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22 虚無の残響

 愛理は歯を食いしばりながら必死に立ち上がろうとするが、衝撃の余波で腕が小刻みに震え、その瞳には焦りと不安が滲んでいた。

「分かったかしら?」

 サティーナの声が空に響き渡る。隠しきれない高揚感が滲んでいた。

「真の力とは、決して汝らの手には届かぬものなのよ!」

 その姿は、まるですべてを見下ろす支配者のように空に君臨し、

 対する真一、愛理、リアの三人は、暴風の中で今にも吹き飛ばされそうな落ち葉のようだった。

 空気が張り詰め、時間さえも重苦しく感じられる。

 真一は武器を握る手に力を込め、「物質変化」の能力を駆使して次々と形態を変えていく。

 槍、ウォーハンマー、剣、そして彼が最も得意とする刃――。

 武器が変わるたびに破壊的な威力を伴い、怒涛の勢いでサティーナへと斬りかかる。

 だが、サティーナは軽く身をかわすか、わずかに手を動かすだけでそのすべてを防ぎ切った。

 真一の渾身の一撃すら、まるで子供の戯れのように軽々といなされる。

 魔剣が優雅に振るわれるたびに、彼の攻撃は無に帰していく。

「遅すぎるわ。」

 サティーナは冷笑を浮かべ、その声には侮蔑が滲んでいた。

 真一の焦燥は募り、額にはじっとりと汗が滲む。

 どんな攻撃も読まれ、ことごとく対処される。どれほど奇襲を仕掛けようとも、彼女にとって脅威にはなり得なかった。

 歯を食いしばり、再び巨大な戦斧を生み出すと、渾身の力で振り下ろした。

「無駄よ。」

 サティーナは何の躊躇いもなく手を振り上げると、黒き魔剣が戦斧を受け止め、轟音が辺りに響き渡った。

 真一の腕に鋭い衝撃が走り、その勢いに押されて数歩後ずさる。

 隣にいた愛理は、サティーナの動きを読もうと「精神感応」の能力を発動させた。

 意識を研ぎ澄ませ、サティーナの思考へと深く入り込み、攻撃の予兆を探る。

 しかし、奥へ進めば進むほど、その表情は苦しげに歪み、眉間に深い皺が刻まれていく。

 サティーナの心には、複雑な感情も論理も存在しなかった。

 そこにあるのは、純粋に研ぎ澄まされた戦闘本能のみ——。

 彼女の動き一つ一つが愛理の予測を超えており、察知して仲間へ伝えるよりも早く、すでに技が繰り出されていた。

「……彼女の動き、速すぎる!」

 愛理は焦燥と戸惑いをにじませながら、「精神感応」で真一とリアに警告を送る。

 ——この戦いで力になりたい。

 だが、純粋な戦闘本能のみで動くサティーナを相手にしては、愛理の能力も意味を成さない。

 それでも、リアはまだ諦めていなかった。

 少し距離をとると、両手で魔法の杖をしっかりと握り、静かに古代の精霊語を紡ぎ始める。

 まず放たれたのは「ウィンドブレイド」。

 無数の鋭い風の刃が唸りを上げながら、サティーナへと殺到する。

 間髪入れずに「ウォーターバインド」を発動。

 力強い水の束縛が渦巻き、サティーナの動きを封じ込めようとする。

 しかし——。

 自然と元素の猛攻を前にしても、サティーナはただ手を軽く振るっただけだった。

 魔剣が空を裂き、風の刃も水の奔流も、あっさりと粉砕される。

「まだまだね、リア。」

 サティーナは冷たく言い放った。その紅い瞳には、狂気じみた光が宿っている。

「汝の魔法……弱すぎるわ!」

 リアは深い無力感に襲われた。

 風の刃も、水流も、さらには召喚した蔓さえも、サティーナの前では何の役にも立たない。どんな術を繰り出そうとも、一瞬でかき消されてしまうのだ。

 サティーナは耳元の髪を優雅にかき上げる。唇には余裕の笑みを浮かべ、その瞳には、獲物を弄ぶ狩人のような危険な光がきらめいていた。

 彼女は空中を舞うように旋回しながら、まるで遊びに興じるかのような眼差しで彼らを見下ろす。しかし、その奥に滲むのは誇りと支配への欲求──すべてを掌握しようとする絶対的な自信だった。

「汝ら、だんだん気に入ってきたわ。」

 サティーナはくすりと笑う。その声には、甘美な毒が孕まれていた。

「ここまで粘るとは、なかなか大したものね。でも、我の提案をもう一度考え直したらどうかしら?魔王軍に加わるのなら、安全な暮らしを保証してあげる。それどころか、もっと強い力を与えてあげてもいいわ。もはや、何ものにも脅かされることのない力を。」

 彼女はゆっくりと身を前に傾け、軽やかに翼をはためかせる。その仕草には優雅さと威圧感が入り混じり、今にも致命的な一撃を繰り出しそうな緊張感が漂っていた。

 真一は荒い息をつき、額を伝う汗を拭うこともなくサティーナを見据える。

 握りしめた剣は、激しい攻防の果てに震えていた。しかし、どれほど疲弊していようとも、その瞳に宿る闘志だけは揺らぐことがなかった。

「ありえない……僕たちは、絶対に屈しない……!」

 歯を食いしばり、剣の柄を強く握り込む。拳には青筋が浮かび、心の奥底で恐怖と闘志が激しくぶつかり合っていた。

 隣に立つ愛理は、銀色の光を放つ二丁拳銃をしっかりと構えていた。疲労の色は隠せないものの、その表情は依然として冷静沈着だった。彼女は「精神感応」を通じて、真一とリアに素早く注意を促す。

「警戒を怠らないで……彼女はまだ本気を出していないわ」

 リアは地面に手をつきながら立ち上がり、魔法の杖をしっかりと握りしめる。その瞳には、迷いも恐れもなかった。

 彼らは言葉を交わさずとも理解し合っていた──どれほど戦力差があろうとも、絶対に諦めない、と。

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