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38 月下の静寂と絆の星

 蓮華城の外の荒野には月光が降り注ぎ、夜風が硝煙を吹き飛ばし、血の匂いを残した静寂が広がっていた。

 サティーナ率いる魔王軍は徐々に退却し、旗と鎧は冷たい光を反射させながら、やがて闇の中へと消えていく。

 彼女は高台からその軍勢を見下ろし、瞳にはかすかな安堵の色が浮かんでいた。この撤退はもはや栄光のためではなく、彼女自身の意思によるものだった。

 真一の存在が彼女の執念を揺さぶり、信念さえも静かに変えていったのだ。もはや命令に従うだけの存在ではなく、大切な絆のために進む者となったのである。

 魔王軍が遠ざかるにつれ、蓮華城の兵士たちは驚きから安堵、そして喜びへと表情を変えていった。苦戦必至と思われたこの城は、滅びの運命を免れたのだ。

 兵士たちは敵の姿が消えていくのを、安堵と感謝の眼差しで見送った。前線の冒険者たちも武器を置き、疲れきった様子で地面に腰を下ろし、互いに無言の微笑みを交わしながら、ようやく訪れた夜の静けさに身を委ねていた。

 そして、蓮華城の城壁の向こうでは、真一がリアと、気を失った愛理のそばに付き添い、静かに魔王軍の退却を見届けていた。彼は、サティーナがこの決断にどれほどの苦しみと重圧を背負っていたのか、痛いほど理解していた。

 この戦いの結末は単なる勝利ではなく、敵対を超えた彼とサティーナの間に芽生えた、理解と暗黙の絆の証でもあった。蓮華城は存続し、そしてこの夜、彼らの間には夜空に輝く、決して消えることのない星のような新たな絆が生まれたのだった。

 ***

 朝の光がカーテン越しに病室へ差し込み、柔らかな光が愛理の青ざめた顔を優しく照らした。ベッドのそばでは、栗色の長い髪をわずかに乱しながら、優しさと心配の入り混じった表情でリアが寄り添っていた。

 この数日間、彼女は疲労の色を浮かべながらも、愛理が目を覚ます瞬間を恐れるように、一度も目を閉じることができなかった。

 ふと、愛理の指がかすかに動き、長いまつげが微かに震えた。リアの心は緊張に締め付けられ、息を呑んでじっと見つめる。そしてしばらくすると、愛理は少し戸惑いを浮かべたまま、ゆっくりと目を開け、徐々に現実を認識し始めた。

「愛理ちゃん……目が覚めたのね!」

 リアは驚き、少し震える声で優しく呼びかけた。まるで長い間この瞬間を待ち続けていたかのように、目に涙を浮かべながら愛理の手をしっかりと握る。

 愛理はかすかな微笑みを浮かべ、か細くも優しい声で

「リア姉……大丈夫?」

 と口にした。

 その声は羽のように軽やかでありながら、どこか安心感を与える温かさを宿していた。

「大丈夫よ、愛理ちゃん。もう何も心配いらないわ!」

 リアは鼻の奥がつんとし、目に涙を浮かべながら口元を手で覆うと、大きく息を吸い込み、勢いよく立ち上がった。

「すぐに真一くんを呼んでくるわ。ずっとあなたの目覚めを待っていたの!」

 そう言い残し、リアは軽やかな足取りで病室を飛び出していった。

 その様子を目にした医師と看護師たちは微笑みながら病室へと入り、間もなく愛理のもとで丁寧に各種の検査を始めた。愛理は素直に応じつつ、誰かの到着を待ちわびるような優しい眼差しでドアの方を見つめていた。

 検査が終わると、医師は穏やかな笑みを浮かべて言った。

「星川さん、順調に回復していますよ。数日休めば退院できそうです。」

 看護師たちも笑顔で、

「リアさん、この数日間ずっとあなたのそばにいて、一度も離れなかったのですよ」

 と優しく付け加えた。

 愛理は一瞬はっとして、感謝の気持ちを込めた目でドアの方を振り返る。そっと目を閉じ、その温もりを静かに感じながら、唇にかすかな微笑みを浮かべた。

 病棟の窓から差し込む陽の光が、ここ数日の重苦しい空気を払うかのように愛理の頬をそっと照らす。彼女は静かにベッドに腰掛け、その瞳は澄み切っていて、まるで朝の光のように優しかった。長い暗闇からようやく目覚め、久しく忘れていた温もりを胸に迎え入れるかのようだった。

 廊下の奥から足音が急ぎ足で響き、徐々に近づいてくる。愛理はそっと顔を向け、口元に微かな笑みを浮かべた。ドアが静かに開き、真一とリアがそこに立っていた。二人は息を呑み、この静けさを壊すのを恐れるかのように動きを止めていた。

 愛理と目が合った瞬間、真一の瞳は驚きに凍りつく。喜びと安堵、そしてわずかな不安と罪悪感がない交ぜになった表情だった。過去の記憶が胸を駆け巡り、今この瞬間、彼女が無事であることを確信し、張り詰めていた心の波がようやく静まっていくのを感じた。

「愛理……」

 真一は夢でないかと怯えるように、掠れる声で彼女の名を呼んだ。その声は低く優しく、長く押し殺してきた想いを滲ませていた。

 愛理はただ微笑み、まるですべてを理解しているかのようだった。彼が何かを言いかけたその瞬間、そっと人差し指を彼の唇に当て、それ以上言わなくてもいいと静かに伝える。

 小さく首を振りながら、愛理は穏やかで暖かな声で言った。

「真、全部わかっているよ。あなたの気持ちも、ずっと前から。」

帰り道、たまたまChristina Perriの「A Thousand Years」を聴いてたら、「これ、第2部であの女キャラと主人公が再会するシーンにピッタリすぎる!」って思っちゃいました。まさに神曲。


聴き終わったあと、思わずこんなポストを投稿しました:


「時を超えた愛、

千年待ち続けて、ただ再会のその日を願う。

どんなに君の姿が変わっても、

愛する気持ちはずっと変わらない。

Für die Welt bist du irgendjemand, aber für irgendjemand bist du die Welt.(あなたは世界にとってただの誰かだが、誰かにとってはあなたは世界そのものです。)」


しかもこの曲、主人公と彼女が死に別れるシーンでも流したくなるくらい合うんですよ。そのシーンにたどり着いたら、ぜひこの曲を流しながら読んでみてください!お楽しみに!

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