閑話
生存報告も兼ねて。
短いよ! よ!
「もどれ、神崎っ!」
「隙、あり」
「なにぃっ!?」
悠の援護を受けて突撃していった統夜に巨大な玉が迫っていた。それに体制を崩していて、避けることもできないのは明らかだ。
(今あの玉を破裂させれば、神崎が危ない。だがこのまま放っておいても……)
どうすれば止められるか、悠は己が出来ることをシミュレートしていく。
射線上には統夜がいる。
ならば炎を迂回させては?
否、速度が遅くなって時間が取られ過ぎてしまう。
なにより、あの大きさのものをあの距離で破裂させようものなら、どれほどの威力の衝撃になって統夜に襲いかかるのかわかったものではない。
時間が非常にゆっくり流れているように感じる中、一つ一つ可能性を検証していく。
しかし無常なことに、良案が出ることもない。
(アレを使えば、だが……)
そうして最後に辿り着いたのは、悠にとっては賭けのようなものであった。
(いや、危険すぎるっ)
表面上は冷静に毅然とした態度を見せているが、本質的に臆病な気質のある悠は、失敗したら、という結果が容易に想像できて、あと一歩が踏み出せないでいた。
しかし、悩んでいる間も時間は刻一刻と進んでいく。
(失敗すれば、神崎が……)
ここで失敗すれば、犠牲になるのは統夜になる。それも相手の手ではなく、己の手で。
ふと、統夜が両腕を頭の前で交差させて防御の姿勢を取ったのが見えた。
(強化したとしても、いくらなんでも!)
あの巨大さだ、威力も今までの比ではないだろう。
(どうするっ、どうするっ、どうする!?)
もうこれ以上は時間もないだろう。思考が駆け回り、逆に考えがまとまらなくなっていく。
『小野川一人で駄目でも、俺と宮野が協力したら何とかなるかもしれないだろ?』
公園で統夜に言われた事を思い出した。
危険だから手を出すな、とアイギスから言われた時、自分でもできる、と思って挑んだエリア担当だったが、結果はお世辞にもいいとは思えずと落ち込んでいた。
そんなときに不器用ながらも励ましてくれた統夜が、己の判断ミスで危険な目に逢っているのだ。
『あなたの炎は、焼つくすためのものじゃない。守るための、暖かい炎よ』
頭を過った師|《母》の言葉。
(私はっ!)
引いた右手に纏うのは、渦巻く炎。
狙うは仲間に迫る危機のみ。
軽く息を吐く。今までにないほどの力を感じる右手を引き絞り、そして包み込む炎をイメージして、
「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
烈火のごとき声を上げて突き出した。
ということで閑話でした。
お気に入り登録・読んでくれていた方々すまない。
期末で作品制作に追われ、謎のスランプというダブルパンチで遅くなった上に文字数が少なくなっちった テヘペロ
これからは容量増やして一週間間隔になる……といいなぁ
そうなるように頑張ります