゃいませ、坊ちゃま』

 千年院家使用人の本当の朝の仕事は、主人を送り出してから始まる。

「さーてと。ほんじゃ今日も一日頑張りますか」

 メイド服を身に包んだ彼女の目の前には竹ぼうき、モップ、ハサミ、洗濯籠、掃除機、雑巾、バケツ、エトセトラエトセトラ。横長にズラっと整列している。

 全て、今日使う予定の彼女の仕事道具だ。

「よしよし、道具はちゃんと全部そろっているデスね」

 その仕事道具を一折眺め満足気に頷いた後、彼女――フィスは道具に向かって手をかざす。

「チチンプイプイあじゃらかもくれんテケレツパーのビビディバビディブゥ」

 テキトーさ溢れる魔法の呪文をフィスが唱えると、道具がそれぞれまるで意思を持ったかの様に勝手に動きだした。

 バケツやハタキに洗濯籠は宙を舞い、箒とモップそれから掃除機は優雅なワルツを踊るかのように床上を滑り、ハサミを始めとする剪定用の道具はチョキチョキとリズミカルに刃をならす。

「んじゃ! あとはよろしく〜」

 後は済んだとばかりに、魔法を駆けた道具たちに背を向けてフィスは手を降る。

 すると、それが合図だったのかのように、手を振るフィスを残して道具たちは虫の子を散らすように屋敷のあちこちへ散開していく。

 フィスが振った手を疲れて下に降ろす頃には、道具たちは元会った場所からは一つ残らず姿を消していた。

「フィスの本日のお仕事、終了ぅ〜。あー、働いた働いた。さーてと特にやることもなくなったし、これから部屋に戻って『黒執事』続きでも読むとするデスか」

「あなたの働きを見ていると、私が仕事するの時々馬鹿馬鹿しくなるんだけど」

 様子の一部始終を後ろから見ていたもう一人のメイド――栂藤つつじが嘆息を吐く。

 現在時刻は午前八時半。坊っちゃんが学校へと経って行き、千年院家に住み込みで働く使用人たちの本格的に慌ただしい朝はここから始まる。

 ――はずが大部分の仕事はたった今、独りのメイドの手によりオートメーション化され、ここにほぼ全てが終了した。

「なーに言っとるんデスか、栂ちんは。私みたいに楽して働こうが、あなたみたいに真面目に取り組んで働こうが、お給金は一緒じゃないデスか。ウチは裁量労働制じゃないデスよ」

