表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/48

34 沈黙せし魔王のミステリー

 彼女は顔を上げ、瞳に苦痛を浮かべながら、わずかに声を震わせた。

「悪魔族の将として、我はこの惨状を目の当たりにしました。かつて親しく笑い合っていた仲間たちが、突然見知らぬ凶暴さを剥き出しにするのです。目には果てしない殺意が宿り、まるで……目に見えぬ何かに操られているかのようでした。理由もなく破壊し、奪い、すべてが理不尽でした。」

 それを聞いた真一は拳を握りしめ、怒りと驚愕を露わにした。

「まるで誰かが裏で糸を引いているみたいだ!」

 サティーナは深い痛みを宿した瞳で、どこか冷たく微笑んだ。

「……そうかもしれません。ですが、たとえ誰が背後にいたとしても、もう取り返しのつかないところまで来てしまったのです。当時、悪魔族の上層部は、他の種族が我らを裏切り、戦争を仕掛けてきたと信じ切っていました。」

 そこで彼女は言葉を切り、複雑な眼差しを浮かべてゆっくりと目を伏せた。

「魔王様の側近たちは拳を振り上げ、混乱を終わらせるためには戦争しかないと叫び、挙句の果てには先制攻撃を主張する者まで現れました。我も怒りに呑まれ、真実を見失い、ただ流れに身を任せるしかなかったのです。悪魔族は全面動員を開始し、民たちも反対するどころか、それを誇りにすら思っていました。」

 真一は、サティーナの胸の内に抱えた重さを感じ取るように、黙って彼女を見つめた。その瞳には、隠しきれぬ痛みが滲んでいた。

「でも、サティーナ…」彼は眉をひそめ、戸惑いの色をにじませながら問いかける。

「君は、魔王が慈悲深く賢明な御方だと言っていたよね。なら、どうしてこんなことを許したのだ?なぜ侵略を止めなかったのだ?」

 サティーナは苦く微笑み、その瞳は遠い昔の記憶に沈んでいくようだった。

「…ええ。魔王様は、かつて我ら悪魔族の誇りでした。ただの支配者ではなく、この世界の精神的な支えでもあったのです。でも、すべてが少しずつ崩れていったとき、あのお方は沈黙を選ばれたのです。」

 真一の瞳孔がわずかに縮み、その目に困惑と驚きが宿る。

「魔王は…何もしなかったのか?」

 サティーナは静かに頷き、小さく息を吐いた。

「はい。世界の均衡が崩れ、四種族の関係が憎しみに蝕まれていく中で、あのお方は表舞台から姿を消し、二度と声明を発することも、自ら軍を率いることもありませんでした。まるで、すべてに無関心であるかのように。ただ、事態は奈落の底へと沈んでいったのです。」

 信じられないといった様子で、真一は首を横に振り、怒りと戸惑いの入り混じった声を上げる。

「そんなことが…あるものか!そんなふうに放っておいたら、戦争はますます手がつけられなくなって、世界は狂気に飲み込まれるだけだ。魔王が守りたかったものは、みんな…無駄になってしまうのか?」

 サティーナは目を閉じ、深い後悔を滲ませながら静かに答えた。

「いいえ。あのお方は決して冷酷な支配者ではありませんでした。だからこそ、我らにはあのお方の沈黙が理解できなかったのです。その間に、悪魔族の上層部は戦局を掌握し、次々と過激な決断を下しました。軍はオーガ族、アンデッド族、幻獣族の領土を次々と併合し、ついには世界のすべてが悪魔族の支配下に置かれることとなったのです。」

 真一は胸に大きな悲しみを覚えながら、静かに彼女を見つめた。

 そして、ぽつりと呟く。

「悪魔族は世界を手に入れる代わりに……かつて持っていたすべてを、そして魔王の信念すらも失ったのか。」

 サティーナは目を開け、真一を見つめた。その瞳には痛みと困惑が浮かんでいる。

「そう……もしかすると、魔王様は冷酷でも無関心でもなく、我々には計り知れない苦悩を抱えておられるのかもしれません。けれど、この戦争で我らが勝利を重ねるたびに、民は狂喜し、その独善的な栄光に、我も含めて皆が目を曇らせてしまいました。」

 やがて、彼女の声は独り言のように小さく沈んでいく。

「戦争には勝った……ですが、その代償として、我々の信念と初心を失ってしまったのです。かつての悪魔族は、慈悲と知恵を誇りとしていました。それが今や、容赦なき侵略者へと成り果ててしまった。戦争は、一人ひとりの心を蝕み、自らを見失わせていったのです。」

 真一は深い哀しみと無力さを瞳に宿し、黙って耳を傾ける。そして、小さくため息をついた。

「悪魔族が勢力を拡大し、この世界を狙っているのは……魔王の沈黙ゆえなのか?」

 サティーナはかすかに苦笑した。

「そうかもしれません。勝利を重ねるうちに、我らは栄光と力に酔いしれ、次第に本来の目的を見失っていきました。上層部の者たちは貪欲と野心に取り憑かれ、自らの世界を治めることだけでは満足できず、やがて我らの世界の神の動きを探り、異世界の存在に気づいた瞬間、何のためらいもなくこちらへと手を伸ばしたのです」

 彼女はうつむき、その目には戸惑いと失意の色がかすかに揺れていた。声もどこか弱々しい。

「我らが魔王様に従ったのは、あのお方こそが悪魔族を真の平和と繁栄へ導いてくださると信じていたからです。しかし、今の魔王軍は……かつての信念から遠く離れてしまいました。皆、いまだにあのお方の名を叫び続けていますが、果たして今も、優しく賢明な指導者でいてくださるのか、誰にも分かりません。まるで魔王様は、我々の記憶の彼方へ消え去ってしまったかのようです」

今日はテンション上がって、第3巻の最終章も翻訳しちゃいました!最近ずっと外伝の執筆が進まなくて…全巻の大まかなプロットはできてるし、各章の流れさえ決めればすぐ書けるはずなんだけどなぁ。


多分、外伝の雰囲気がダークで終末感強めだからかな。序盤は結構えげつない描写とか暴力シーンも多めで、ようやくラスト近くになって主人公の本領発揮、みたいな流れだから…道のりは長い!(笑)


とりあえず第3巻は全話完成して公開の準備もできたので、次は第4巻のスタートです!第4巻の舞台は北米の要塞予定。お楽しみに!You're Shock!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