第15話_ウェイストタイムウィズミー!
数日振りで……いや、投稿するときは書き貯めして毎日投稿してるでしょうから、数日振りと言うのは適切じゃないですね。一日ぶりです、今日は前回から数日経った水曜のテスト最終日、早くホームルームの終わったクラスで、生徒たちが雑談に興じています。我が孫である幸樹も例にもれず、友人の安達君とお話をしているようです。
「「告白」をします」
「だから気に入った、どうした急に」
某奇妙な漫画のネタに乗った安達君が孫の唐突な発言に困惑します、そりゃいきなりこんなことを言われたら当然です、その割にノータイムで乗ってましたけど。
「なおーみに、告白しようと思ってる」
「あーなるほど、そういうことか。あとそのネタは辞めときな? シンプルに死亡フラグだし、それ以前に人生にメインヒロインがいるタイプの人間が言っていいネタじゃない」
「あっはい、失礼しました。それはそれとして直美に告白するんだよ、なんか経験者としてアドバイスない?」
「いやあ特には……」
そうそう安達君は彼女います、ただ別に孫みたいなギャルゲー状態ではなく、中三からの知り合いに告ってくっついた感じなんだそうな。幸樹の主な友達は変なノリの松本君、爽やか系の中村君、そして今話している変なノリ二号の安達君、この三人です、大体いつもこのメンバーで話している感じになりますね。あと松本君と中村君に彼女は居ません、松本君はオモシロ属性で色気が無いから、中村君は彼女はできるがすぐ別れるとか、中村君は女運が無いみたいで、チャラそうな見た目に近づいたミーハーが派手さの無い中身に失望して去っていくらしいです、本当にかわいそう。松本君みたいな手合いは大抵見る目のある女に捕まりますから、強く生きてほしいです、中村君は見た目と中身が違い過ぎるので、自分からアタックして良い子を落とすしかないですね、頑張れ少年。
「えぇ……なんでぇ……」
「いやだって付き合い長いんだろ? 正直そこまで仲良かったら小細工しても何も変わらないと思う」
「そんなもんかな?」
「そんなもんだ、そこまで日頃の行い積み重ねてたら誰だってそれで判断する、告ると決めたんなら勝算があるんだろ? お前がそう判断したんだから上手くいく」
「言われてみれば確かに、日頃の行いは大事だな。わかった、俺、頑張るよ」
「そうそう頑張れ、結局こういうのは度胸だ」
「了解、聞いてくれてありがとな」
丁度話し終わったタイミングで教室の封鎖が解放され、「頑張れよー」なんて言いながら安達君が去っていきました、孫の背中を押してくれた安達君に感謝、彼女さんと上手く行くよう祈ってますよ、私幽霊だから祈られる側ですけど。
そうして校舎を出た幸樹が、下駄箱の前で直美ちゃんを待っています。太陽の昇り切っていない明るい下駄箱ではテストから解放された学生たちがわいわいがやがやと騒いでいて、まるでちょっとしたお祭りのような賑やかさです。駅へ走る者や部活を嘆く者、話し込む者に人を待つ者、多くの人でごった返した下駄箱周りでは、知り合いがいたとしても容易には気づけないでしょう。それはスマホを弄って人を待つ幸樹にも当てはまったようで、彼は真横に迫る直美ちゃんに未だ気づかないままでした。
「…………わっ!」
「っ……!?」
「へへっ、ビックリした?」
「割とビックリした、心臓3センチくらい跳ねた」
「いやーあんまりにも気づかないから出来心でつい、そんなに驚かせちゃったんだ、ごめんね?」
「大丈夫大丈夫、心臓飛び上がるくらい誤差だから、口から飛び出してからが本番だから」
「ギャグマンガじゃん、目玉も飛び出るヤツ」
「ゲェー!? とか言ってな、んじゃ帰ろうぜ」
「帰ろ~」
