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7話【別視点】 ピンクのアレ

「はぁ。まさかバーサークコボルト程度で私が出向く羽目になるなんてね……。オリハルコン級はなんでも即解決の便利屋じゃないのよ」



 探索者ランキング1位。


 幸運にも【戦姫】という職業を授かったおかげであっという間に私は駆け上がることができた。できてしまった。



 本当はゆっくり稲井君とそれなりな探索者になっていければと思っていたのに……。



「私がチート級の【戦姫】で稲井君がハズレの【グリッパー】だなんて……。ついてるけどついてないわよ」



 お父様は元々私が探索者をすることに反対で、途中までは口出しをしてこなかった。


 私が強いって分かってからは掌くるっくる。



 お前には強い探索者しか似合わないだとか、スポンサーは自分が選ぶだとか、終いにはお前はうちの稼ぎ頭なんだからって私を都合のいい道具扱い。



 流石に頭にきたから絶縁してやろうとも思った。


 でもお父さんの会社の人たちや元気になったお母さんを見ていたらそんなことできるはずなくて……。



 結婚の約束を私からなかったことにしてしまった。



 突然別れを告げた時の稲井君の顔は今でも夢に出てきて……どうにか未練を断ち切ろうってその顔をできる限り見ないよう彼が絶対に来れないような上級のダンジョンばかり挑んでいた。



 なのに……バーサークコボルトなんて雑魚が大量発生したせいで初級ダンジョン行き。


 多分原因はレアボスなんでしょうけど……あんなの1パーセントだってない確率じゃなかったの?



「もう、本当についてるんだかついてないんだか……。誰か私の他にさくっと倒しに行ってたりしないかしらね――」



 シュン。



「え? こんなところで帰還のスクロール?」



 もしかしたら稲井君が1階層とかにいて顔を合わせてしまったら……そう思うとどうしても気が進まなくて、らしくなくうじうじしていた時だった。


 帰還のスクロールを使って探索者3人が入口まで戻ってきた。



 帰還のスクロールは1つ十数万の高級品。


 初級ダンジョンに通うような探索者が軽々しく使えるアイテムじゃないはずなのに……私みたいにスポンサーのついている探索者なのかしら?


 だとしたら家柄とか境遇も似たものがあるかもしれないわね。



「あなたたち、探索お疲れ様。どう? ダンジョンの様子は」


「なんだ、急に馴れ馴れしく……って!? もしかして姫川さん! あ、あのランキング1位の!?」


「知ってくれていたのは嬉しいけど、そこまでよそよそしくしなくていいわよ。見たところ私とあなたの間には大した差がないと思うから」


「い、いや! 俺は有名企業の社長でも芸能人の息子でもないですし、ちょっと前までは毎晩カップ麺……と、とにかく恐れ多いですって!」


「でもさっき帰還のスクロールを使っていたわよね?」


「そ、それはなんというか……。た、宝くじが当たって!! 運よく懐が温かいだけなんですよ!」


「そうなの? だったら無駄遣いするのは良くな……。いいえ、お節介は耳が痛いわよね。ごめんなさい」


「い、いいんですいいんです! そ、それじゃあ俺たちは疲れてるのでこの辺で! い、行くぞお前ら」


「……。なんかおどおどし過ぎじゃない? 私ってそんなに怖く見えるのかしら? ……。……。……。ま、一応ね」




 なんとなく胸がざわついて私はこっそり鑑定のスキルを発動させた。



 レベル差があればバレる心配もないし、黙っていれば問題はないわよね。



 うんうん、さっきのリーダーみたいな人は職業【マジシャン】。戦闘においては割とハズレ職かしら。


 でもう1人の男性は……職業【盗賊】、ね。


 人に対しての盗み行為は1件、か……。



 それと最後の女の子は……【洗脳者】? 聞いたことがない職業ね。



「えーっと……。特徴はモンスターなどを対象にした暗示スキルを得意とする。へぇー、これはかなり便利な……。……。……。まさかこれって……ちょ、ちょっと待ちなさ――」



 パサッ。



「ん? ってああ!!」



 私が引き留めようとすると頭に何かが乗った。


 それに気をとられていると3人はどこかに消えてしまっていた。



「あの3人……。確信犯だわ。モンスターを自分たちだけが都合いいように操ってお金儲けして……。これは探索者協会に報告しないと。いえ、それより人の手が加わっているのならダンジョン内は私が思った以上に危険かもしれない。……急がないと。っとその前に何が頭に乗って……」



 焦る気持ちを殺して私はそっと頭に乗ったそれに手を伸ばした。


 これはかなり大きな器型が2つで、布製品で、刺繍みたいなものもあって……すごく馴染み深い触り心地だけど一体……。



「……。……。……。こ、これ……。きゃ、きゃあああああああ!!! な、なんか胸がざわつくと思ったけど物理的な問題だなんて思うわけないじゃない!!」



 ピンク色のそれは間違いなく私の下着だった。



 すぐさまダンジョンに入らないといけないのに……まさかスキルをこんなに卑猥な使い方するだなんて!



「あーっもう!!!! やっぱりついてない!!!」

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