2 - 世界は雑貨のコラージュ
『第2回SQEXノベル大賞』応募につき誤字脱字、言い回しの修正を開始しました。
茉莉花の視線の先にいるその男性は『至然体』と呼ばれる存在だ。
6.0 haven からこの低次の世界には、いくばくもの擬態したもの等が入り込み、社会に馴染んで人知れず黙々と使命をこなす日々を送っている。
茉莉花とて例外ではなく、その源泉は【ZAIRIKU】に他ならない。
その指令は個々様々であり序列の上位者が導きあらんとし
────【ZAIRIKU】 6.0 haven の主たる意思 ────
その望みを全うし得るべく世界を構成する一粒となり給う
それは低次の全ての『個』を等しく、同じ意思に、異なる意思に、共存させ、共感させ、『心的共生を以って統治する』ことを目的とし、それこそがこの世界に安寧をもたらすと説いている。
しかし、ここでの活動は様々な外的刺激がノイズになることも多く、時として派遣された使者の中に独自の思考を抱くものが現れる。それらを至然体と呼び 6.0 haven から異端視され、途絶を望まれる。
茉莉花たちセラフィムの使命はこれ等の至然体を改修し、連れ帰る事にある。
【ZAIRIKU】は至然体から思考の細流を読み解くことで大いなる思考へと回帰させ、その叡智の源流へと循環させている。
至然体の改修はセラフィムが有する御業の一つでもある『熾火』の力を有した者のみが執り行う。
一体何をしている
何かを見ている 聞いているのか それとも待っているのか
それなら誰を
動けないのか 動かないのか
「他には何だ」 茉莉花は呟いた。
「ねぇねぇママ、おまわりさん すわってたよー」
「そうね、お巡りさんなのに座ってちゃダメだよねー」
「おまわりさんはすわっちゃダメなの?」
「税金をもらっているからねー、座らずに取締まらないとねー」
「とりしまるー?」
茉莉花は通りすがりの親子の会話に意識を向ける必要さえなかった。時として、真実を知ろうとしない者の方が幸いとも言えるからだ。男性が座っているのは雑多なモノが所狭しと寄せ集められ、はみ出し、吊り下げられたケバケバしい雰囲気の雑貨店、その前ほどにあるベンチシート。
暫く至然体と雑貨店を交互に見つめてみたものの、それはただ視覚のコラージュでしかなく、この依然体がここの社会の何であったかを知るには至らない。ただ茉莉花は至然体が微動だにしないので『何らかの静止状態にあるのなら、どうやって移動させるか』ということに思考を巡らせていた。
その時 ────
茉莉花のすぐ近くを横切ったのは本物の警察官だ。
「またアイツか」
「そうだな、職質してみるか」
二人の警察官は至然体の方へ向かって足を速めていった。
あの格好をしてうろついていれば立派な不審者としてカテゴライズされることは確かだろう。しかも初めてでもなさそうだ。無論、茉莉花も警察官の背後にぴったりと歩みを寄せていた。
至然体は不意に至然体が立ち上がった。この行動が警察官の足を更に速める。しかし、ここで警察官が制圧行動に出れば至然体も何等かの抵抗をする可能性も否めない。
面倒だな
茉莉花は警察官の間をすり抜けて至然体に声をかける。
[テンプレート選択中]
01:今何時ですかー?
02:向こうのカフェで少し話しませんか?
03:お兄さん、ちょっとパトカー見せてよ。
→04:お兄ちゃん、まったー!
05:イベント会場の場所、知ってますか?
06:お巡りさん、向こうで事件です。
07:昨日の事のについて話し合いたいの。
茉莉花が至然体の腕を掴みその場をやり過ごすそうとしたハズ …… だったのだが。
「オマエ何? 今忙しいんだけど」
至然体は茉莉花には見向もせずにそう言い放つと警察官を凝視する。
テンプレートが違ったか
そう茉莉花が評したのも束の間、警察官の一人に職質を受ける始末。次の瞬間、刹那のズレではあったものの二重音声にも似た違和感を茉莉花は察知していた。
「君 この人 知り合い? 何 イベン でもあ のか ?」
「君は 人の り合 ?な か ント も る かな 」
周囲の人たちにはズレなど感じることもなく聞こえていただろう。
それは位相を反転させた程度の小さな違和感。二人の警察官はそこに誰も居なかったかの様に至然体と茉莉花を通り過ごして行った。
「今、何をした」
茉莉花は目の前にいる依然体に言葉を投げつける。
つづく
御業 はセラフィムが有する力であり、様々のものがある
熾火はその中の一つ
『2 - 世界は雑貨のコラージュ』イメージイラストの差し替え、修正が完了しました