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33話 好きな子のため

「……俺、自分の名前言ってないですけど――」


「あっ! すみません! これ認定証です! こっちの人の認定証は……ずっと見てたから改めてチェックしないでもいいですよね?」


「は、はい。問題ないです。ですが新ダンジョンは予想以上に難易度が高いのでお気を付けて」


「こっちはアダマンタイトクラスと話題の探索者ですよ? 死ぬわけないじゃないですか! それじゃ、そちらも頑張ってくださいね。ほらほら、早く中に入ろう。ここ人が多いから中のほうが多分落ち着けるよ」


「……はい」



 新ダンジョン入口前にいる侵入の受付らしい人から承認を得ると女性は俺の手を掴んだままダンジョンへの扉を開いた。



 聞きたいことは山ほどあるけれど、掴んだ手から感じる力強さのせいで俺は一先ず質問することを諦めてついていくことにした。



 歳は一緒くらいなんだろうけど、なんというか俺なんかよりも姫川よりも大人びた雰囲気。


 端正な顔立ちが逆に怖さを感じさせてしまうな。






「――ふぅ。まさか、本当に稲井君だなんて思わなかった。ねえどうやってそんなに強くなったの? というか見た目違い過ぎじゃない? 顔とか筋肉とかはまだしも……身長が伸びすぎてるのはおかしいって」


「変わったって、分かるんですか? 俺はあなたと会った記憶がないんですけど」


「ああ、いいいい。そんなたどたどしい敬語なんて使わなくても。同期だし歳だって同じなんだから」


「年齢まで知ってるのか?」


「クラスは違くても同じ学校の同級生だからね。稲井君っていい意味でも悪い意味でも有名だったんだから。それで私もね……悪い意味であなたを知った」


「……」


「ああ。別に『今は』嫌いじゃないから大丈夫。同じ探索者として仲良くしようじゃない。あっ。自己紹介がまだだったわね。私は美杉涼香みすぎしずかよろしくね」


「稲井力哉。よろしく……とは簡単に言えそうもないが」


「疑い深いのは探索者として重要な素養だと思うけど……こうして無防備晒してるんだからもうちょっと気を抜いて欲しいかな」


「女性がそうやって肌を出すのは良くないと思うぞ」


「お堅いわね。もしかして童貞だったりして……。なんて、冗談だからそんなに怖い顔しないでよ」



 美杉はズボンを少しずらして黒色のショーツを見せびらかしたかと思うと、誘うように笑った。


 だが俺はそんな美杉を余計に怖く、疑わしく思い顔をしかめた。



 こいつ、会ったばかりで一体何を考えてるんだ。



「ま、こんなので鼻の下を伸ばすようなら考えを改めないとなって思ってからいいんだけど」


「どういうことだ? 俺を新ダンジョンに無理矢理連れてきたのは攻略の戦力にしたいからじゃないのか?」


「アダマンタイトクラスを舐めないで欲しいわね。稲井君がいようがいまいがこの程度のダンジョンなら私一人で踏破できるわ」


「じゃあなんで……」


姫川勇妃ひめかわゆうひ。実はあの子びっくりするくらい弱い男に入れ込んじゃってね……。解放してあげたいのよ、私はあの子を」


「解放……」


「その男のことで毎日毎日うじうじして……。あれはまさに囚われ状態。私の好きなあの子じゃないの。あれじゃあいつまで待っても私に見向きしてくれない」


「……」


「でもその男を頼ろうとしても弱いまま、役に立たない。そう思ってたんだけど……。あのバズってる探索者がその弱い男、稲井君だってなれば当然利用したいって思うわけよ」


「利用したいって……随分包み隠さず教えてくれるんだな」


「隠してたら稲井君は私の言うこと素直に聞いてくれるのかしら?」


「それは……聞かないかもな」


「そうでしょ。だから全部教えてあげたの。私のこともあの子がまだあなたのことを思ってることも。でもね、これを話したからって勘違いして欲しくないことが2つあるわ」


「2つもか」


「ええ。まず1つ。私は稲井力哉が好きではない。これはあなたを永遠のライバルだと思ってるから。そして2つ目は……だからって今の稲井君をあの子に会わせたいとは思っていないってこと」


「それは、俺がまだ弱いからか」


「実力も地位もね。シルバーランク程度じゃ話にならない。正直今活躍し始めてることをあの子に教える気にもならない。それが今の稲井君のレベル。まぁ、どういうわけか自分のことを隠してるみたいだからあんまりそこを危惧してはいないんだけど」


「今の、か。なるほど。俺を利用するためにあいつを解放するために……俺のレベルを上げさせるたくて新ダンジョンに連れ込んだってわけか」


「察しが良くて助かるわ。新ダンジョンは予想以上の難易度になってしまってる、というかなにかイレギュラーが働いているのか怪我人が続出している状況。当然これを稲井君が解決したならランクアップは間違いなし。私はね、稲井君がボロボロになって、死ぬような目に遭ったとしてもこのダンジョンを踏破させたいなって思ってるの」

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