第12話_コンフェッションフォーユー!
さて、前回直美ちゃんの愚痴を聞いてあげた幸樹は、彼女を慰めるためハグしてあげることにしたようです。
「まあ元気になって良かったよ、それじゃほら」
「……?」
「ハグだよハグ、いつもやってるでしょ、何ど忘れしてるの」
「えっ……えっ……? いいの……?」
「そりゃいいけど、どうした急に?」
「いやあの、幸樹それ何やってるか分かってる? 限界化してる直美ちゃんをそこまで甘やかしたら本当に味を占めるよ??」
「……つまりもっとお前を甘やかす機会が増えるわけだ、よし来い」
「ちょちょっ……あばっばばばっ、おまっお前それアレだからな!? 野狐にマスカット食わせるようなモンだからね!? もう二度と木苺じゃ満足できなくなるんだよ! そこまでやって「もう直美とは会えないんだ、じゃあな」とか言いやがった日にはマジでぶっ殺すからね!!?」
「はいはい、俺は構わないから安心せい。あと今とんでもないこと言ってる自覚ある?」
「あわっ……わわわっ…………わああぁぁーーっ!!」
お目目をグルグルさせた直美ちゃんが、マスコットみたいな叫び声を上げながら幸樹に引っ付きました、多分これ頭パンクして何もわからなくなってますね。ちなみに何が起きているのかを解説しますと、『流石にそこまで甘えるのは悪いよねー』と距離感を考えて遠慮していた直美ちゃんに、何も考えてない孫が思いっきり距離詰めた結果驚いた彼女はパニックに陥ったのです、そして勢いのまま私利私欲の全てを告白じみて吐き出し、それを受け止められた結果彼女の頭は完全に機能を停止、本能のまま目の前の孫に引っ付いてひたすらナデナデされまくっているのですよ。
そしてそうやって、軽率に直美ちゃんの情緒をメチャクチャにした孫は割と平然としています、多分「直美は大げさだなぁ」とか考えているのでしょう、どんだけ適当なんですか。まったく、どうせアレでしょう? 異性として見られてないから好感度がそれなり止まりで上がらないと思ってるんでしょ? 『良い人ではあるんだけど……ね?』みたいな感じだと思って呑気に油断してるのでしょう? 聞こえないだろうけど幸樹あなたもう完全に手遅れですからね、こうなった以上直美ちゃんはあなたを死んでも手放しませんよ、本人はあんま分かってないですけどあなた直美ちゃんから見たらものすごい都合の良い男ですからね、長い付き合いで直美ちゃんの恥と無様の多くを見てきた上でこうやって苦しみに寄り添ってくれるんですよ? その上顔が良くて身長も上なんですから理解のある彼君もビックリです、こんな劇物を与えられた人間が元に戻れるとは思わないことですよ。まあそれは孫も同じなんですけどね、あんな如何にもメインヒロインって女の子が何年も一緒にいたんだから、もう他の女では満足できなくなっているでしょう、つまりお似合いというやつです。ところで……もしかしてこれはただの孫自慢なのではないだろうか……? おばあちゃんが親バカならぬ祖母バカを晒しているだけなのでは……まいっか、別に嘘言ってるワケでも無いですし。
さて、こうして長々と私が喋り倒している間に直美ちゃんが正気を取り戻して、羞恥心のあまり這いつくばって呻いています、かわいいですね。
「うぅ……ううぇえ……うぐぅっ……」
「あのー……直美? 直美さん?」
「グギギギギ……こ、こんな……どうして、こう、こ、こんな……私、は……も……もはや……」
「大丈夫? 自爆とかしない?」
「も、はや……これま……………………ッスゥ……」
一拍、深呼吸をした直美ちゃんが清々しい顔で孫を見ます。
「あのですね、幸樹さん」
「は、はい」
「私はこの際、腹を括ることにしました、とりあえずお前にはこの全ての責任を背負ってもらいます」
「ねえなんか怖いんだけど、大丈夫なのコレ」
