15 終焉なき戦い
真一は自信に満ちた笑みを浮かべた。彼は密かに「物質変化」の能力を発動し、戦術を練り始める。ポケットから数種類の素材を取り出すと、瞬時にそれらをいくつかの装置へと変換し、そのうちの一つを愛理に手渡した。
愛理は装置を手に取り、一瞥しただけで真一の意図を理解する。彼女はしっかりとうなずき、力強く言った。
「任せて!」
再び目を閉じ、意識を研ぎ澄ませながら「精神感応」でアザールの気配を探る。
「真!気をつけて!すぐ後ろに来る!」
愛理が突然叫ぶと同時に、素早く銃を構え、真一の背後へと狙いを定めた。
案の定、真一の背後の空間が歪み始め、そこにアザールの姿が浮かび上がる。強大な闇のエネルギーが、真一へと襲いかかった。
愛理は一瞬の迷いもなく引き金を引く。銀色の弾丸が二発、流星のごとくアザールへと向かっていった。
しかし、アザールは鼻を鳴らし、軽く手を振るだけで弾丸を弾き飛ばす。それでも、そのわずかな動作が隙を生み、真一にとって貴重な時間となった。
真一は即座に身を翻し、転がるようにして攻撃を回避すると、手にしていた爆破装置をアザールめがけて投げつける。
轟音。
爆発の衝撃波がアザールを吹き飛ばした。
その瞬間、リアも動いた。
「水と風の精霊よ!我が前に立ちはだかる敵を氷に封じよ!」
彼女は古代精霊語で詠唱しながら長杖を振るう。瞬時に空気中の水分が凝縮し、無数の氷刃となってアザールへと飛んでいった。
爆発の衝撃を受けたばかりのアザールは、完全に体勢を立て直す前に、再びリアの攻撃にさらされる。咄嗟に腕を交差させ、その身で氷刃を受け止めた。だが、氷刃は砕け散り、その衝撃がアザールの身体に亀裂を走らせる。
「今だ!」
真一は額に汗を滲ませながら叫んだ。このわずかな隙を逃さず、彼は地面の素材を操り、さらなる罠と障害を仕掛けてアザールの動きを封じていく。
合図を受けた愛理は、迷うことなく真一から渡された装置を作動させた。
次の瞬間――
アザールの背後で、凄まじい爆発が起こる。
轟音が戦場全体に響き渡り、衝撃がアザールをまともに襲った。
「いつの間に罠を……?」
アザールの目に、一瞬の動揺が走る。
「今だ!これが最後のチャンスだ!」
真一は即座に手にしていた金属塊を鋭い長剣へと変え、迷うことなくアザールの心臓と腎臓へ突き立てた。
剣はアザールの身体を貫き、傷口から黒い血が勢いよく噴き出す。
アザールは苦痛に顔を歪め、咆哮しながら反撃しようとしたが――
三人の連携攻撃の前に、ついにその闇の魔法は完全に打ち砕かれた。
力なく地に崩れ落ちるとともに、彼を包んでいた黒き気配も霧散する。
「終わった……」
荒い息をつきながら、真一は疲労と勝利の余韻が入り混じった表情で立ち尽くした。
「ついに、アザールを倒したわね。」
愛理は微笑みながら真一のそばへ歩み寄り、安堵の表情を浮かべつつ、そっと彼の手を握った。
リアもそばに寄り添い、優しく言葉をかける。
「真一君、本当にすごいわ。あなたがいなかったら、この戦いには勝てなかった……。」
しかし、真一は静かに首を振った。
「僕一人の力じゃない。これは、僕たち三人の協力の賜物だ。誰が欠けても、この勝利はなかった。」
三人は、アザールの身体が徐々に塵となり、消えゆく様子を静かに見つめていた。
だが──その最後の瞬間。
アザールの狡猾な瞳が妖しく光り、唇には不気味な笑みが浮かんでいた。
まるで、何か恐ろしい秘密を知っているかのように──。
「愚かな人間どもよ……俺様を倒せば……すべてが終わるとでも思ったか?」
アザールの低く響く声が、荒れ果てた戦場にこだまし、まるで地獄の底から這い出る冷気のように全身を凍えさせた。
完全に消滅する寸前でありながら、その言葉には、なおも嘲笑と脅威が滲んでいる。
真一の表情が険しくなり、手にした剣をしっかりと握り締める。
勝利を確信したはずなのに──直感が告げていた。
戦いは、まだ終わっていない。
「……言い残すことがあるなら、言え。」
彼は冷ややかに言い放つ。その声には、揺るぎない覚悟と鋭い警戒心が滲んでいた。
「死に際まで、僕たちを挑発し続けるつもりか?」
アザールは虚ろな目で薄ら笑いを浮かべると、弱々しくも不気味な笑い声を漏らした。
「……フフ……貴様らは何も知らん……本当の脅威は……まだ始まってもいない……。」