 裁量労働制とは、時給日給月給の様に仕事をした時間で給料を払う仕組みではなく、仕事の出来で給料を払う労働形態の呼称である。

「だから余計に困っちゃうんでしょうが、私の後の仕事時間の過ごし方をどーすんのよ」

「公務員じゃあるまいし、そんなジレンマを抱えなくても」

「いまの発言で、確実にどこかの人達を敵にまわしたわよ。だいたい、公務員って時間外の労働が多いらしいわよ」

 学校の先生一つの例をとってみても、授業の準備や、宿題や試験の問題の作成、部活の顧問として土日の出勤、それに加えて先生の勉強もある。

 苛め問題にモンスターペアレント、教育の質、教育法の改正による迫られる変化への対応、ストレスマッハ。

「ま、全部これを書いている人の想像なんデスけどね」

「ねえ、誰に向かっていってるの?」

「気にしちゃ負け、デスよ」

 今回が特別編だからってやめてくんないかな、そういうメタな発言は。

「別に魔法で仕事を勝手にさせているだけで、本当に仕事が終わった後じゃないからいいじゃないデスか。今から掃除とかしたってぜんぜん構わないデスよ」

「あんた、その度に私が何度塵一つ無い廊下とか、綺麗に整理整頓された部屋とか、純粋無垢なまでに綺麗になった洗濯物とかで虚しく仕事させている上で言っているでしょ」

「うん!」

 つつじの追及を答えたフィスはいやらしい笑みをを無邪気なものへと変えた。

 その無邪気さとたるや子供のように純真無垢なもので、顔だけ見れば悪いことを考えてなど思われもしないだろう。

「あーもう、本当にどうすんのよ。まだお仕事の時間は始まったばっかりだし、かといって仕事は無いし」

「慌ただしい労働時間に縛られた使用人たちを開放し、仕事を頑張ろうとする人らには全ての仕事をつけいる余地が無い程に奪ってあげる。これ、みんな悪魔の仕事なんデス」

 そう言った後、フィスは恭しく頭を下げて顔を上げた時、その手はご丁寧にも一輪の赤い花を摘まんでいた。

「カリオストロの城のルパンのパロなのは分かったけど、つまり真意は?」

「人の困った顔がだーい好き!」

 千年院家のメイドを始めて五年目になる栂藤つつじにとって、小悪魔でも目の前にいるのは仕事の大先輩。

 喋り方は本人経っての希望もあって比較的ライトなものが許されているが、さすがに殴ることまではできない。もっとも、ただの人間である彼女に、小悪魔である彼女を殴ることができるのかは怪しいが。

「はぁ〜あ。どうしよ」

 つつじの憤ってしまったやるせない思いは、重い溜息になって少し吐き出された。

「いいデスねー、その顔が見たかったんデス。困惑、憤怒、躊躇い、憂鬱、そして諦め。全てがないまぜになったいい表情してます」

 フィスはつつじの怒と哀の感情を嬉々として楽しむ。その所業たるや完全に悪魔のソレだった。

 そして一通り満足したフィスは、目を閉じ顎に手をやってうんうん頷いた後、至福の表情を浮かべた。

「あ〜、いいもの見させてもらいました。感謝の印に、今日の仕事時間の暇つぶしに今からお話をしてあげるデス」

「暇つぶしって……。今は勤務時間中なんだけど」

「ああ、それなら全然全く気にしなくてもいいデス」

「え、何で?」

 今度はからかうでもなくあっけらかんと言い放つフィスにつつじは戸惑った。

「だって私の入る時のシフトって、私が開始早々に終わること前提で組まれたものデスし。こうして暇を弄んでいることだって、大旦那様は承知の助デスよ? いんや〜、デキ過ぎるって辛いねぇ」

「へっ!?」

 その言葉に、つつじはさらに戸惑いの色を濃くする。動揺の度合いで言えば、今までの比じゃない程に。

「本来ならこの家の仕事なんか、私一人で全部終わらせられますからね。広い屋敷をメイド一人に全部仕事させるのも体裁が悪いんで、二人分で入れてるんデスよ。ああそうそう、ちなみに私の入る日は他のメイド以外の当家の使用人は休みにしてますよ。私が全部やるんで」

「いつもフィスと組む時、仕事しているのが私一人だけって状況やたらおかしいと思っていたんですよ。でも、私は私でやれることは精一杯してきたんです。それなのに私のしてきたことってもしかして……」

