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sheath‐鞘姫‐  作者: 肇川 七二三
萌芽(出会い編)
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13/225

どういうこと?

「何、私山で暮らすの!?なんで?!」

「必要だからだね」

「伯父さんに何も言ってないし暮らせって…」

私は抵抗するためにあらゆる理由を並べ立てた。

「君の伯父には私から伝えるし、ドラゴニスタの決定だったら彼も同意するしかない。暮らしに不便はかけないし不満があれば言づけてくれてかまわないよ?」

「学校は?家は?」

「ん?学校?転校届か退学届を出せば問題ないだろう?あー、君の実家は責任を持って管理する、心配は無用だ」


「かしましい娘だ…」

「はあっ?!」

かすかな舌打ちと共に吐き出されたレイリエスとかいうえらっそうな男に敵意丸出しでかみついた。

「もっかい同じ言葉言ってみなさいよ!」

「まあまあ」


聞きたいことが山ほどある、問い詰める彼女の言葉をギアはのらりくらりと交わしていた。

その手さばきは正確で至極まっとうトリシアは最終的に黙るしかない。

この……っ古だぬき!


理不尽な第三者たちの決定に怒りをあらわにするトリシアにギアはとっておきの言葉を耳打ちをする。


「ねえ、忘れてるようだけど君ここに何しに来たんだっけ?シャルロッテの赤ちゃんのためでしょ」

頭に上っていた血が一気に引く。絶句である。

「…まさか、全部そのために…山にこもれっていうの?」


彼は黙ってウィンクでこたえた。

普通の女の子なら、この仕草で頬を赤く染めて恋に落っこちてしまうのが常ながら、彼女には全く通用しないのが面白くなかった。まあ、やりがいはある。

別に、トリシアに恋してほしいと思ってるわけではないけれど。

耳打ちはレイには聞こえてないようで、親しげな二人の様子に苛立っていた。


彼から見ると、彼女は何人もの人間にに守られた特別な存在であるということであるようなことからして気に入らない。

360度どこから見ても、どこにでもいるような小娘である。


腕を組み苛立たしげに指で小刻みにリズムを刻む。

「お話は終わったか?すぐにでもこちらはカリキュラムに取り組みたいのだが」

「ああ、その前にね私たち外せない用事があるんだ。トリシアの教育担当だっていうし彼女の事もある程度知っておいた方がいいでしょう。よかったら来る?」


トリシアの意見は丸無視である。

が、あえて何も言わなかった。ギアはあれで策士だと思い知ったのでこちらに利点がある事なのだろう、と信用してみることにした。

…たぶん大丈夫、だよね?

黙っている事をOKサインとして判断し、ギアは先頭を切って日なたに出た。


「何してんの、早くいこうよ~!」


陽気な彼の様子にレイは調子が狂いっぱなしだった。

トリシアはレイに目もくれずギアのあるいて行く方についていった。


彼はため息をついて仕方なく、彼女の後を追った。


さて、行く手に大きな口を開けるのは洞窟の入り口である。


「…らしいって言えばらしいけど…雰囲気でてるね…」


入ることに尻込みするのはトリシアだった。


「何、怖いの?こんな洞窟が?」

馬鹿にするのはギアで、でもそんなことに苛立っていられるような余裕がなかった。

トリシアは本当に怖かった。足が震えて膝が笑って言うことを聞かない。足を踏み出したくてもできない。

生まれて初めて、恐怖で体が震えることを知った。

「ちょ、と……たし、いきたくな、ぃっ」


その様子が冗談でない事が分かったギアは本格的になだめる口調になった。


「この洞窟の、どこら辺が怖い?」

どこら辺と言われても、あの辺、この辺とはいえない。なだめられると恐怖を律する心に甘えがでて、涙がぶわりと湧きでた。


そんなやり取りに後ろでひとり、男は苛立っていた。

外せない用事があるというからここまで来たというのに、遅々として進まない、いったい何の意味があるのかも分からない。

レイには小娘のわがままにしか見えなかった。


「そろそろ、覚悟をきめてトリシア」

「む、む…りだよ、ぉっ」

嗚咽混じりのか細い声に、ギアは何がどうなっているのか分からずに混乱を極める。

彼にとってはただの空っぽの〝巣〟でしかなく、主のいない巣はただの穴蔵だ。




だんまりの状態で固まったトリシアの手をレイが構わず引っ張った。

トリシアは目を剥いて見上げた、何をするつもりか分かっていたからとっさに抵抗の言葉も出ない。


「行くぞ」

「や、めっ」

トリシアが自分でも驚くような暴力的な感情で掴まれた手を振り払う。

振り払ったつもりなのに、その腕は少し揺れるだけでびくともせずにそこにあった。何でなのか分からなかった。こんな乱暴なことを、男の人にされたことなんてなかったから。

その気になれば、自分は男の思うままになるしかないのだと、その程度の力しかないのだと分かると絶望にも似た心地がする。

自分よりずっと背が高く、筋肉もついて体格がいいレイには自分がどうあがいてもかなわない。

こわい、あの闇の中に連れていかれるのが、怖くて怖くてたまらない。


でも、こわいのは、このひとにつれてかれること?それともあのまっくらなやみのなかにいくこと?

