39 魂を結ぶ約束
真一は言葉を失い、喉が詰まるようで、彼女の優しさに呑まれるようにじっと見つめた。心の奥に積み上げていた防壁が、音もなく崩れていく。彼は壊れ物を扱うようにそっと腕を伸ばし、大切に愛理を抱きしめた。
「愛理……」
囁くように名を呼び、もう抑えきれなくなった想いを込めて、彼女を強く、しかし優しく抱き寄せる。その腕の中には、守りたかった想い、心配、不安、そして彼女の眠りの間に耐えてきた孤独と無力さが、すべて詰まっていた。
愛理は静かに目を閉じ、真一の肩に身を預けた。その胸の温もりと力強さを感じながら、彼の背中に腕を回し、同じ優しさで抱き返す。
「もう心配かけない。どんな未来が来ても、私はあなたのそばにいるから」
その声は優しくも、しっかりとした響きを持ち、深い誓いが込められていた。真一は彼女の想いを感じ取り、心の闇が溶けていくのを実感した。ただ静かに二人は抱き合い、その静寂が二人の心をしっかりと結びつけていった。
傍らのリアは涙を浮かべ、安堵の微笑みを浮かべる。幾度となく死線を越えてきたこの二人を見つめ、その姿に心からの喜びと祝福を感じた。そしてもう感情を抑えきれず、そっと二人の腕の中へ飛び込んだ。
「愛理ちゃん……ほんとうによかった……」
リアの声は涙に詰まりながらも、溢れる喜びに満ちていた。頬を愛理の肩に寄せ、感動と安堵の涙が静かに流れる。
愛理はリアの髪を優しく撫でながら、そっと囁いた。
「ありがとう、リア姉。目を覚ましたとき、あなたたちがそばにいてくれて、本当に幸せだった」
真一はふっと微笑むと、愛理をそっと離し、リアへと視線を向けた。その声には感謝の気持ちが滲んでいた。
「リア、本当にありがとう。いつもそばにいてくれて。この数日、君には何度も助けられたよ」
リアは涙をぬぐいながら、微笑んで首を振る。
「そんなの、大したことじゃないわ。愛理ちゃんが無事で、真一くんが安心できたなら、それだけで私は十分よ」
三人はぎゅっと抱き合い、病室には静かなぬくもりと、言葉にしなくても通じ合う優しさが満ちていた。この瞬間、すべての不安や苦しみが温かな静けさに変わり、互いの腕の中に帰る場所を見つけ、心はより強くなり、この瞬間の幸せを何よりも大切に感じていた。
愛理はベッドに腰かけ、その澄んだ瞳にはどこか神秘的な光が宿っていた。真一は彼女のそばで優しいまなざしを向け、朝の光が愛理の顔を柔らかく照らし、その奥底に秘められた想いを映し出しているかのようだった。
愛理はふわりと微笑み、そっと囁いた。
「真、知っている? 私ね、意識を失っていた間も、あなたを通して外の世界を感じていたの。あなたの感情も、考えていることさえも……」
真一は少し驚いた顔をし、思わず尋ねた。
「愛理……つまり、君が意識を失っていたときも、僕たちの絆は繋がっていたってこと?」
愛理は小さく頷き、瞳の奥に不思議な光を宿した。
「うん。これが『霊魂連結』の力だと思う。ただ意識を感じるだけじゃなくて、真との目に見えない繋がりを、心の奥でしっかり結んでくれるの。たとえ体が眠っていても、私の心はずっと真を追いかけていたの。暗闇の中でも、あなたの不安も、優しさも、全部ちゃんと感じられた」
真一は俯き、しばらく黙ったまま胸の奥にさまざまな想いが込み上げた。思い返せば、眠れない夜も、彼女への想いと不安は絶えず胸にあった。それがこんな形で彼女に届いていたなんて。愛理は決して離れてなんかいなかった。ずっと、そばにいてくれたのだ。
「愛理……僕、一人じゃなかったのだね」
真一は穏やかな声で囁き、そっと手を伸ばして彼女の手を握った。その掌の温もりに、胸の高鳴りが静かに溢れてくる。
愛理も彼の手を握り返し、その瞳には安らぎと決意の光が宿っていた。
「真、私たちの絆はもう、生死を超えたものだよ。この『霊魂連結』の力を大切にして、これからはもっと慎重に使う。もう、真には心配かけないから」
真一は彼女をじっと見つめ、心が温かさで満たされるのを感じた。ふっと唇の端を上げ、優しい微笑みを浮かべる。
「愛理がいてくれるなら、もう何も怖くない。僕はずっと君のそばにいて、このかけがえのない絆を守っていく」
二人は微笑み合い、目に見えぬ繋がりの中で心を重ね合った。それはまるで、互いの魂に深く刻まれた運命のようだった。
数日後――。朝日が病室いっぱいに差し込み、愛理はベッドの端に腰かけ、リラックスした笑みを浮かべて、とても元気そうだった。慎重な治療の甲斐あって、彼女はようやく完全に回復し、退院できることになった。
リアは愛理の服を丁寧に整えるのを手伝い、ほっと息をついて微笑んだ。
「愛理ちゃん、やっと元気になってくれて、本当に良かった」
愛理はリアの手をそっと握り、感謝の気持ちを込めて言った。
「リア姉、この間は本当にありがとう。いろいろと世話をかけちゃって、大変だったでしょ?」
リアは軽く首を振り、優しく微笑む。
「愛理ちゃんが元気になってくれただけで、私はもう十分幸せよ。特に真一くんなんて、毎日あなたのことばかり気にしていたのだから」
はぁ…ついに運命のシーンに突入しました——外伝第4章。せっかく好きになった新キャラだったのに、結局死神(作者)の呼び声には逆らえず、最後の瞬間を迎えることに…。他の作家さんたちも、自分の愛したキャラを“お別れ”させる時、やっぱりこんな風に惜しくて切ない気持ちになるのかな?
ちゃんとその後の展開は考えてるんだけど、今はやっぱり少し悲しいです(泣)。
見返りを求めない愛情も、それが「正しい相手」なら幸せに繋がるけど、この世界の中でその「正しい相手」を見つけるのって本当に針の穴に糸を通すようなもの。もし本当にキューピッドがいて、運命の相手同士を結びつけてくれるなら、きっと無償の愛を捧げ合って、その中に本当の幸せを感じられるんだろうな…とか、ちょっと話が逸れちゃいましたね。
次回もぜひお楽しみに!




