プロローグ
この小説は、過去に書いていた「魔法が使えなくとも」を設定の部分から見直し、作り直したものです。
更に、2011年4月15日より書き直し始めました。
これこそ三度目の正直……! にしたい
(な、なんで、小野川と宮野が……!?)
窓から月明かりが僅かに差す、薄暗いショッピングモールの中にある広場。この広場のシンボルなのだろう、四メートルほどの高さ時計塔の後ろに隠れながら、統夜は目の前で起こっている光景に、呆然と立ち竦んでしまった。
視線の先にあるのは、気さくなクラスメイトの少女――小野川悠。
その一歩後ろに、同じくいつもほんわかしているクラスメイトの少女――宮野小春が普段見せることのない厳しい目をしていた。
その二人と対峙とするのは、統夜にひょろすけと命名された、あまり手入れされていないだろうボサボサの髪に、細身で目が血走っている隣町の高校の制服を着た少年。
互いの距離が数メートルあるそれが喧嘩かなにかなら、荒事に多少の自信のある統夜にも止めに入ることが出来たかもしれない。
しかし目の前の異様な雰囲気は、統夜にそんな考えを浮かばせないほどに現実離れした感覚を与えていた。
そして、僅かな睨み合いの後、先に動いたのは悠からだった。
「いい加減に諦めたらどうだいっ、と」
やれやれ、といった風に悠が溜息をつき、手を伸ばして少年の方に向ける。
(これはっ!?)
その瞬間、なにか得体の知れないチカラが手の平に集められていくのが感じられた。
一瞬の間に集束したソレは、一条の炎の矢となって撃ち出される。
「がぁっ!?」
少年が咄嗟に身を翻し、髪の先端を焦がされながらも回避した。いや、回避させてもらった、と言った方が正しいかもしれない。そんな事を思わせるほど炎の矢は、標的である少年に、当たるか当たらないか絶妙な射線をしていた。
「このぉっ」
そんなことを当の本人は気付いていないだろう。怒り心頭の少年はお返しとばかりに手刀の形をした右手を振り上げ――
「クソがぁっ!!」
暴力的な感情を振り撒きながら勢い良く振り下ろした。
なにもない空間に振り下ろされた手刀の軌跡から、周りの空気を引き裂きながら不可視の刃――カマイタチが悠たちに向って放たれた。
「悠ちゃんっ!」
これまで後ろに控えていた小春が呼びかけると、任せたとばかりに今度は悠が下がる。
「"守って"!」
小春はまるで懇願するような声色で、目の前の空間に何か押さえつけるかのように腕を伸ばす。その自身に迫るカマイタチを見据えた目からは、負けるもんかという気迫と同時に、恐怖のようなモノも感じられる。
果たして、小春に迫ったカマイタチは、直前で障害物とぶつかったかの様な激しい音を立てて消滅した。
(こっちは不可視の……障壁か?)
そこから感じられたモノは、城壁をイメージさせる不可視の強固な守りだった。
彼らの間で行われていたやり取りは、統夜の想像を超えたものだった。祖父の元で少しは鍛えていたが、その程度では到底敵いそうにないものだった、それでも冷静に現状を分析しているのは、祖父の教えと、経験の賜物だろう。
それからの展開されたのは一方的なものだった。
当てる気がないらしい悠の炎の矢が撃ち出され、少年がカウンター気味にカマイタチを放っても小春がソレを防ぐ。
少年の攻撃は小春の障壁を抜くことは敵わず、その後にやってくる悠の攻撃を防ぐ手段を持たない。これらのやり取りの中、何らかのエネルギーを消費しているのは、回避行動以外殆ど動いていない少年が、荒い息をしていることから分かる。
この状態で少年が勝機を得るには、鉄壁を誇る小春がエネルギー切れを起こすまで攻撃し続けるしかない。しかし、迫り来る炎の矢を避け、反撃している少年にはもうそれほど余裕があるようには見えない。このままでは少年がエネルギー切れを起こすのに、秒読みも間近かといったところだった。
「クソォッ!」
疲労して狙いが甘くなったのか、少年の放ったカマイタチが見当違いな方向に外れ、統夜が隠れていた小型の時計塔に直撃した。
聞こえてくるのは時計塔の断末魔か、斬撃が当たった部分から、音を立てて統夜の方に時計塔の上部が倒れてきた。
「えっ」
上から降ってくる時計塔の頭は、スーパーマンでもない極々一般人な統夜を簡単に押しつぶすだろう。
(何でこんなことに……)
頭上から迫る死を直前に、走馬灯のように今日の出来事が思い出された。
今回は、前作のと違い比較的まともな感じで書いていきたいと思います。
行間に空白を入れていないのはどこかの賞とかに応募する時の書き方を練習するためのもので、読みにくいなどの指摘があれば直そうと思います。まあ、大した文章力じゃないけどな!
しかし、何事にもチャレンジという精神を持っていきたいでゲス。
目標は更新は週一以内の三月中の完成。から五月に、更に6月中に変わりました(あくまで目標です)
誤字脱字などありましたらご報告をお願いします。