「ダメなら私と一緒に爆死してもらいます、諦めてください」
「あっはい」
ふむ、直美ちゃんは最終手段を取ることにしたようです、つまり手札を全部叩きつける玉砕ですね、通称やけっぱち。果たして床に座らされた幸樹はこの先生きのこることが出来るのか、その正面15cmにキマった目をしながら座った直美ちゃんは私利私欲を満たすことが出来るのか、私もおかき片手に固唾を飲んで見守っています、やっぱ塩味が一番ですね。
「まず、幸樹には今後も私を甘やかしてもらいます、そのために彼女を作るのは禁止とします」
「??? 待って理解が追い付かない」
「彼女持ちが他の女とこんなベタベタしていいワケ無いでしょ、私も彼氏作らないから納得しなさい、しろ」
「あっはい、うん??」
「ふむ、理解が追い付かないようですね、まあ私も今頭働いてないからお揃いです、ので許しましょう。ひとまず理解できなくても良いので、聞いて頷いて「はい」と言うこと、可愛い可愛い直美ちゃんを甘やかす為だから、いいよね? ね?」
「あっはい」
────思ったよりヤバイのが出てきたな、どうすんだこれ。いや直美ちゃんが恋愛感情拗らせているのは分かっていましたが、それにしてもまさかここまで何もかもを吐き出せるとは思っていませんでしたよ、どうすんだコレ、孫が情報量で爆発するぞ。
「よっしゃあ! えーこほん、ではまずは私が日頃考えていたことをこの際に全てゲロります。第一に私は幸樹のことを常々独占したいと思っていて、お前が他の女に盗られる可能性があることがとても気に入りません、幸樹は顔が良くて背が高いですから、そのうち私がされるように話したことも無いヤツが告白してくることでしょう。そんなぽっと出の有象無象に人生の大事なものリスト筆頭を盗まれた日には私は憤死してしまいます、だからお前には私と同じ告白受け付け期間外、つまり彼女作らないモードになってもらいます」
「あっはい」
「いい返事です、一通り話し終わったら私は羞恥心とショックで死ぬのでその後は頑張って介護してね。で、今後当面幸樹の彼女いない歴が更新され続けるワケですが、それは私が何とかします。この深夜テンションの内に言っておきますが私は中学三年生の入学式あたりからお前のことを異性として見ています、端的に言って大好きです、具体的には抱き着く度に『なんとか勢いで首元に噛みつけないかな……』と頭の二割で考えているのに頑張って我慢しています、偉いでしょ、ね?」
「あっは……いや嘘つけぇ! 今年最初に泊まりに来たお前を『良い年した女が野郎の家に泊まるんじゃないよ』って俺が追い返そうとしたら『幸樹はそういう目で見てないから、セーフ』とか言ってゴリ押してきただろ!?」
「はい、嘘をつきました、そうでもしないとフラストレーションが爆発しそうだったので。私がこんなに頑張って自制しているのに幸樹は『ハグ禁止』やら『膝枕やめる』だの言ってガス抜きを禁じてきたんですよ? というか女子高生が同年代の異性に意味も無く抱き着く動機なんて性欲以外ないでしょ、フラストレーションを抑えるために最近はそうやって自制してきたんですよ、そうやって無理な自制をさせられたのにその程度で済ませたんですから褒めてください、私頑張った、私偉い」
「マジかよ…………俺の今までの苦悩と絶望は一体何だったんだ……」
「嘘ついてゴメンネ、何でも言うこと聞くから許して、ね。で、話を続けるよ、正直私は幸樹と付き合って結婚してやることやって同じ墓に入るまでは全然ウェルカムなのですが、ここで一つ問題があります、私は別に幸樹を見ても心臓がバクバクして不整脈起こすようなことが無いのですよ。つまり幸樹が私と付き合ってもマンガ小説ドラマ等に出てくる『手を繋ぎたい……でも恥ずかしい……!』みたいなテンプレ恋愛はできないのです、今の距離感が更に縮まって好感度上限が解放されるだけです、だからちょっとそれに幸樹を付き合わせるのはなー……でも盗られるのもなー……って悩んでそのまま現状維持してたのが今までの私の状態なのですよ、今日で全部ゲロりましたけど。ここまで分かった? いや分かんなくても聞いてりゃいいや、返事して返事」