いつものように中身の少ない会話をした二人が、ギリギリ手が触れないくらいの距離を開けて歩き始めます。広いハズの道は生徒でごった返していて、二人もその流れに背中を押され、せかせかと早足で歩くハメになっています。ところで最近のギャグマンガってどうなってるんですかね? 二人の話していた飛び出す系の表現が鉄板にして王道であることに疑いようはありませんが、時代とは移ろう物です、江戸時代の人権絵柄だった浮世絵の画風ですら今では廃れているのですから、この手の表現も意外と最近の作品では使われてないかもしれません。まあ私はずっと使われ続けると思ってますけどね、使い古された表現ということは誰でも知っているということでもありますから、作品で表現を行う時そういうテンプレートを使うのは“分かりやすさ”という意味で非常に優れた手段なのです。かくいうこの小説のタイトルもそのテンプレートの一種ですからね、句読点が入った長文タイトルを見れば誰でも一目で「あっこれラノベか」と気づけるでしょう? もしこれを「幼馴染失格」みたいなタイトルにしてしまえば、純文学を期待してやってきた読者が予想外のラノベを叩きつけられた挙句、失望と低評価をこの作品に叩きつけるハメになってしまいます。そういった悲劇を避けるために、テンプレというものはとても役立ってくれるのですよ。まあラノベのテンプレをガン無視して好き放題喋ってる私の言えたことではないですけど。
そうして私がいつも通り好き放題喋っている間に、二人は生徒の群れを外れていました。あまりの人口密度に耐えられなくなったのでしょう、二人はどちらともなく目配せをして、そそくさと揃って道の脇に逸れていったのです、下校ルートから離れて一息つけるスペースにまで退避した二人は、この殺人的な下校ラッシュに対してギャーギャーと文句を言っています。
「ちょっとコレ混み過ぎでしょ、ヤバいよテスト最終日」
「だよな? 混み過ぎだよな、人間が下校する環境じゃないだろコレ」
「いやーやってられないね、ちょっと休んでこーぜ? 十五分もすれば落ち着いてくれるべ」
「んだんだ、ここで無理しても電車にさ押し込まれてぺっちゃんこになるだ」
エセ田舎言葉で話していた二人、どうやらしばらく待機することに決めたようです。その辺の全然使われてない階段に並んで腰を掛け、幸樹は本を、直美ちゃんはスマホを開いて時間を潰し始めました。ちなみに私が聞き耳を立てたところによると「丁度部活が休み、マジラッキー」「平日唯一の休みにテスト最終日が被った、これが日頃の行いパワー……!」等の言葉が聞こえてきました、察するに丁度休みの部活が多い日だったのでしょう、無論部活をサボって電車へ駆け出したやる気のない部員も結構な人数混じっているのでしょうけどね? 私はそれも学生らしくて良いと思いますよ、青春です。そしてそんな青春の時間を三分以上もスマホで浪費していることに直美ちゃんも危機感を感じた様子、テコ入れのため、もとい暇つぶしのために孫の腕を引っ張って気を引きます。
「ヘイ幸樹、無意味なことしようぜ」
「おう、とりあえず石でも積むか」
「初手賽の河原やめい、ハイレベル過ぎるわ。あのですね、直美ちゃんは思ったのですよ、せっかく一緒にいるんだからもっとコミュニケーション取ろうと、一緒になんかしようと」
「なるほど? んじゃアレか、腕相撲でもするか?」
「それもアリ、ただ今日はもっと無意味なことをします」
「はい、では何をするのでしょうか」
直美ちゃんはふふん、と自信ありげな顔をしています。これだけのドヤ顔をしているのだから何かとんでもないアイデアがありそうなものですよね? なんとこの子今から無意味なことをする気しかないんですよ、1+1=2と口にするような無意味で不毛な行いをするだけでこんな『ドヤァ……』みたいな顔してるんです、そのよく分からない自信は一体どこから出てるんですか。いや待ってください、しかし本当にそうでしょうか? こんなテストで100点取ったような顔を常人が意味も無くできるとは思えません、昔から達人というのは謙遜をするもの、直美ちゃんもつまらぬものを切ってしまうあの人のように大したことを謙遜して、無意味なことと言っているのではないでしょうか? 私の中で期待という名の深読みがじわじわと膨らんでいきます、そしてそれを知ってか知らずか、直美ちゃんは数秒もったいぶった後に、その『無意味なこと』を口にしました。
