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42 月下の問い、交わる影

 真一はゆっくりと顔を上げ、サティーナを静かに見つめた。その瞳には、探るような色がわずかに浮かんでいた。

「サティーナ、僕たちに加わるってことがどういう意味か、分かっているはずだ。その覚悟、本当にできているのか?」

 それを聞いたサティーナは、きりりとした表情でゆっくりと頷き、真一をまっすぐに見つめ返した。

「はい、雷野。熟考の末、我は汝らと共に戦うことを決めました。我には我なりの理由と信念があり、この選択こそが正しいと確信するに至ったのです。」

 真一の胸の内には、複雑な感情が渦巻いていた。彼は静かに頷く。サティーナの申し出は、単なる彼女一人の決断ではない。魔王軍内部で何かしらの変化が起こりつつある、その兆しでもあった。

 ギルドホールには重苦しい沈黙が流れ、緊張に満ちた空気が場を包み込んでいた。サティーナの提案は、戦略的に極めて重要な意味を持つ。だが、魔王軍四天王の一人であり、かつて命を賭して戦った強敵を仲間に迎え入れることは、決して容易なことではなかった。

 愛理は眉をひそめ、目の前に立つ優雅で冷静な悪魔の女を不安げに見つめた。彼女はかつて戦場で、サティーナの勇気と冷酷な決断力をこの目で目撃している。その圧倒的な威厳は、今もなお彼女の胸に警戒心を抱かせていた。

 愛理は小さく声を潜め、真一に問いかける。

「真……本当に彼女を信用していいの?」

 真一はサティーナをじっと見つめた。その顔には余計な感情は浮かんでいないが、瞳の奥ではすべての利害を秤にかけていた。愛理の不安も、リアの警戒も理解している。だがそれ以上に、サティーナの提案が今の蓮華城にとっていかに重要かも、よく分かっていた。

 しばしの沈黙の後、真一は静かに口を開く。

「今の状況じゃ、他に道はない。」

 近くにいたリアは腕を組み、サティーナに鋭い視線を向け、眉をひそめながら、かすかに不安げな声で言った。

「真一くん、彼女はかつて私たちの敵で、あなたと愛理を生死の境に追いやった相手よ。今さら彼女を受け入れるなんて、軽率すぎるのじゃないの?」

 だが、サティーナはまるでこうした反応を予期していたかのように、穏やかな微笑みを浮かべ、静かに頷いた。そして、誠実な口調で語りかける。

「皆さんの警戒はもっともです。それはすべて、これまでの我の行いの報い。ですが、この場にいる限り、必ず要塞の安全を守り、魔王軍の重要な情報を提供することを、ここに誓います。」

 真一は大きく息を吸い込み、振り返って仲間たちを見渡し、落ち着いた口調で、しかしはっきりとした意志をこめて告げた。

「サティーナの加入、僕は認める。ただし、みんなには警戒を怠らないでほしい。必要とあれば、すぐに動けるように。これは僕たちだけの問題じゃない。蓮華城全体の安全がかかっている。」

 愛理とリアは顔を見合わせた。心の中にはまだ迷いと不安が残っていたが、真一の決意に、ほんの少しだけ心が落ち着いたのを感じた。

 愛理は小さくため息をつき、そっと呟いた。

「真……あなたの判断を信じる。この決断、後悔しないといいけど。」

 真一は軽くうなずいて感謝の意を示し、サティーナに手を差し出し、厳かで淡々とした口調で告げた。

「サティーナ、チームにようこそ。雷野真一だ。真一って呼んでくれればいい。一緒に目標を達成しよう。」

 サティーナは意味深な笑みを浮かべ、そっとその手を握った。その声には、ほんのりとした優しさと、確かな意志が滲んでいた。

「真一、信頼してくれてありがとう。その信頼にふさわしい存在だって、必ず証明してみせるわ。」

 ギルドマスターは満足げにうなずき、場の空気を引き締めるように宣言を放った。

「それでは、本日よりサティーナは冒険者ギルドの特別補佐として雷野チームに加わる。これからの試練に、力を合わせて立ち向かってくれ。」

 ギルドホールの空気は徐々に和らぎ、不安を抱えながらも、真一・愛理・リアはかつての敵だったサティーナを受け入れる決断を下した。

 夜が静かに訪れ、月明かりが枝葉の隙間から森の広場に差し込み、木々の影を揺らしていた。真一たちはいつもの場所へと歩いていく。だが、サティーナが加わったことで、いつもの穏やかな空気はどこか張り詰めたものになっていた。

「あら、ここがいつもの場所なの? すっごくいい雰囲気じゃない〜」

 サティーナはのんびりと後ろからついてきて、いつもの自信たっぷりな軽やかな口調で言った。紫の巻き髪を指先でくるくると弄び、淡い色のギリシャ風ローブの裾が歩みに合わせてふわりと揺れる。その姿はまるで月光に照らされた女神のようだった。

 リアは突然立ち止まり、振り返ってサティーナをまっすぐに見据えた。その瞳には隠しきれない警戒心が宿っている。

「サティーナ、どうして私たちの仲間になったの? 魔王軍四天王のあなただけど、本当に私たちを助けるためだけにここにいるの?」

外伝第5章、ついに完成しました!お姉さん系能力者も第2部の主人公に触発され、自分の力を覚醒。次章の最終決戦に向けて、しっかりと障害を排除しました。そして次はいよいよ、第2部の主人公がこの騒動にピリオドを打つターン。


外伝の物語ももうすぐクライマックスを迎え、次の巻からはまた本編に戻って、真一たちの冒険が再開されます!ストックもだいぶ溜まってきたし、そろそろ少し休憩してもいいかなって感じです(笑)。


次回もぜひ楽しみにしててくださいね!

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