14 勝機を掴む瞬間
怒声とともに、漆黒のエネルギーが奔流となり、三人を包み込む。周囲の空間が歪み、地面からは黒炎が噴き上がる。それは、まるで戦場そのものを呑み込まんとするかのようだった——。
「やらせるものか!」
真一は歯を食いしばり、即座に「物質変化」を発動。石の壁を築き、アザールの闇魔法を防ごうとした。しかし、強大な魔力の奔流に晒され、石壁はあっという間に崩れ去る。その圧倒的な力に、抗うことすらできなかった。
「みんな、気をつけて!」
愛理は「精神感応」によってエネルギーの急激な高まりを察知し、即座に警告を発した。彼女は銀色の双銃を構え、アザールの腕を狙い、引き金を引こうとする——
だが、その瞬間、アザールの姿が再び空間に溶けるように消えた。
「しまった!」
リアは迫る危険を察知したが、反応する間もなく、アザールが背後に出現する。
「遅い!」
低く唸るような声とともに、漆黒のエネルギーが獣のごとく襲いかかり、一気にリアを仕留めんとする。
「リア、避けろ!」
真一が叫ぶも、すでに遅かった。闇の力が瞬く間にリアを包み込む——
まさにその瞬間、愛理が驚異的な速度で駆け出し、リアのもとへと飛び込んだ。彼女は双銃を構え、燃え上がる戦意を込めた弾丸をアザールめがけて撃ち放つ。
「どきなさい!」
愛理は強烈な敵意を感じながらも、一歩も引かなかった。
アザールは冷たく鼻を鳴らし、杖を軽く振ると、闇の空間が再び弾丸を飲み込む。しかし、その一撃により、彼の注意が一瞬逸れた。
その隙を突き、リアが風の魔法を発動。烈風が彼女たちを包み込み、二人は闇の力の支配から脱出する。
「ありがとう、愛理ちゃん……」
リアは息を切らしながら、感謝の思いを込めて呟いた。
「いいのよ、私たちは仲間なんだから。」
愛理は微笑みながらも、双銃をしっかりと構えたまま、アザールの一挙一動を鋭く見据え続けていた。
戦いは激化し、アザールの姿は闇夜の亡霊のごとく戦場を縦横無尽に駆け巡る。瞬間移動を繰り返しながら、彼の闇魔法の圧力が容赦なく真一、愛理、リアへと襲いかかった。
巨大な暗黒のエネルギー球が次々と放たれ、その衝撃が大地を砕き、空間を歪ませていく。
真一はすぐさま気持ちを切り替えた。アザールの闇と空間魔法は圧倒的で、こちらがどれほど全力を尽くしても、彼の動きをほんの一瞬鈍らせるのが精一杯だった。
「やつの弱点を探し出さないと……」
真一は冷静な眼差しで呟く。彼の「物質変化」は物体を変質させる能力だが、アザールの瞬間移動や闇の空間に対しては決定打になりえない。
アザールは三人を見渡し、薄く笑った。
「随分と粘るな……だが、無駄な抵抗は何度も見てきた。」
杖を軽く振ると、闇のエネルギーが凝縮し、さらに強大な攻撃が放たれようとしていた。
その瞬間——
真一の目が鋭く光る。アザールが瞬間移動した直後、一瞬だけ動きが止まるのを見逃さなかった。
「愛理、リア!やつの弱点を見つけた!」
確信に満ちた声で叫ぶ。
「えっ?!」
愛理とリアが同時に彼を見た——。
「瞬間移動は強力だが、使用後にほんのわずかな隙が生じる!その瞬間を逃さなければ……!」
真一の声には興奮と自信がにじんでいた。荒い息をつきながら、仲間たちに説明する。
愛理とリアはすぐに真一の意図を理解し、三人は素早く陣形を整えた。今度こそ、万全の準備が整っている。
アザールの目に一瞬驚きが浮かんだ。彼は人間たちの並外れた闘志を感じ取ったが、すぐに冷笑し、侮蔑の色を滲ませる。
「もう少し足掻くがいい。次で終わりだ。」
冷酷な声が響く。再び闇の力が渦巻き、彼の周囲に広がっていく。そして次の瞬間、彼の姿は三人の視界から消えた。
決戦の時が訪れた。
闇の力と人間の知恵が、この戦場で激突し、激しい火花を散らす。
愛理は目を閉じ、「精神感応」の力でアザールの意識を探る。果てしない闇と圧倒的な威圧感が彼女を包み込み、まるで呼吸するたびに深淵へ引きずり込まれるようだった。
「……まだ近くにいる。闇の力を溜めている……次に現れた時、決着がつくかもしれない。」
「よし、チャンスだな。」