「ぶっちゃけるとクラウン、デスね」

「そんなピエロをちょっと捻った言い方なんてしなくていいからっ!」

「あんまりだ」と顔を覆うつつじ。その眼にはうっすらと涙が滲んでいる。

「おーよしよし、辛かったでしょう。さあほら、お姉さんのお胸で存分にお泣きなさい。落ち着くまで私の話でも聞いていくのデス」

 つつじを胸に抱え慰めるとフィスは、「昔々ある所に……」と語り始めた。


  *  *  *  *  *


 昔々ある所に、好奇心旺盛な女の子がいました。

 ですが皮肉にも、女の子のその様な快活な性格と反対に、身体の方はめっぽう弱く、お屋敷の中で大人しく過ごす日々でした。

 そんな女の子の唯一の楽しみは、家にある古い蔵の中を探検することでで、家の人間の目を盗んでは毎日こっそりと、少しの間だけ潜っておりました。

 ある日の事です。

 女の子は蔵の中で、不思議な力に引かれて一冊の本を見つけてしまいます。

 女の子は、その本がなにか特別な物であることは理解したのですが、内容の肝心な部分は難しい言葉で書かれていてよくは分かりませんでした。

 なんとか分かる部分は、この本に書かれてある儀式を行えば、不思議なことが起こるだろうという事だけ。

 とりあえず、何なのか分からないことは、やってみようと思うのがその女の子。さっそく書かれてあることを実行してみました。

 女の子は本に書かれてある通り、見よう見まねで書いた魔方陣に冷凍肉を供物に捧げ、ダンボールで作ったお手製の祭壇の上で特殊な口上を述べました。

 すると女の子の目の前は急に真っ暗になり、暫らくして闇が晴れると目の前には女の子と同い年ぐらいに見える別の女の子が居ました。

 女の子が突然現れた女の子に聞きました。

「あなたは誰?」

 尋ねられた女の子は答えました。

「私は小悪魔。対価さえくれれば、私を呼び出したあなたの願いを何でも叶えてあげるよ」

 女の子の見つけた本は悪魔を召喚する儀式の書かれた本なのでした。

「そんなのないから別にいい」

「どうして? 叶えて欲しい願いがあるから私を呼んだんじゃないの」

 小悪魔は首を傾げました。悪魔の女の子からすれば、目の前にいる女の子からは沢山のしたいという欲望が見えていたからです。

「うーん。確かに叶えたいことは一杯あるけど……」

「対価払うのが嫌? だったら、最初の一つは無料サービスしますよオキャクサーン」

「だけども……。うーん」

 小悪魔の言葉に引かれながらも、女の子は渋ってなかなか返事をしてくれません。せめて嫌なら嫌と返して欲しいものです。

 女の子が小悪魔の囁きに必死に抵抗しているようにもとれます。

 ですが真相は。

「うーん、人の夢って書いて儚いしなー。こういうのとかって叶えた後より見ている時のほうが大体はいいものだし……」

 好奇心旺盛な割に、時にリアリストな女の子でした。

「あのー、用事が無いならもう帰ってもいい? この世界にいると無駄にお腹空くんだけど」

 呼び出されたものの、何もすることがなさそうなので小悪魔は帰りたくなってきました。

「あっ、一つだけあった。ねぇ、友達になってよ。友達に悪魔がいるって面白そうだもの」

「友達? それが願い。だったらなんかください」

「お友達になるのにそれって必要なの?」

 女の子は首を傾げます。

 女の子と友達になった子は、今まで友達になるのに何かを欲しがるなんてことはしませんでした。

 お友達になるのに物を欲しがるのは予想外でした。

「コネクションってのは、そりゃあもう、大変に価値のあるものだからね。私みたいな超絶可愛い美少女小悪魔なら、当然値は張りますよ」

 小悪魔は過大な自己評価とシビアな考えを持っていました。

 小さな女の子はコネの意味をしりません。でも、小悪魔の物言いからそれが大事なものであることは、なんとなく分かりました。

 女の子は小悪魔と友達になってみたかったので

「じゃあ、この指輪をあげる。ここの宝石がとってもキラキラしていてお気に入りなんだから」

 女の子は自分の指にはめていた指輪を小悪魔に渡しました。

「この指輪についてんのただのガラス玉じゃなですかー。こんなちんけなものじゃダメダメですよ」

 指輪に嵌っていものは宝石などではなく、宝石のようなカットがなされたただのガラス玉でした。

