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30 愛のため戦いへ

 真一は煙の向こうに揺らめく影をじっと見据える。

 その表情には、一切の油断もなかった。

 ——サティーナがこれで終わるはずがない。

 そして、その確信が正しかったことを示すように、不敵な笑い声が響き渡る。

 瞬間——

 黒い影が雷光のごとく煙の中から飛び出した。

 サティーナは、まるで無傷のまま、空に立っていた。

 手に握る魔剣から溢れる闇の力が、まるで目覚めた獣のように唸りを上げ、空間を震わせる。

 彼女の息遣いは荒く、その気配はますます狂暴さを増していた。

「雷野——これほど戦う価値のある相手に出会ったのは、初めてだわ!」

 彼女はわずかに顔を上げ、その瞳には隠しきれない興奮が宿っていた。魔剣を高く掲げると、闇の気が奔流のように刃へと吸い込まれていく。それはまるで、今にも獲物を喰らわんとする獰猛な獣のようだった。

 その頃、真一はゆっくりと歩みを進めていた。目指すのは、かつて愛理と共に倒れた場所。そして、彼の視線はそこに落ちている銀色の双銃をしっかりと捉えていた。

 それは――愛理の武器、銀色の双銃。

 薄暗い戦場の中、冷たく光る二挺の銃は、まるで闇の中に差し込む一筋の光のようだった。かつて愛理がもたらしてくれた希望の輝き。その光を思わせるかのように。

 真一はそっと双銃を拾い上げ、静かに頭を垂れた。脳裏に浮かぶのは、愛理の優しい微笑み。まるで彼女の魂が、今もそばに寄り添っているかのようだった。その想いが、彼の胸の奥深くに眠る力を燃え上がらせる。

 その時、不意に銀色の輝きを放つ二発の弾丸が宙に現れ、ゆっくりと真一の手のひらへと降りてきた。

 彼は深く息を吸い込み、目を閉じる。そして、二発の弾丸を両手にしっかりと握りしめた。まるで、その小さな弾丸に、愛理への想いと己の信念をすべて注ぎ込むかのように。

 しばしの静寂。

 やがて、真一は目を開けた。その瞳には、もはや迷いの欠片すらない。

 彼は弾丸を静かに装填する。銃声が鳴り響くよりも先に、見えざる力が空気を満たしていくのを感じた。

「……サティーナ」

 低く、しかし確かな声でその名を呼ぶ。双銃の銃口が、まっすぐに彼女を捉えた。

「もう、僕は自分のためだけに戦うのではない」

 その言葉とともに、装填された弾丸がかすかに震えた。それはまるで、彼の信念と想いが込められたかのように。

 サティーナの瞳に、かすかな賞賛の色が宿る。

「フフ……」

 彼女は冷ややかに笑い、魔剣をしっかりと握りしめた。その手には迷いがない。彼女を取り巻く闇の力が、一層濃く、鋭く凝縮されていく。そして、迷いなく刃へと注ぎ込まれた。

 暗黒の剣気が荒れ狂う旋風となり、巨大な剣影へと収束していく。それはまるで、世の光をすべて呑み込むブラックホール。破滅をもたらす漆黒の奔流が、真一に向かって解き放たれた。

「さあ、雷野!」

 サティーナの声は歓喜に満ちていた。まるで、この瞬間を待ち望んでいたかのように。

「全力で来なさい!これが、我が真の力よ!」

 真一の双銃がわずかに動き、ゆっくりと持ち上げられる。銃口はサティーナを正確に捉え、その瞳にはもはや迷いはない。

「僕も同じだ」

 その声音は静かでありながら、揺るぎない決意を帯びていた。

「愛理のために――そして、この信念のために」

「僕は、もう決して退かない」

 銃口が狙いを定める。

 指が、引き金をゆっくりと引いた。

 その瞬間、銀色の光が銃口に収束する。

 凛とした輝きが走る。それはまるで、夜空を切り裂く流星のように。

 二人の間の空気が張り詰める。

 剣気と弾丸が交差する、その刹那が迫っていた。

 サティーナの剣は闇そのもの。まるで地獄の深淵が形を成したかのように、あらゆるものを呑み込もうとしていた。

 だが――

 真一の弾丸は、まるで星の光のように煌めいていた。生命と希望の輝きを宿し、放たれたその一撃は、闇を切り裂かんとしていた。

 この瞬間、もはや言葉は不要。

 殺意が交錯する戦場。互いの視線が交わり、空中で火花を散らす。サティーナは戦意に満ちた微笑を浮かべた。魔剣を強く握りしめ、一片の迷いも、容赦もなく――彼女は戦いへと身を投じた。

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