分からなかった直後にレイの腕をギアがふり払って、突き飛ばした。

「レイ、お前それ女の子の扱い方じゃねえだろ!」


感じたままの恐怖が瞳に反映される。

洞窟に対する恐怖がレイに対する恐怖にすり替わり、彼女の心の中はどうにもならないほど怖くてたまらなかった。

「トリシア、離れていなさい」

「……っ」

彼女を守り阻むようにギアが立ちはだかる。


まっすぐ見つめられて彼女の自分を見降ろす目を見て初めて、凝り固まった嫉妬のために、私情という自分勝手な都合のために、自分が何をしたのかを自覚して青ざめて、恥ずかしさで身が焼けた。

「………すまな、」

彼が謝るより早く彼女は洞窟の中へ駆け出して、


「あの子はついこの間お父さんが死んで、とっくに母さんもいなくて、ひとりぼっちで悲しいのに、おれたちの御都合のために動いてくれてんだ。あんたも大体のことは知ってんだろ?…18歳の小娘だったらまだまだ親を頼って甘えたい年頃だって分かるよな。大人気ねえ。みっともないと思って今更恥じ入ったって遅ぇよ。大人だって自覚があんなら…ちっとは想像して歩み寄れやこのクソ野郎!」


めったに使わない汚い言葉で罵って、ギアは洞窟に入ったトリシアを追いかけた。





一方、

「…信じらんない、信じらんない、信っじらんない!何様のつもりよ!教育担当とかいうこと鼻にかけてんじゃないの?!馬鹿じゃないの?!頭すっからかんなんじゃないの?!あーーーーーっ腹立つ!痛ったいわああ!!!」


怒りの絶叫が洞窟に反響してわんわんなっている。怒鳴ってでもないと恐怖で頭がどうにかなりそうだ。

そのおかげか、ひとりぼっちの怖さも洞窟の嫌な雰囲気も吹き飛んだ。


「くっそ、あいつのこと絶対、絶対、ぜっっったい、先生だなんて認めないわ!」


思ったよりも元気である。

しかし、赤ちゃんがどこにいるのか全く知らない彼女はひとりで洞窟の中を歩いても意味がない事に気がついた。

仕方なく立ち止まると、膝が笑っていた。

…ここが巣、だからだよねきっと、ロッテの巣で…なんで他の二人は分からないのかが不思議だったけど…

自分はホラー映画を見てもお化け屋敷に入ってもここまで恐怖に身がすくむ事は無かった。

ましてただ暗いだけの洞窟なんて…。


突然背後を以前経験した事のある、肌が粟立つような恐怖が襲った。

目をつむると、広い洞窟が窮屈に感じるほどの威圧感。

あて勘でトリシアはきつく喰いしばった歯をこじあけ、唇を動かした。


「…ギア、黙って後ろに立たないでちょうだいグーで殴るわよ」


そう言って振り向くと思った通りギアが立っていた。


「ゴルゴ13(ゴルゴサーティン)みたいじゃん。…よくわかったね?」


悶々としていた、彼の正体を今確信した。

目はごまかせても、気配はごまかせない。

どのみち、近いうちにはっきりさせておきたかった。


「ギア、あなたうまく化けてるけど……ドラゴンでしょう」


疑問文でない口調に彼は少し驚いた。


「…よくわかったね」


彼はトリシアのとなりに立って、改めて賞賛した。


「私の正体を見破ったのはリタに続いて二人目だよ。名誉な数字だね」


コツコツと、洞窟に足音が反響する。


「他のペンペン草とはやっぱり違う。シャルロッテも才能それを見抜いていたわけだ…ちなみに何で?」

「魔法を使えるのって普通なのかしらって思ったのが最初」

「リップサービスしすぎたかな、ドラゴニスタの特権とかってことにはなんない?」

二股に分かれた行き止まりで彼はこっちと手招いた。

そしていくらもかからないうちに開けた場所に出た。


「君が怖いって思ったのは、洞窟だからじゃない,龍の巣だからだ」


天井は見上げるほど高く、ビル三階分くらい吹き抜けになっていた。

鋭利な物で引っ掻いたような…巨大な爪痕がところどころに残っている。


その広間の真ん中に白くて丸いものがあった。


近づくようにギアが言う。

白いそれは、自分がやっと抱えられるかられないかくらいの大きさで、この世のものとは思えないほど美しかった。


大理石のように白く、研磨された宝石のように洗練されて、真珠のようになめらかだった。


思わず触れる。

驚きに目を見張った。

「あったかい…」

一度触れると愛しさがあふれた。

何だろうこれ。


「シャルロッテの赤ちゃん」

ギアが言った。


が聞き返した。

「へ?」

「それが、シャルロッテの赤ちゃんだよ」

まさか、赤ちゃんって…。

「タマゴ、なの?」

「タマゴだねぇ、生身だと思った?まあその辺は…勉強していこうね」



ギアが時代錯誤な動作で…―手のひらを翻し肩膝をつき―…うやうやしく頭を垂れた。

その行為が服従を意味するとは知る由もなく…呆けたように見惚れていた。


「トリシア・F・ルルー様、我々ドラゴニスタはこの前代未聞の事態に直面し…協議に協議を重ね最善の策を導き出しました」


その結論は予想しがたいものだった。




「貴女様に、この御子の母親になって戴きたく存じ馳せ参じました」


なんかキャラクターが増えて筆者の頭の中軽くパニック

どうしよう、どうする事も出来ない


まあ、衝撃の第二章っていうことでひとつよろしくお願いします!

 

レイがどういう人物なのかよくわからない←

でもなんかお気に入り小説に追加してくださった方が増えてとっても嬉しいです!

どうもありがとうございます!

励みます!

 

ギアはトリシアの騎士ナイトになってほしいんだよね

で、レイはどうすんのって感じだけど

小姑にはさせたくない:(笑)

 

では読んでくださりありがとうございました!

次話も乞うご期待☆

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