12 闇の支配者と抗う者たち
戦場の空気は張り詰め、息をするのも困難なほどだった。
アザールは戦場の後方に立ち、翼を広げたまま冷然と前方を見下ろしている。その長身は闇の気配に包まれ、冷酷な視線ですべてを見渡していた。
「人間ごときがここまで抵抗するとは……」
アザールは独りごちると、真一、愛理、リア、そして必死に戦う冒険者たちに視線を走らせた。
その口調にはわずかな驚きが混じっていたが、それ以上に軽蔑の色が濃い。
手にした杖には強大な闇の力が渦巻き、まるで嵐の前触れのように周囲の空気を震わせている。
張り詰めた緊張は、今にも弾けそうな弓の弦のように極限まで高まっていた。
その刹那——。
真一、愛理、リアの三人は、膠着状態を打破すべく、果敢にアザールへと突撃する。
「ここで奴を好きにさせるわけにはいかない!」
真一は鋭い眼差しで状況を分析し、眉をひそめた。
アザールの次の攻撃は、さらに苛烈なものになるだろう。もし止められなければ、結果は目も当てられない。
愛理は両手の銃を固く握りしめる。
「精神感応」により、アザールから放たれる悪意が、さらに濃くなっているのをはっきりと感じ取った。
風になびくツインテール、鋭く光る警戒の瞳——。
「一瞬たりとも隙を見せちゃダメ! 一斉に攻撃するわよ!」
彼女の声は毅然と響き渡った。
リアもまた、二人の隣に立った。
栗色の長髪が風に揺れ、手にした魔法の杖が淡く輝く。
蒼い瞳には、冷静な知略の光が宿っていた。
「風の魔法で援護するわ」
静かに、しかし確固たる意志を込めて言い放つ。
「行くぞ!」
真一の号令とともに、三人は一斉に攻撃を仕掛けた。
愛理の銀色の双銃が閃光を放ち、流星のごとく弾丸がアザールへと向かう。
リアは素早く風刃を放ち、鋭利な刃が空を裂いて突き進む。
真一は「物質変化」を発動し、一瞬にしてアザールの足元に鋭い石の槍を生み出した。
しかし——アザールは冷笑を浮かべたまま、微動だにしない。
彼が杖を軽く掲げると、瞬く間に黒き空間が眼前に広がり、全ての攻撃を飲み込んだ。
風刃も、弾丸も、闇の中へと消え去り、一切の影響を及ぼさない。
「愚かな人間ども……この俺様を止められるとでも?」
アザールの低く響く声には、怒りと嘲りが滲んでいた。
次の瞬間、彼は彼らに反撃の隙すら与えず、素早く空間魔法を発動する。
その姿は黒い影となり、一瞬にして消え去った。
「消えた……!」
愛理は警戒しながら周囲を見渡す。
——「精神感応」が伝える。まだ近くにいる。それも、こちらへ迫っている……!
「後ろよ!」
鋭い悪意を感じ取った瞬間、愛理は叫んだ。
彼女の声が響いた刹那、アザールが彼らの背後に出現する。
高く掲げられた杖には、膨大な闇の力が凝縮されていた。
その狙いは、最前に立つ真一——。
「そんな小細工で、この俺様を止められると思うか?」
アザールは冷笑し、鋭い爪を伸ばしながら真一を掴み取ろうとする——。
「真、一旦避けて!」
愛理の「精神感応」が再び警告を発し、彼女は叫んだ。
真一は素早く反応し、身を翻してアザールの攻撃を間一髪でかわす。一瞬の混乱の後、彼の瞳はすぐに冷静さを取り戻した。目の前の敵があまりにも強大であり、自分たちの力だけでは正面から対抗できないことを即座に理解する。
アザールの攻撃は空を切り、その表情に一瞬苛立ちが浮かんだ。鼻を鳴らすと、その姿は空間を歪ませながら掻き消える。
「動きが速すぎて、追跡なんて無理よ!」
リアは魔法の杖を強く握りしめ、不安げに言った。指先を巡る風のエレメントがかすかに揺らめくが、アザールの気配を捉えることはできない。
「みんな、気をつけて! もうすぐ現れる!」
愛理の「精神感応」が再び危険を知らせる。
案の定、アザールの姿が再び現れた。漆黒の闇と怒りを纏いながら、こちらへと迫る——。
「卑しい虫けらどもめ、よくも何度も俺様に刃向かえるものだな!」
第4巻、ついに完成しました!また一歩、私の夢である7部作の小説に近づきました。最初に考えていたものと違う部分も多かったですが、執筆しながら新しいアイデアが次々と浮かんできて、それが今の作品を形作ることができました。読者の皆さんにお届けできたことをとても嬉しく思います。次の巻は外伝になります。以前にお話しした通り、この外伝は第2部と繋がっていますので、ぜひお楽しみに!