 少しは高いのかもしれませんが、本当に子供だましの為の代物なのでしょう。

 小悪魔は安物の指輪にがっかりです。

「でも、綺麗でしょ?」

「まあ、たしかにそうだけど……」

 施されたカットのお陰かガラスは煌びやかで、光のあてる角度を工夫すると中に虹色が詰まっているかのようになります。

 いかんせんガラスはガラス、小悪魔には宝石には遠く及ばない安っぽい光に思えてしまうのでした。

「ねぇ、これじゃダメなの?」

 小悪魔に自分のお気に入りの指輪は不満の様で、寂しい気持ちになりました。

 女の子にとってその指輪は、たとえ本物の宝石が使われていなくても、宝石に負けない輝きをはなつ綺麗な物だったのです。

「まあいいか。確かにガラスのくせにこの指輪は綺麗だし、あなたにとってこれは大事なものなのは確かみたいね。いいよ、友達になったげる。

 私はメフィスト。フィスって呼んで」

「ありがとうフィス。私のの名前は千年院小夜。サヨでいいよ。それじゃあ、これからはよろしくね」

 こうして、女の子と小悪魔の二人は友達になりました。

 確かにフィスは信用なりません。しかし、よく物語で悪魔の叶える願いが人を裏切ることはありますが、悪魔が人の願いを裏切ったこともありません。

 女の子が少女になり、女性になり、恋をして、愛を知って、結婚した歳になってもずっと二人の仲は続きました。

 ある日、フィスはサヨに尋ねました。

「あんたは、おっきくなっても相も変わらず身体は虚弱なまんまデスね。どうデス? 私に命を売って契約しくれません? 逆に寿命が延びるかもしれません。

 なあに、大した対価は取りません。特別出血大サービスでほんの三十秒程にまけてあげますから」

 フィスは、この日に体調を大きく崩したサヨにニマニマとした笑いを差し向けます。

「やーだよ」

 しかし、サヨはフィスの誘いを断ります。そのことにフィスは渋い顔を見せました。

「どーして!? イケメンの旦那さん、もうすぐお母さんになる、それなのに何時まで立ってもこんなベッドの上ばかりにいる生活してたら駄目でしょうが」

 フィスの気持ちは、サヨにきちんと届きます。

「こんなのへーきへーき。気を強く持ってれば、いつもみたいに明日にはケロッと治ってるって。

 どうせ、あなたの事だから今がセールスチャンスとかなんちゃら思っているでしょ、でも悪魔に魂なんか売っちゃったら死んだ時に天国へいけないじゃない」

「クハハハ、やっぱバレちゃいますか。あんたは隙がありませんねえ、どうやったら上手くいくのやら」

 互いの心の内をよく知る二人は、盛大に笑い合いました。二人の仲の前では互いの腹の探り合いは楽しいコミニュケーションなのでした。

 その翌日のことです。サヨが交通事故で旦那さんを亡くしたのは。

 愛する人を亡くした心労で気を強く保てなくなったサヨは、たちまちのうちに、ただでさえ悪かった体調をさらに悪くしてしまいました。

 その後、残ったお腹の子供の為にと奮起しますが、少し持ち直した程度で、そこから中々回復できません。

 お腹に居る子供の事も考えて使える薬は限られ、細々とした延命治療が行われる毎日でした。

「ねえ、ぶっちゃけ、この子と私どうなの?」

 病院のベッドの上で、点滴を打たれながらサヨはフィスに尋ねます。

「産むのなら母子ともにかなり危険なのは間違いないデス。つうか、普通に考えてどちらも死にます」

 フィスはハッキリと答えました。

「だったら、助かるにはどうすればいいか教えてくれない?」

「そんなの腹のなかのガキが死んじゃえば少しは……」

 お腹の中の赤ん坊が死んでしまえば、子供へやっている体力が母親へと戻り助かる可能性がある。

 赤ん坊は降ろすには無理なほど大きくなってしまっているが、フィスにはそうすることができた。

 赤ん坊の命を生贄に捧げて、自由に願い事を叶えてくれればいいのだ。

 けれどもサヨは首を横に振る。

「ううん、私じゃなくてお腹にいる赤ちゃんの方」

 フィスはやっぱりと大きなため息をついて俯いた。

「分かってた、分かってましともそんなこと。私がいつまであの日の契約を馬鹿正直に守ってきたと思っているんデスか。私はそんな見知らぬガキより、あんたに生きていて欲しいんデスよ」

