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ダンジョン シェルシェ  作者: 功野 涼し
同業者

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64/71

3

 ダンジョンの近くにある町の食堂に入ったシルシエはふとなにかを見つけ、真っすぐそっちへ向かうと椅子に座る。


「また会いましたね」


「ちっ」


 シルシエに声をかけられた赤髪の男は心底嫌そうな顔で舌打ちをする。


「狩場、被っちゃいましたけど、どうします?」


「お前馬鹿にするのもいい加減にしろよ」


 苛立った表情の赤髪の男を見てクスっと笑ったシルシエは、赤髪の男が食べている料理を見るとカウンターの向こうにいる店主に目配せする。


「僕もこの人と同じのください」


「おい、真似すんな」


 注文内容を聞いた赤髪の男の言葉を無視して、シルシエは微笑みかける。


「僕の名前はシルシエっていいます。おじさんの名前はなんですか?」


「お、おじさん……」


 不服そうに呟いた赤髪の男がジッと見てくるシルシエの圧に耐え兼ねたのか、目をそらすと手に顎を置く。


「トーマ」


「トーマさんって言うんですね。いい名前です!」


 ボソっとめんどくさそうに口にした名前を、シルシエがすぐに拾い名を呼ぶ。


「お前……くそムカつくな」


「そうですか? 言われたことありませんけど」


「噓つけ! お前はムカつくガキだ。間違いない」


 キョトンとして驚く顔をするシルシエにトーマが文句を言うが、シルシエは驚いた顔のままである。


「ちっ」


 埒が明かないと判断したトーマは舌打ちをして、自分の目の前にある皿の上にある鶏肉の蒸し焼きにフォークを乱暴に突き刺す。


「さっきトーマさんに話しかけてきた女がいたと言ってたじゃないですか?」


「あん? 勝手に話しかけて、話し進めるんじゃねえ」


「その人の名前、憶えていますか?」


「だから勝手に進めんな」


 睨むトーマにシルシエは微笑む。


「遠慮がちに話しても聞いてくれないっぽいので、ちょっと強引にいってます」


「やっぱ自覚あってやってんのかよ。ムカつくガキだ」


 吐き捨てるように言うトーマに対しシルシエがクスクス笑う。


「僕の師匠みたいな人が凄くお節介だったので、トーマさんが会った人も師匠だったのかなと気になって後をつけて来たんです」


「お前、尾行までしてたのか……ってしまったというその顔がわざとらしすぎだっての」


 尾行してたことを口走ってしまったと、わざとらしく口を押えるシルシエにトーマが文句を言うとシルシエは笑顔を見せる。


「同業者に会えて嬉しかったのでついて来ちゃいました。それよりもちょっとだけお話しませんか?」


 真顔で言うシルシエをトーマがジッと見つめたあと、フォークに刺していた鶏肉を口へ頬り込む。


「飯が先だ」


「ありがとうございます。僕、まだ食べてないからお腹空いてたんです」


「誰がお前の飯を待つと言った。俺が飯食ったら外へ出るぞ」


「うわぁ~、酷い。じゃあ話さなくていいです」


「ちっ、やっぱお前ムカつくわ」


 文句を言うトーマを無視して、運ばれてきた料理を嬉しそうに受け取るシルシエを見て、トーマは舌打ちをする。

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