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16話 決めた

「はいはーい! 認定証欲しい方は僕についてきてくださーい!」


「凄い人だ……。いや、気持ちは分からなくないが……みんな新ダンジョンを甘く見てないか?」



 クエストの確認をするために1度探索者協会に寄ると新ダンジョン目当ての探索者がフロアに溢れていた。


 探索者協会なんて普段そんなに人いないのに。


「取りあえずどんなクエストが出てたか確認してさっさとダンジョンに向かうか」


 探索者協会では昔なつかしくクエストが掲示板に張り出されている。


 一応オンライン上でも公開はされているものの、人気のあるクエストなどは更新が間に合っておらず受注済みに、あるいはフリーで受注いらずのものだと達成済みだったりするときにらしいから、こうして俺みたいに足を運ぶ探索者もほどほどにいるんだとか。


 今まではそんなフリークエストでさえ報告することができないランクにいたから気にはしていなかったけど、この前の買い取りの時、『これからあなたがどんどんランクアップするためにこれくらい知っておいた方がいいです』、なんてあのお姉さんに色々叩き込まれたんだよな。



 凄く助かったけど、そもそも制限する理由も最初からきちんと説明しない理由もイマイチ分からないが……。



 うーん、人が増えて事務作業も増えてるから仕方なくって感じなのか?



「まあいいや。えっと……って結構多いな」



 試しに中級ダンジョンで簡単そうなクエストを探そうと目を通すが、案外数が多い。


 俺が前興味本意で見た時はこんなになかった気がしたけど……。



「えーっと、あの人まだ来てな……あ! おはようございます! もう! 随分顔を見せないので辞めてしまったのかと思いましたよ!」


「あなたは……えっとぉ」


「あ! そういえば名前お伝えしてませんでしたね! 天野ひかりって言います!」


「お、おはようございます、天野さん」


「はい! おはようございます、稲井さん!」


「今のあのもしかしてあの人っていうのは……」


「違います違います! 絶対稲井さんじゃないですから!」


 どのクエストを受けようか悩んでいると、この前のお姉さん、天野さんが朝とは思えないテンションで話しかけてきた。


 カウンターは暇なことも多いからこうして話しかけてクエストを斡旋することもあるのかな?


 丁度いいからおすすめを聞いてみようか。



「そうですか。あの天野さん、折角なので俺が受けれるおすすめのクエストとか教えてもらえたりしますか? 」


「お! やる気満々ですね! そうだなぁ、とにかく初めは数をこなすのがいいので浅い階層で簡単に狩れるものが……グレイトボアの肉塊10個の納品クエストとか、バーンラットの尻尾15個のクエストとか、それか……いや、あれを頼むのは流石に――」


「おいおいおい! そんな筋肉盛々のくせにシルバーで、しかも豚だのネズミだのを狩ろうってか? はぁ、こんなだから上のクエストが溜まりまくるんだろうが。雑魚に過保護すぎんだよ、探索者協会は」



 後ろから唐突に聞こえた荒々しい声が天野さんの好意を遮った。


 若干の苛立ちを隠して振り向く。


 するとそこには同期で見知った、ダイヤモンドのプレートを首から下げた男が立っていた。



「血原……」


「血原さん!」


「お? なんで名前知ってんだ?ああそうか、お前その見た目であれなんだな、あーっとたまにいる……そうだ、探索者マニアだ。戦う気もないくせに探索者と仲良くなりたいからって理由でダンジョンに潜る……1番嫌いな人種なんだよ、お前見たいのがさあ」



 血原とは面識があって名前だって覚えられてたはずなのに……やっぱり今の俺って別人だよな。


 一応この休み中にスキルの筋肉収縮で普段見立たないくらいまで抑え込む訓練はしたんだけど……。


「はは……。これだとあいつも俺のこと分かってなかったかも……」


「あ? お前なに笑ってんだ? 気に食わねえな」


「お、落ち着いてください血原さん! これでもこの人は超がつくほどの有望株なんですよ!」


「ほう……」


「そもそも血原さんは今回認定証を渡す役なんですから早くあっちの人たちを集めて――」


「決めた。天野がそこまでいうこいつを俺は今日見定める。ある意味、丁度良かったぜ。認定とかで誤魔化した生ぬるい訓練ごっこを、強度の高い本物の訓練にする試し台ができて」

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

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