 ギブアンドテイクで結んだ友人関係であったものの、フィスにとってはかけがいのない仲でした。

「それで、どうなの? できるの?」

 サヨは、『自分の事はいいから、子供の事だけ教えて』と全力で目が語る

「……命には命の対価が必要です。だからあんたの残り少ない寿命全部を貰います」

「そっか――じゃあ、それで」

 サヨは躊躇わずに悪魔の契約を受け入れた。

「もちょっとぐらい躊躇ってくださいよ。他にないですか? 簡単なことぐらいまでなら聞き入れますよ」

「だったら図々しいけど、この子の事をあなたによろしく頼んでいい? せめて大人になるまでお願いしたいんだけど」

「本当になんて図々しいデスかね……、でもいいでしょう。リップサービスにしきます。けどいいですか、私はあんたには契約で友達として接してたけど、その子には悪魔的に容赦しませんよ。それでもいいんデスね」

「うん、わかった。図々しいことは分かってたからそれでいいよ」

「バカ。さっさと逝っちまえ!」

 やがて悲しい日はやって来てサヨを連れて行き、悲しみの去った後にはサヨの産んだ男の子が残された。


  *  *  *  *  *


 話を終えたフィスはそっと目を閉じ、昔を慈しむようにしている。

 フィスの話を聞かされたつつじは、メイドとして雇われるときに聞かされた千年院家の家事情について、少し物思いにふけっていた。

(もしかしてさっきの実話? 何か、目の前の奴と似合わない部分が多々あった気がするけど。けど奥方様関係の話は私も聞いたことあるし)

 坊っちゃんの母親である、千年院小夜。

 生まれつき身体が弱かったこと、交通事故で若いうちに夫を喪ったこと、坊ちゃんを生んだ直後に亡くなったこと。

 それらの事は古参の使用人の先輩たちから話に聞いたことがある。

 フィスに踏み入りたくないと思っているつつじも、今ばかりは感傷に浸るフィスと一緒に居たいと、身を寄せようとした。

「フィス……」

 その直後。

「なーんてね。どうデス? 我ながらなかなか泣ける話を考え着いたと思うんデスが。ねぇ、騙されて今どんな気分デースか」

『略してNDK、NDK、NDK!』と言いながらつつじの周りをちょこまかと回って煽る、煽る!

「小悪魔の言葉を信じようとした私が馬鹿だったよ。あんたって奴は、いつでも人様をからかって〜!」

 騙された怒りにつつじは、フィスに先ほどまで抱いていた感情は全て吹き飛び、開いた掌は指に力が入って固い握りを形成していく。

「おお怖い怖い。爆発しないうちにとっととトンズラするのデス」

 瞬間移動を行ってフィスが自室へと退散。

 直後、千年院家の屋敷内で独りのメイドの怒りが爆発した。


「黒執事を読むのもいいデスけどその前にこれを見ときますか。不思議と何度みても飽きないんデスよね」

 フィスは目の前で自分の右手を握って開く。すると、鍵穴の付いた黒い光沢を放つ小箱が現れた。そして次に小箱を取り出した時と同様なことを左手で行うと、今度は小箱の鍵穴にぴったりの大きさの鍵が現れる。

 取り出した鍵を小箱の鍵穴に差し込み、鍵の開く出応えを味わうかのようにゆっくりと回す。やがてカチリと音がして小箱は開き、中身が露わとなる。

 フィスは取り出したそのガラスの指輪を、窓から入る光を当てる角度を変えながらゆっくりと回して眺め始める。

 途中、指輪のガラスの中が虹色にキラリと光った。

彼女は小悪魔ですから、ある程度の嘘だって話に入ってます。彼女の話はどこまでが本当だったのか、それは読んだあなたにお任せします。

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