第一話 悪夢の始まり
昔々、人間族と魔族は、人間界と魔界を繋ぐ大きな門をくぐり、共に笑い合い、助け合い、それぞれの文化を尊重し合いながら仲良く暮らしていた。
だがしかし、ある日人間族の王がかわり、人間族優秀主義という思想を唱え始めた。そこから、人間族の民たちは、魔族を差別し、いじめ、二度と共に笑い合い、助け合うことは無くなってしまった。
その翌年、人間族が魔族に宣戦布告。そして人魔世界大戦争が起きた、この戦争では両族100万人以上の犠牲を出し、豊かな大自然が枯れ地に変わっていき、次第に人々の笑顔が消えていった。その後魔王が人間族の王を殺し、終戦を迎えた。終戦後、人間と魔族は条約を結び、関わることをやめ、人間界と魔界を繋ぐ門は永遠に閉ざされてしまった。
およそ2000年後…
魔界ー
「魔王様からの緊急集会いつぶりなのだろうか…。」
白狼のような髪、耳を持った体格のいい男が魔王城に向かって走っている。
「ここが魔王城か…。やはり何度見ても大層美しく立派な城だ。」
狼男が城を絶賛していると、どこから見て体調の悪そうな紫髪の男が後ろからやってきた。
「おいお前、元気だったかぁ?久しぶりにお前の顔が見れたぜぇ…。まあよく数千年経っても顔立ちは変わんねぇな。」
「あぁ。それより、魔王様の緊急集令がかかっている。それに俺ら以外の他の四天王もいるだろう。あの2人は几帳面だ、絶対に7分前にはついておる。お前と話している時間はない。早く行くぞ。」
「相変わらず無愛想な男だなぁ、お前は。」
そう言いながら2人は魔王城の中に入り、紅い霧の中に包まれていった。
霧がだんだん晴れてくると身長差がある2人の影が見えた。
「よう!狼っちと毒っちやないか。随分久しいな!よう元気にしてたな!氷っちも何か話したらどうだ?」
いかにも体育会系の見た目をした高身長の
男が馴れ馴れしく話してきて、氷のような綺麗な容姿の男に話を振った。
「 …。」
「いくらなんでも氷っち、無視するのは行けないっしょ!一応同じ四天王なんやからさ!ね?」
「別に無理して話させなくてもいいだろう。個人の自由だ。よく喋る猿だ。」
狼男は少し体育会系に向けて軽蔑しながら氷の美少年を庇った。
「…!魔王様がくるよ…」
氷の美少年が話した瞬間全員がひざまずき
魔王に対して尊敬の意を見せた。
「やあ、諸君。元気にしてたかい?急に呼び出してしまったが余のために全員来てくれたこと、全員に感謝する。」
禍々しいオーラを放ちながら、登場してきた。四天王たちは緊張感が高まり、硬直していた。
「はっ!我ら四天王、魔王様にお会いできて誠に嬉しい限りです!」
狼男がはっきりとした口調で放つ。そして魔王がまた口を開いた。
「余は君たちにやって欲しいことがある。
やってくれるかね?」
「はっ!我ら四天王は魔王様に常に忠誠心を誓い、日々精進しております!何なりとお申し付けください!」
「フハハハ、それは良い心がけだ!それでは、これからお前らには人間界で“青春”というものをしてもらう!」
「“青春”とはなんですか?」
「詳しくは知らないが、人間と仲良くする考えれば良いだろう。」
余りにも衝撃的な魔王からの命令に四天王は全員動揺していた。そして体育会系が一番に勢いよく口を開く。
「魔王様!いくら我々が忠誠心を誓っていたとしても、この数千年前に結んだ条約をお破りになるおつもりですか!?」
これにも他の四天王も共感をせざるを得ない。
「それはもう数千年前の話であろう。そして、人間族は一度滅び新たなる人類が生まれた。そのため、また交友をまた深めて行きたいと私は思っている!」
それを聞いてでも四天王達は納得が行かなかった。
「まあ良い。余が勝手に送ればいいことだけじゃ。では“良い青春ライフ“を送るんだぞ!」
そう言い、四天王は白い光に包まれ人間界に飛ばされた。
「君たちに運命がかかっておるぞ…。」
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目が覚めると何か柔らかいものの上で仰向けになっていた。魔界では見たことのない密室だ。本当に人間界に来てしまったのだろう。そして他の四天王も見当たらない。それぞれ別々の場所に飛ばされたのか。
それにしてもなんだか違和感が..
(とりあえず、この部屋から脱出を…)
「…、はぁ!!!!???」
思わず声が出た。
(誰だこいつ…!?!?)
目の前には既視感のある姿があった。
これは鏡で多分俺だ。顔立ちや体格はそのままだ。だが俺のアイデンティティの耳が
人間の耳にかわり、尻尾は消えてしまった。
「雄雅!引っ越して早々、朝っぱらからうるさいわよ!
もう高校生でしょ?早く降りてご飯食べて学校に行きなさい!」
雄雅。多分人間界での名だろう。しかしそのせいでか俺の本当の名前もわからなくなってきた。ここにいるとなんだか色んなものが失われている感じがしてきた。
「あっあー。聞こえてるか?人間界と魔界間でのテレパシーは久しぶりだからな…。聞こえてるなら返事してくれ!。」
「はい聞こえています、魔王様。」
「よしあっちの声と姿は分からないし多分伝わってるじゃろ。」
「「「「なんで返事を要求したんだ?魔王様は。」」」」
なぜかか分からないが全員同じこと言った気がする。そんなことも知らず、魔王様は語りかけてきた。
「これから四天王の君たちには人間界で青春をしてもらう。すると言っても、自分が心のそこから、人間を愛せるようになる事が余の本当の狙いだ。あくまで青春は言葉の言い換えだと考えてくれ。余も最近の人間の言葉など理解してない部分も多い。
とりあえず全員が青春を感じるまで、元の世界には戻れない。そしてお前らの能力は人に危害を加えること以外は使用できる。それでは、良い青春ライフを送るんじゃぞ。」
心のそこから人間を愛すだと…?今まで作りあげてきた歴史をぶち壊した種族にとか?何を言っている魔王様は。流石に理解できなかった。だがもう帰るすべは魔王様の言ったこと以外ないだろう。しかも能力も一部制限されてしまった。俺ら4人の人間嫌いが物凄いものだと知っていたからだろう。とりあえず、人間の母親から制服というものをもらい着替えさせられ、学校とやらという場所に行こうとしていた。
(とりあえずここが外につながる門か?)
「何あんたドアの前で突っ立ってんの?
早くドア開けて行ってきなさいよ。」
(ドア?多分門のことを言っておるのか。)
「何を言っておる母上。門は勝手に開くものだろう。」
「あんたの方が何言ってるのよ。ドアは自分で開けるの。自動ドアではありません。」
「あっ、そうなのか。その心感謝致す。」
「くっくそ押してもドアが開かぬ….なんて頑丈な門だ。」
「スライドよ。」
雄雅は何も言わずに出て行ってしまった。
「引っ越してから、おかしくなったわね、あの子。」
最後までのご清読ありがとうございます。作者の
白虎虎 舞です。
これから四天王はどう人間達と関わっていくのか、どういう展開になるのか。想像しながら次回、楽しんでくれるとうれしいです。