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第5話

Q.ちょっち文量が少なくなってきたが、大丈夫か?




「お、おおっ!」



 現在、地上から学校の三階ぐらいの高さにいる。勿論、足場はなしだ。正直、なんでこんな所にいるのかわからない。


いや、分かってはいるけど信じられない。だって、あの一瞬で地上からここまで跳んだんだぜ? そんなのありえないだろ。


そして下の方に目を向けると、数本の木があのカマイタチで切り倒されたところだった。当たってたら確実にお陀仏だったな、あれは。


しかし、今はそれ以上に問題がある。その問題は、この後のことだ。

 

今は一瞬の間の滞空状態だが、翼のある鳥のようにそれを維持することが出来るならともかく、それが出来ない俺は当然――



「のっああああああああああああ!?」



 地上まで一直線だ。


 ドズンッ! と普段聞かないような音を立てて、俺は着地した。



「……あ、あれ?」



 なんともない。着地した時のしゃがんだ状態で、地面を叩く。おお、本物の大地だ。


本当は相当の痛みを覚悟してたけど、綺麗に着地できたらしく痛みはない。って、いやいやいや、あの高さから落ちて痛みもなんもないとかおかしいから!?

 

思わず辺りをキョロキョロしてしまう。そしてあのひょろすけと目が合ってしまった。



「あ?」


「は?」



 お互いに間抜けな声を出して、固る。



「お、お前……」



 先に口を開いたのはひょろすけだった。その姿は、俺がいきなりあんなに跳んだせいか、動揺してるみたいだ。どっからどう見ても隙だらけ。やるなら今のうちに、やるっきゃない!


 足に“力”を込め、大地を蹴る! それだけで、次の瞬間には十数メートル程は距離のあったひょろすけが、目の前にいた。



「なにっ!?」



 ひょろすけが、目前に迫った俺を見て驚きの声を上げているがもう遅い。昨日と今日追いかけられた分の一撃を、握り締めた拳を振り絞って――



「ぬおらぁっ!!」



 思いっきり顔面をぶん殴った!



「うがぁ!?」 



 ぶん殴った勢いでひょろすけは、二三度バウンドしながら吹っ飛んだ。



「うおっし!」



 昨日と今日追い掛け回された分を返して、ガッツポーズをとる。思った以上に、溜まっていたらしい。今ではちょっとやり足りない気もするが、気分も清清しい!


 それにしても、だ。



「これが、”異能”ってやつか」



まさに体の奥底から力が漲ってくるようだ。

 

恐ろしくも感じるし、同時に喜びも感じる。久賀美のヤローに貰ったてのが気に入らないけど。



「能力は、身体能力の向上か?」



 建物の三階だから、六七メートルぐらい跳び上がったことになる。いや、十メートル以上あった距離を一瞬で詰めたこと(限界を超えたら肉体が持たないから)や、あの高さから落ちても大丈夫だったぐらい頑丈になってたから、能力の向上じゃなくて身体強化の類かもしれない。


 うん、いいじゃないか。小難しいこと考えなければならないようなやつより、単純明快で分かりやすい。



「……がっ」


「ん?」


「クソガァァァァァァァァァッ!!」



 俺が自分の”異能”のことを考えていると、ひょろすけが叫びながら起き上った。



「お前なんかにっ! お前なんかにぃっ!!」


「なっ!?」



 ひょろすけの手刀に今まで感じたものとは比較にならないほどの”力”が集まっているのがわかる。


 これは、まずい! どれくらいな威力かわからないけど、この公園一帯が吹っ飛んでもおかしくなさそうな、そんなイメージを抱かせるようなモノには違いない!



「お前っ、それはまずいだろ!?」



 下手したら俺らだけでなくて、周囲の被害も知れたもんじゃない。



「はっ、知ったことかよ! だったら、お前が止めてみろやぁ!!」


「馬鹿野郎がっ!」



 もう一度ぶん殴ろうと足に”力”を込めて、駆け出そうとしたときだった。



「あ、あれ?」



 いきなり全身の力が抜け、倒れこんでしまった。



「なんで……こんなときに!」



 腕を持ち上げようとしても、ピクリとも動かない。そして感じるのはすさまじい疲労感。俺は、目の前で”力”を溜めているひょろすけを睨むことしかできなかった。



「ひゃ、ひゃはははははははははは! こんなときにガス欠か!! こりゃ傑作だなぁっ!!」


「うっせぇ、よ!」



 アイツがガス欠といったとおり、”異能”を使うために、何らかのエネルギーを消費しているんだろう。


 今更だが、昨日の戦闘でひょろすけはだいぶ体力を消耗したから当分動けない、という話を小野川としたのを思い出した。まさに今の俺の状態がそれか。それよりなんで、昨日へばってたはずのこいつがこんなに”力”を溜めるくらいの余裕があるのか、気になるところではある。



「最後のチャンスだ。あの女どもの居場所を教えろ!」



 はっ、チャンスもなにも、どっちにしてもやる気だろうが。それに――



「誰がテメェみたいなやつに媚びるかよ、クソ野郎」



 そう吐き捨てるように答えると、怒りからかひょろすけの目が大きく見開かれた後、ニィっと嫌な笑みを浮かべた。



「そうかよ。じゃあなっ、クソ野郎っ!」



 そして、巨大な力を纏ったひょろすけの腕が振り下ろされた。


 目の前に迫る、圧倒的に巨大な力はまさに最大出力。周囲の木々も巻き込んで俺へと向かってくる。


 必死に逃げようと、体を動かそうとしてみるが、まともに動くところがない。これはもう、どうしようにもなさそうだ。



「調子に乗ってなかったら……」



 もっと動けたかもしれない。せめて気絶ぐらいしたかどうかだけでも、確認しておけばこんなことにはならなかったかもしれない。


 でも全ては後の祭り。


 後数秒もしないうちに、あの巨大なカマイタチが俺をミンチに変えるだろう。



「チクショウが……」


 悔しさで涙が出そうになるが、せめて最後はと堪えて見せる。そうだ、どうせ最後の意地だっ!


ひょろすけなんかに弱みは見せたくない。そう思いやつのにやけ顔を最後までにらみ続けていると、



「――――――――ッ!!」



 誰かの叫び声が聞こえた。



A.大丈夫だ、問題ない

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