「あっはい、はい??」
「聞いてるね、ヨシッ」
(絶句)
どういうことなの、この子本当に何もかも暴露してますよ……? 控えめに言って万歳突撃レべルで玉砕してますよこの子、というかそこまで拗らせているとは私も知らなかったんですけど……いやまあ確かに振り返ってみれば孫が背もたれにしてたクッションに顔埋めて突っ伏してたりしましたけども、それにしてもここまでとは思わないじゃないですか。ねえ幸樹大丈夫? この子ヤバイわよ? なんというかあなたが責任取ってあげないとダメな段階に入ってたわよこの子、頑張るしかないわよアナタ、覚悟の準備するしかないわよコレ。
「で、第三に私の人生には幸樹が必要です。正直今までなら幸樹に彼女ができてもギリギリ前を向けましたが、私が今日徹底的に甘やかされたことでそれはもうできなくなりました、ルート固定です。私はもう幸樹に優しくしてもらえない人生は考えられません、今までの大体十六年間を君に甘やかされ続けたことで、私は完全に味を占めてしまいました、こうやって全面的に信頼できる異性がいる安心感に完全に依存してしまったのです。そんなワケで幸樹にはこの責任を取ってこれから私と一緒にいてもらいます、私を完全なダメ人間にしたのですからちゃんと責任を取ってください、いいですね?」
「あっはい、よろこんで」
「ふふっ嬉しいこと言ってくれるじゃん、じゃあそういうことで。今後幸樹の人生で異性が必要なイベントは全部、本当にぜぇんぶ、私が一緒に埋めてあげる。もし幸樹が私を好きじゃないならそうしないけど……幸樹は私のこと好きでしょ? こんな美少女が君のこと大好きで昔からずっと一緒にいるんだから大好きだよね? あっ答えないでね、もし好きならそれは私に告白する時に言ってね。まあそういうワケだから、幸樹は安心して私に人生費やしてね?」
「あっはい、ありがとう」
「よしよしこれで言いたいことは全部言えたね、それじゃあ…………………………きゅう」
あっパンクした。負荷に耐え切れず(頭が)爆発した直美ちゃんが「きゅう」ってかわいい鳴き声を上げながら幸樹の方に思いっきり倒れ込みました、そしてのしかかられた彼もその勢いで後ろに倒れ込みます、視覚的には直美ちゃんが幸樹を押し倒した形になりますね、エッロ。しかしまあこれどうすんだ、いや本当にどうすんだ、なんというか今後起きる予定のイベントを一斉に消化した感じです、幼馴染攻略RTAです。無茶振りですがここから良い感じの恋愛展開に持ち込むのが甲斐性というもの、孫にはこの情報量の暴力に屈せず頑張ってもらいましょう、なあに最悪花火見ながら告白すりゃあ大抵はなんとかなりますよ、確か行ってる高校が文化祭で花火上げるらしいですから、体育館裏で花火見ながら告れば一発KOです、頑張れ孫、お前の未来は明るいぞ。
「んーー……! んんーー……!!」
「喋れなくなってんじゃん……えっと、撫でる?」
「ん!」
「んじゃはい、えっと……何言おう、とりあえず……いい子いい子?」
「んー! んんーー!!」
「これで良いんだ。よしよし、直美は頑張った、偉い、いい子、お疲れ様」
「~~……♪」
何も話せなくなってますねコレ、言語能力を完全に喪失しています、まああんだけのことを言ったのですから意思の疎通が取れているだけ上出来でしょう、正直私は発狂してどこかへ走り出してもおかしくないと思ってましたし。
ちょっと話のカロリーが多すぎたので、ここらで一区切りとしましょうか、次回はこの続きから始まるので、是非読んでくださいねー。




