34話 アダマンタイトなレベル
「あいつのためなら他人は道具扱い。それが元々嫌いなやつならなおさら、と」
「……オブラートに包まず言ってしまえばそうなるわ。でも、稲井君に協力的するって事実は変わらないんだからそんなに怖い顔しないで欲しいな」
俺が怖い顔って……口角は上がっているのに瞳の奥が笑ってないそんな表情の人間に言われたくはないんだけどな。
ここで言ってないだけでこの人はあいつのために、あいつを手に入れるために想像し得ないようなことしていたりして……。
「さて、ここまで話を聞いてもらったわけだけど協力関係になってもらうってことでいい?」
「……断ればどうなる?」
「そうねえ……趣味じゃないけど従順な犬になってもらうために調教させてもらうかも」
「そんなのもう脅迫じゃねえか」
「世間的にはご褒美になると思うけど。今まで相手した男の人たちはみんな嬉しそうだったわよ」
こいつ、頭のねじが外れてる。
まったく……今度あのアナウンスと話せる機会がきたら、お前が新ダンジョン前に勝手に飛ばしたせいでヤバい女に掴まっちまっただろって愚痴ってやる。
「悪いが俺にもそんな趣味はない。本意ではないが、今はお前と手を組むことにするよ」
「今は、ねえ。それってつまり私に反抗できるくらいの力を獲得する機会があると、そう思ってるわけ?」
「ああ。ここ数日でもうレベルは91になることができたわけだからな」
「へえ! それはすごいわ! 私にとってあなたが早く強くなってくれるのは嬉しいことだから!」
自慢交じりに強がってみると美杉は目を輝かせた。
俺のことを脅威にはまったく思っていないらしい。
アダマンタイトクラスってのはそれだけの強さがあるってことなんだろう。
レベルは……300とかそこら辺の可能性が高そうだ。
「……。ともあれ無理矢理手を組まされることになったんだ、お前のこと、これからの作戦、いろいろと聞かせてもらってもいいか?」
「私のこと知りたいの? 見かけによらずエッチなんだあ……。そうね、毎日一人であの子のことを考えて……最低でも2回はするかしら――」
「そんなことは聞いてない。興味もない。こっちがレベルを教えてやったんだ。まずは俺が稲井力哉だって思った根拠を教えてもらおうか」
「もう。気の抜けた話の一つや二つさせてよ。せっかちな男はモテないわよ」
「構わないが?」
「ふーん……。あなたも随分未練たらたらなんだ。ま、それがやる気に繋がってるなら問題ない、どころか喜ばしいんだけどね。……今は。それで根拠よね? それは女の勘と、あなたの顔や身体が変わったとはいえなんていうのかしら、名残があって――」
「スキルだろ? かなり高レベルの鑑定、いやそれ以上の別スキルか?」
「……。乙女の秘密に土足で踏み込もうとするのは男として減点。でも察しがいいのは探索者として加点できるかしらね。……そうよ、私は触れた人間の情報を読み取れる。といっても鑑定阻害スキルの影響をまるで受けないわけじゃないから全部って訳にはいかないけど」
「触れなきゃならないか……。良かった。常にこっちの情報を見られてると思うと気持ち悪くて仕方ないから――」
「でも今のあなた程度触れるのは簡単よ」
「な!?」
俺はずっと美杉の姿を見ていた、それも注意深く。
それなのに、気づけば美杉は俺の背後。
頬にその白い手を添えていた。
身体能力に、差があり過ぎる。
「ごめんごめん、そんなに怖がるとは思わなかったわ」
「お前、一体何レベルだよ」
「ん? アダマンタイトクラスの中では低いほうよ。ほら。私ってモンスターの情報も細かく見れるから、ボーナス経験値とか使って、とにかく効率よくレベルアップするタイプで……アダマンタイトクラスになるためのレベルと経験値を逆算して最小限の戦闘しかしてないから」
「ボーナス経験値……」
「例えば……そう、あそこにいる『紫毒羽蟲』を見てて」
美杉が指差したのは紫毒羽蟲、Dランクのモンスター。
紫色の身体と幾重にも重なった羽が印象的なそれは中級ダンジョンの1階層だとすればそこそこ強いモンスター。
そんな奴が美杉に気づいて目を合わせた瞬間、爆ぜた。
何の前触れもなく。
「こうして触れることなく倒すと条件達成でとボーナス経験値がもらえる。今回貴方にはこのボーナス経験値を利用して道中強くなってもらうか――」
「一体何をしたんだ、今。スキル、なのか?」
「それはあなたも『1000レベル』を超えれば分かることよ。さ、そろそろお話はやめにして始めましょうか。ダンジョン攻略を」
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