「え~コホン、それでは幸樹さん」
「はい、幸樹さんです」
「ふとんが~?」
「……ふっとんだ?」
「イエス! じゃあ次、生麦生米!」「生卵?」
「赤巻紙!」「青巻紙」
「「黄巻紙!」」
一拍、やり切ったような顔をした直美ちゃんがそっと息を吐きます、幸樹はとても困惑しています、そして私は呆れています。
「このような掛け合いを、人が減るまで繰り返します!」
「………………む、無意味だ……本当に無意味だ……」
「でしょ? 無意味でしょ? くだらないでしょ? 不毛でしょ??」
「ホントにね、何でそんな自信に満ちた様子なんだお前は」
「そりゃあ幸樹が思った通りのリアクションをしてくれたからだよ、それじゃ次行くよー」
…………変わらないなぁこの子は、幼稚園に入る前と同じことしてるじゃないですか。二人がこの遊び(?)をやっていたのは物心つき始めたぐらいの頃の話ですから、覚えているとは思えないんですけどねぇ、やっぱり人間は変わらないということでしょう、『三つ子の魂百まで』というヤツです。ただ昔と違うのは、ダジャレと早口言葉以外のレパートリーが結構増えていることですね、今は平家物語を口にしている様子、「祇園精舎の~」「鐘の声~」「諸行無常の~」って感じで楽しそうに唱えています。こんな不毛なことをしていますが、コミュニケーションが取れているからか直美ちゃんはとても楽しそうです、掛け合い自体は何でも良くて『一緒に何かする』ということが大事だったみたいですね、これも一種の構ってアピールというヤツなのでしょう、それにしてもあのドヤ顔は謎でしたが。
さて、二人が遊び終わるまでの間ただ待つのも何ですし、ここはひとつ二人の昔話をしましょう。物心つくくらいの頃から二人が家で遊んでいたのは前にも話しましたが、今日はその頃にどんな遊びをしていたのかについてお話します、家で遊ぶといえばトランプやすごろく、テレビゲームなどが鉄板です、しかし当時の二人は幼稚園にも入る前の子供、そんな複雑なゲームができるハズもありません、ではそんな二人が何をしていたのか? 答えは簡単、テレビを見ていました。教育テレビや音楽番組など、子供でもなんとなくで楽しめそうな番組を選んで、パパとママの膝に一人ずつ乗せてみんなで一緒にそれらを見ていました。他にもいつも見る番組のオープニング曲を合唱したり、何故か気に入ったらしいコントを真似したりと、二人が暴れないタイプの子供だったこともあって、その頃も割と大人しく過ごしていました。まあそれはそれとして二人の合唱に付き合わされて、私たちの喉は大ダメージを負っていましたけれども、何で子供ってあんな元気なんですかね? パパとママがダウンしてもずっと歌い続けてたんですよ、そんな長時間合唱に付き合わされてしまってはさすがの私も疲れてしまいます、まさか子育てで喉を酷使することになるとは私も思いませんでしたよ……長生きはしてみるものです。
「猫に~」「こば~ん」
「ふう…………私、大満足」
「そりゃよかった、俺も意外と満足」
「それは良かった、ぶっちゃけ何も考えず始めたから『大失敗するかもな~』って思ってたんだ」
「こんなことでも意外と楽しいもんだなぁ」
「ねー、んじゃあ人も減ってきたしそろそろ帰ろっか、せっかく早帰りだしカラオケでも行く?」
「喉が死ぬからヤダ、さっきの遊びで思ったよりダメージ入ったわ」
「冗談冗談、私も流石に今からは歌えないよー」
ありゃ、カラオケは行かないんですか、ここで行ってくれればさっきの話からキレイに繋がったのですけど。
キリも良いので今回はここで区切らせていただきましょう、例によって次回は今回の続きから始まるので、是非また読んでくださいねー。




