「カレーとナン」および「遭難した彼」の話
「ナン、美味いですね」
「そう ナンですね、カレーには」
「カレーには やっぱり」
「はい カレーなら ナンですよね」
「彼も そうだと」
「ああ 彼もそうだったでしょう、多分」
「そうだった…とは?」
「あの遭難した彼のことですよ」
「えっ?遭難したんですか」
「ええ、遭難したらしいですよ」
「遭難ですか おどろいたな 遭難とは」
「はい、南総らしいのです」
「なんそう?そうなんではなく?」
「いやいや 南総の山岳地帯で遭難したのです」
「それはまた…どのへんで」
「地層が何層にも重なるあの地点で」
「なんそう?」
「そうなんです」
「わからないな。どういうことですか。そうなん?なんそう?なんそうにもちそう?」
「ややこしくてすみません。彼は南総の地層が何層にもなる山で遭難したのです」
「何でまた…」
「かれいのようです」
「かれいって」
「そう、かれいです」
「あれ?まだカレーの話でしたか」
「いや、カレーの話でもナンの話でもないんです」
「何の話でもないってことないでしょう、彼が気の毒だ」
「違います、違います。彼がカレーの時はナンを好む、という話とは別に彼の遭難の話です」
「しかしカレーと…」
「いやカレーじゃなくて加齢、歳をとったという意味の」
「ああ 加齢」
「登山の技術は上級者と聞いていましたが」
「うまかったんですね」
「彼はうまかったですね」
「カレーがうまかった話はもういいんです」
「じゃなくて彼の登山の技術が華麗だったという話です」
「カレーではなく…かれい?」
「はい、華麗でしたよ」
「かれいだけどかれいだったんですか。カレーの話では無く」
「ややこしくしてるのはあなたのような気がするけど…まあ、そうなんです」
「そう、ナンですって、やっぱりカレーの」
「いや、そうじゃなくて…彼はカレーならナン派でしたけど、それとこの遭難の話は別で」
「うーん?…そうですか」
「確かにそうなんです」
「遭難の話はわかりましたから」
「いや、宋なんです。彼の出身」
「えっ?宋」
「そうそう」
「曹操は魏だったはずですが」
「誰が三国志の話を」
「宋ってあの宋ですか」
「そうです」
「知らなかった」
「なんそうらしいです」
「えっ?出身地の話ですよね?」
「そうですよ」
「宋はわかりましたけど」
「南宋なんです」
「…?」
「わかりませんか?宋の南の方、南宋です」
「ううむ、ややこしい」
「そして…彼はそうなんです」
「遭難のことはもう聞きました」
「いや、そうなんです」
「…」
「彼は僧なんです」
「そう…?」
「そう、僧」
「彼は何なんですか」
「カレーにはナンだと言ってはいましたが」
「その話を持ち出すから訳がわからなくなる」
「仏教徒だけにカレーが好きで」
「関係ないでしょう」
「そうですね」
「僧だというのも聞きました」
「今のは只の相づちです」
「…ええと。つまり」
「南宋出身でカレーならナンが好きな仏教僧である彼は技術的には華麗なのものがありつつ、加齢が原因で南総の地層が何層にもなる山で遭難したのです」
「…そうなんですか」
「はい何層で遭難です。そう、ナンです。僧で南宋だったり南総だったりですが…そうなんです」
「…かれいが」
「そう、彼は華麗でも加齢でカレーはナンで…」
「なんなん、この話」
読んでいただきありがとうございました。
時間の無駄だったと思われたあなたには深くお詫びします。
作者もこの話30回くらい書き直して、ホントに時間の無駄だったような気がして後悔しています。
そうなんです。そう、ナンです、カレーには。
ええと…「僧なんです」という 『サファイアの涙』様のアイデアをどうしても使用したくて改訂し、再投稿しています。 『サファイアの涙』様には許認可をいただいてこうなりました。他にもこういうのがあるぞ!という方、よろしければお聞かせください。いや、ホント、そうなんです。